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『伊藤レポート3.0』が公開されましたね!↓

本記事ではこのレポートについて
まず、伊藤邦雄さんご本人に、
焦点を当てて書いてみます。

〇〇レポート、と名前がついているからには、
その作り手の来歴が反映されているはず。

伊藤さんのことをあらかじめ知ることで、
レポートに対する理解も深まるのでは。

※本記事の参考記事はこちらです↓

ぜひ合わせてお読みください。

≪簡単な来歴≫

伊藤さんは、会計学者です。
1951年、千葉県のお生まれ。
2022年には、71歳ですね。

銚子商業をご卒業、一橋大学に進学。
1980年に講師。以来、助教授、教授、
商学部長、副学長などを歴任。
2005年からは、三菱商事、シャープ
小林製薬、セブン&アイなど企業の
経営・会計にも携われました。
2015年に一橋大学を退職され、名誉教授に。

2013年7月には「持続的成長への競争力と
インセンティブ~企業と投資家の
望ましい関係構築~」
というプロジェクトが
経済産業省にて始まります。

伊藤さんはこちらの座長として
「最終報告書」を発表。
これが、いわゆる『伊藤レポート』。

2014年に第一弾。2017年に第二弾。
そして2022年の第三弾こそが、
『伊藤レポート3.0』
となります。
(途中で「人材版」なども出されています)

≪はじめはバブル期から≫

ただし、このレポートにあらわれた考えは、
いきなり出てきたものではありません。

伊藤さんの中では、何と、30年以上も前、
「80年代後半のバブル期」
問題意識が芽生えていたそうです。

その頃の日本経済は絶好調。
日本の大企業は、物凄く高い株価を背景に、
アメリカ合衆国でも大型買収をしています。

当時のアメリカの経営者たちは
「日本の経営者は、怖いぜ…!」と
言っていたそうです。

買収されるから?
違います。

日本の経営者たちが「無知」だったから。
無知なのに買収しまくっている。
だから怖い、と言ったそうなのです。

…何を知らなかったのか?

資本コスト意識。
会社に対する株主や投資家たちの判断が、
買収しまくることによってどう変化するのか、
それを知らなかった、というのです。

投資家視点からの「株主資本コスト」
これは、

「この企業は、リスクが高い。
投資に対して〇%しかリターンしない。
だから、投資するのをやめよう」

などの投資意思決定の判断材料に使われます。

株主に雇われている経営者は、この
「株主資本コスト」を確実に達成しないと、
株主、投資家たちから見放される。
世界的な常識としては。

そういうことを、知らなかった。

「財テク」と言って、アメリカだけでなく、
日本国内においても、本業そっちのけで
株などを買いまくる企業が多かったですよね。

まさにバブル、泡に過ぎない。
実態が「稼ぐ組織」になっていなかった。


…その結果が「バブルの崩壊」です。
伊藤さんは、すでにバブル期の時点で、
「あまりにも資本コストを知らなさすぎるぞ!」
と警鐘を鳴らしていた。

この主張が、後に
「伊藤レポート」の座長が回ってくる
きっかけになったそうです。

≪「伊藤レポート」公開後≫

2014年に伊藤レポート第一弾が出されますと、

「ROEが達成されているかどうか、
経営基準として経営者に突きつけよう!」

という株主、投資家が増えていきます。

ROE。Return On Equity。
リターン・オン・エクイティ。

「自社の資本をどれだけ
株主の利益に変換できたか」という指標。

◎ROE(%)= 当期純利益÷自己資本×100

「8%」を最低目標にしよう!と
伊藤レポートでは明確にうたわれています。

簡略化した例を挙げますと、

当期純利益 250万円
自己資本 5,000万円の場合
250万円÷5,000万円×100で
5パーセントになる。

自己資本2,500万円だと、
250万円÷2,500万円×100で
10パーセント

つまり、自己資本が多いのなら、
純利益がたくさん出てなきゃいけない。

「泡」の見せかけだけじゃ、だめ。

日本企業のROEは、約5%台。
欧米企業に比べて、低かった。

これじゃあ海外の投資家たちは
日本企業に投資しよう、とはならんぜよ。
そう、喝破したんです。

≪「人」と「なぜ」≫

では、真に「稼げる組織」になるには
どうすればいいのか?

極端かつ大胆にまとめますと、
「人」と「なぜ」がきちんと
整っている
ことが必要だそうです。

…「KPI」(重要業績評価指標)などの
数値だけを追い求めても、ただの見せかけ。
そこに「なぜ(why)」がなければ!

「『なぜ』KPIを20%にするのか?」

その理由が「外にも」示されないと、
投資家たちには、わからない。

「いま、このKPIを設定し、
組織のロードマップ上で、こうしたい」

という『ストーリー』がないと、
外部の彼らは納得しない、というんです。

これまで日本の会社組織の中では、
あまりにも「なぜ」が問われてこなかった。

立派な戦略、目標があっても、
それを実行するのは「人」です。

「わが社の戦略・ビジネスモデルは、
何年後にはこう変わります。
それを実行するための人材を、
いかに確保していくべきですか?」

人事担当者はこのように、経営者に対して
ただKPIを独り歩きさせるのではなく、
「なぜ稼ぐか」を対話する必要がある。

人事こそが、組織の経営戦略を
誰よりも深く知らなければいけない。
人事こそが、社外、他社の情報を
いち早くつかまなければいけない…。


人事はバックオフィス? 違う。
人事こそ「最前線」にいなければいけない!
そう、おっしゃっているのです。

≪それらを踏まえての「3.0」≫

ここまでを踏まえての、
2022年『伊藤レポート3.0』です。

「3.0」では『SX』こそが
稼ぐ組織に変わるためには必要だ!
という論旨が展開されます。

SXとは
サステナビリティ・トランスフォーメーション。
サステナビリティとは、持続可能性。
トランスフォーメーションとは、変革。
SDGsのあれ、DXのあれ。

「企業の持続可能性」と、
「社会の持続可能性」を同期化させる。


言い換えれば、

企業を「なぜ」「どう」続けていくのか、
社会を「なぜ」「どう」続けていくのか、
目指す姿は? 価値観は? 課題は?
そのための「長期戦略」は?

あなたの企業は、社会に必要なの?
社会課題解決のために、どんな人材がいる?
そういったものを明確にしないと、
企業と投資家とは対話ができませんよ!

そう喝破しているのです。

以上、本記事では、
伊藤さんの来歴を踏まえて
「3.0」へと至る骨子を
取捨選択して書いてきました。

…最後に、宣伝をお許し下さい。
この「最前線に立つ」戦略・経営的な人事、
「社会の枠組みを変えていく」組織を
小説として具現化したものとして、

私は小説『人事屋シリーズ』
書きました。全六作↓

もしもご興味のある方は、ぜひ!

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