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良書「FACTFULNESS」を読みながら過去の「思い込み」を見つけよう

久津(@Nunerm)です。

発売早々大きな話題になっている書籍「FACTFULNESS」を読みました。

結論から言って「この情報が溢れる社会においては全員が読むべき」だと思います。

どんな書籍か?

著者はスウェーデンの医師、公衆衛生学者、ハンス・ロスリング氏です。公衆衛生を改善するべく世界中を飛び回ったり各学会で発表をしたりして培った様々な経験から、

「人々は事実を把握していない」
「人々が持つ思い込みによって間違って事実を認識している」
「データを使って世界を正しく認識するべきだ」

ということを説いています。

世界の状況や変化(医療、貧困、女性の社会進出など)に関する3択×10個の問題に対して、どんなに優秀な人でもチンパンジー(=ランダム選択)より正答率が低いという衝撃的な話から始まります。こちらについてはTEDでも話されているので興味のある方はどうぞ。面白いですよ。

人々が世界を正しく把握できていない原因は、人間の本能に起因する「10の思い込み」であり、それぞれをちょっとコミカルなエピソード、シリアスなエピソードなど様々な事例を用いて説明してくれます。


読み終わった後の感想として、この情報が溢れる社会においては

「自分は世界を正しく把握していないかもしれない」
「相手も世界を正しく把握していないかもしれない」

という2点を認識した上で情報と触れ合うべきだと思いました。

この書籍を読めば前者は否が応でも知ることになります。絶対チンパンジー以下になるので。大切なのは自分が世界を正しく把握していないなら、その前提での行動をするべきだということです。自分の行動の意思決定の際に思い込みが入り込んでいないか、正しく把握するための情報を得ることはできないかなどを常に問いながら行動の意思決定をする必要があります。

またコミュニケーションにおける相手も同様です。フェイクニュースが蔓延するこのご時世では、よく「信頼できる情報源からの情報を選ぶべき」と言われますが、決して騙す目的のない情報源だとしても、そこには「思い込み」があることは前提とするべきです。これは日常のコミュニケーションでもビジネスでもSNSでも何でも、全ての場面で必要な前提です。相手はどういう考えの持ち主なのか、相手はどういう思い込みを持っている可能性があるのかを理解するよう努めなければいけません。

「自分にも相手にも思い込みがある」というこの構造を客観視し、存在する思い込みを理解することで、事実に基づいた正しい情報とのコミュニケーションや正しい行動の意思決定ができると思いました。

書評の最後に共著者であるアンナ・ロスリングのTED動画と彼らが作ったDollar Streetというサイトを記載しておきます。


読み方のススメ:過去の身近な「思い込み」を見つける

さて、簡単な書評はここまでにして、この書籍のオススメの読み方を紹介します。

それは「思い込みによって起こった過去の身近な出来事」を可能な限り挙げていく読み方です。

この良本をただ読んで満足するだけではなく、自分の思い込みを乗り越えて正しい判断や行動をできるようなりたいと思う人は多いと思います。ただいきなり「変われ」と言われただけでは変われないので、過去の出来事と思い込みがどう関係しているのかを考えることで、思い込みに気づくための練習になるかなと思います。

実際この書籍を読み進めていると、「あ、あの時のあの騒動はこの本能のせいか」「あ、あの時の自分の行動はこの本能のせいか」という気づきが次々と生まれてきます。この気づきを蓄積することで、次にそんな場面に出会ったら「ここに思い込みはないか?」と警戒することができます。


というわけで「10の思い込み」のうちいくつかに関する自分が思いついた過去の出来事を挙げていきます。

分断本能(世界は分断されている)

最近Twitterでは「脱社畜」という言葉が流行ってます。それに関して「錯覚資産」でおなじみのふろむださんが書いたnoteに対する自分のツイート。(あ、分断を分裂って書いてる…(´;ω;`))

どうも自分が受ける印象としては、フリーランスの方と本当に社畜の方は

フリーランス(=自由) VS 会社員(=社畜)

という考え方を持っているように思います。2つに分断しているような発言が多いのです。

でも実際は会社員として自由にやりたいことをやっている人も多いし、フリーランスだけど仕事に追われている人だっている。雇用形態だけで生き方が決まるような思い込みが蔓延しているのかなあという気づきです。

パターン化本能(一つの例がすべてに当てはまるという思い込み)

IT/Web系でない方にはわかりづらいかもしれませんが、先日見つけたこのスライドがまさに当てはまる事例だと思いました。

とあるサービスの機能が「シェアが低いから不要だろう」という思い込みによって除却されようとしているところに、しっかり検証を行ってそのデータを元にその機能の有用性を証明した話です。だいたいシェアが低くてコストがかかるものは削ることが割と常識になっていて、過去それによって成功した体験があるので、今回もそれと同じだろうと思い込んでしまう。これぞまさに「パターン化本能」の一つかと思います。

宿命本能(すべてはあらかじめ決まっているという思い込み)

よくニュースで「日本製品は高品質だから…」という発言を未だによく聞きます。自分はここにいつも疑問を持ちます。確かに高度経済成長期は他国に比べて高品質だったかもしれませんが、現在はどうなのでしょうか。「品質」に関する定量的な比較データって見たことないんでわからないんですが、海外製品を多く使うようになった現代においてその実感はありません。にもかかわらず「日本製品は高品質であり今後も不変である」なんて宿命を信じている人がまだ一定数いる気がしてならないんです。

ま、個人的には昨今の日本企業の不正利用の多発を見ていると、そもそも高度経済成長期の「高品質」の大半はまやかしだったのではないかと思っていますが。

単純化本能(世界は一つの切り口で理解できるという思い込み)

先日読んだこの本に書かれていたことです。

この本には「資本主義は自由市場・自由競争を前提としており、そこに国の介入があってはならない」というありがちな定説を真っ向から否定する章があります。過去の歴史を見ると、資本主義国家だとしても国が介入することによってが経済がうまく循環した事例がいくつもあるそうです。自分が持っている「定説」を何でもかんでも当てはめようとするのは危険ですね。


以上、簡単な書評と読み方のススメでした。

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