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アルハンブラ宮殿で感じた無常観 〜 スペイン旅日記その5、「アルハンブラ宮殿の思い出」 村治佳織

グラナダという言葉には、ある思い出があった。

幼少期、熱中していたガンダムに、この言葉が登場していたのだ。月面の第2都市として。この場所は、ジオン軍に接収され、キシリア・ザビの拠点となっていた。そしてアニメでは描かれなかったが、連邦軍とジオン軍の終戦協定が結ばれた場所でもある。

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19歳の青年にとって、グラナダ訪問前はそんなイメージしかなかった。ただ、実際訪れてみると、そこは深い歴史の階層によって多様性が幾重にも重なりあい、成り立っている魅力的な街だった。

そんなスペインの都市グラナダ訪問記を何回かに分けて書いてみます。

では1997年に遡って。。。。

グラナダはスペイン南端の街。

この街の特殊性を語るならば、イスラム文化とスペイン文化の融合が見られる点である。なぜスペインにイスラム文化が?と思われるかもしれない。そこに歴史の積み重なりがある。

かつて、イスラム帝国というものが存在していた。北アフリカに勢力を伸ばしたこの帝国は、やがてスペインの下半分を占領するに至る。

わかりやすかったのが、wikipediaのイラスト。

914年にはオレンジ色の辺りまで支配下になっていて、それが徐々に下に向かっていくのがわかると思います。(これがスペインが抵抗していった境界線の推移。レコンキスタという活動。)

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(Wikipedia より)

このとき、あわやスペイン全土が侵略されるのか?という瀬戸際だったようだ。(上記地図参照)

と、そのとき、北部の街からこの侵略に対抗する組織が出現し、イスラム帝国を追いやっていくのだ。

この活動を征服に対しての再征服ということでレ・コンキスタと呼ばれている。(レコンキスタ。Reは再度の意味。Return , Repeatのような)。

この時の最後のイスラム帝国の砦がグラナダだった。そしてグラナダ陥落はコロンブスの新大陸発見と同じ1492年の出来事。

グラナダはスペインの南端に位置しているため、イスラム文化を時間軸でも長く、そして色濃く受け継いでおり、その最たるものが、アルハンブラ宮殿である。(スペイン語の発音的にはアランブラ)

アルハンブラ宮殿の中は、歴史や文化を知らないとあまり楽しめないかもしれない。ある程度の知識を必要とすると思う。大学の語学研修で訪れていたのでガイド付きだったのは幸いだった。

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アルハンブラの文化については、他のサイトなどで詳述されているので省くが、この宮殿内では暗殺や、それに類する出来事も多くあったようで、実は結構有名な場所になっている。殺戮の舞台となったその場所で、皆が写真撮影をしている風景は、なかなかに奇妙なものだった。

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(この画像はこちらから拝借しました。
https://rtrp.jp/articles/679/

これは一例だが、こんな風に随所にイスラム様式が見られる魅力あふれる宮殿なのだ。これから行こうと思っている方は、このあたりの知識を入れてから赴くとよいかと思う。

宮殿内部の状況は、各サイトで詳述されているので、それを見ていただくとして、個人的なお勧めは、外側からの風景。

この宮殿を楽しむポイントは外観を見ることだと思う。なぜかは後述。それは当然、この宮殿の敷地内からでは不可能なこと。

ではどうするか。

それは宮殿とは反対側の丘に行くこと。

その丘がある地区はアルバイシンと呼ばれている。この一角にはフラメンコの歴史で名高いサクロモンテの丘や洞窟がある。

この地区は、白い壁の家が立ち並んでいて、南欧特有のからっとした気候や、照り付ける太陽と蒼い空に映えて、静かな美しさを醸し出している。

この辺りは住民の散歩コースのようなものらしく、暑い昼下がりは、あまり人もおらず、じりじりと照り付ける太陽の下、広場を目指して、だらだらと続く坂道を登っていく。行き交う人もなく、静かな坂道。カラッとした暑さは過度な発汗を誘因しないけれど、意識を遠のかせる効果はあるようで。暑さで朦朧としてきたのか、白い壁が続くこの場所は、どこか架空の世界に迷い込んだかのような錯覚に陥る。

どこまでも続く小道を登っていくと、眺望が開ける場所がある。それがサンニコラス広場だった。

コメント 2022-05-08 113018

ここから見るアルハンブラ宮殿の概容は、一言でいえば、素朴そのもの。歴史に埋もれていく建物という雰囲気で、宮殿内部のあの魅力あふれる文化の多様性との違いが顕著だった。

しかし、宮殿内部を訪れ、ガイドを通して歴史や文化をかじった身からすれば、このたたずまいもまた、歴史の積み重ねなのだと感じたのだ。

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(著者撮影)

ここから見る宮殿は、暑さの朦朧もあったかもしれないが、どこか架空の世界にある建物のように見えた。かつて宮殿の中で繰り広げられた様々な事柄や人々の営みも、こうして俯瞰してみると、それもまた大きな長い歴史の中のちょっとした一コマだったかのように思えてくる。

この宮殿を外部から見ることはこういうことなのだ。つまりこのポイントは、内部の絢爛さと外部の素朴さの対比を感じること一点にある。

豪華絢爛さが残る宮殿内部、時代から取り残されたような宮殿外観。この対比は、とてつもない無常観を心に浮かばせる。

そのとき、この広場で誰かがギターを弾いていた。どこからともなく聞こえてくるその響きは、暑さで朦朧としている風景の中に溶け込んで、歴史の儚さを物語っているようだった。


しばらく佇んだ後、その場所を後にした。

そして、次なる場所、洞窟の中のフラメンコショーに赴いた。

これについては、フラメンコの歴史と共に、次回に譲りたいと思う。

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