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リリシズムへの考察、ロマンチストは男の特権

週末にブリュッセルの美術館へ、ベルギーのペインター Roger Raveel (ロジャーラヴィール)の生誕100周年の回顧展と、同時開催のベルギーの建築家兼彫刻家の Jacques Moeschal (ジャックモーシャル) の展示を見に行った。
わたしは、ミュージアムパスという60ユーロ払えば、ベルギー国内約200の美術館に1年間フリーアクセスという魔法のパスポートを持っているので、美術館はいつもわたしのホットスポットであり、シャラ(ヨガで言う鍛練する場所)であり、深呼吸をしに行く場所である。
こういうカルチャーが日本にもあるといいのに、と思って調べてみたら、東京には‘東京ミュージアムぐるっとパス’ってのがあって、指定の展示会の入場料の割引等があるらしいけど、“ぐるっと”はいけるけど、“ふらっと”今日あそこの展示寄ってみよう〜って感じではない。
ただ、わたしの秘技の魔法のパスポートも同日に同じ美術館内で二個の展示を見るのには有効じゃないらしく、一方の展示分を実費で払うことになった。
前日にセルフカットで前髪を眉毛の下で地平線と並行なくらいグラフィカルに切ったわたしは、受付で年齢を聞かれた。というのも、26歳以下はユース割引があるからだ。10年以上前に26歳の誕生日を迎えたわたしは、受付の人にナイスな質問してくれてありがとうと伝え、笑顔でフルプライスを払い、受付をあとにした。
というけっこうどうでもいい前置きはこのへんで終わりにします。

1921年生まれのラヴィールはベルギーのメヘレンという街で生涯ペインターとして2013年、92歳で生涯をおえる。
モンドリアンに影響されたという彼の作品には、多数その形跡が見られる。

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1913年生まれのモーシャルはブリュッセルに生まれ、建築家として学び、後に彫刻への情熱を形にするべく、建築家兼彫刻家の道を歩む。建築のバックグラウンドを持つモーシャルの重厚な彫刻作品は、緻密な計算のもと設計された。2004年に91歳で生涯をおえる。

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この建築家兼彫刻家のモーシャルの展示が、メインのラヴィールの展示より印象に残った。
というのも、わたしの父親は建築家なので、いつでも建築というものはわたしのこころにひっかかってくる。そのうえ、モーシャルは彫刻家という二足のわらじでその創造をより精密で豊かなものにしていた。
以前、ギャップが個性を作り出すみたいなことを投稿したのだけど、二足目のわらじがランニングシューズとかスケート靴くらい自分の兼ね備えているベースからかけ離れているほど、そのギャップが大きいほど、そこには思ってもみないオリジナリティが生まれるものだ。

モーシャルの展示にこころを鷲掴みにされたことを、友人のいづみちゃんに報告した。彼女は、早稲田大学建築学科卒、博報堂でコピーライターを経て、現在ベルギーで自分のニットブランドを展開するデザイナーという、なんとも引き出しが四方に深いキャラクターなのである。
いづみちゃんが、モーシャルの作品について「男性ならではのロマンティックな感じだね」と言った。
そして、こういう作品群は、『リリシズム』というんだよ、と教えてくれた。
リリシズムとは、抒情性(じょじょうせい)
生の喜怒哀楽が昇華した形で表出される高度に芸術的な感動の性質
らしい。
英語では Lyricism と書き、歌詞とかを意味するリリックとかポエトリーが絡んでいるようだという事はわかる。。。
こういう事はいったん自分の言葉に翻訳しない限り絶対に理解する事はない、ので、自分語に置き換えてみよう。。。そうだなぁ、、、
もののあわれ!
移り変わる自然の情景と自分のこころの状態を照らし合わせた時に生まれる儚い気持ち。
例えば、京都のお寺で紅葉を観ながらお茶をいただく。目の前の風景は一緒のようで、葉っぱが散っていたり、風向きが変わっていたりする。わたしの飲んでいたお茶も、湯飲みの底にうっすらと泡を残しているだけ。
ああ、ほんと一瞬一瞬がかけがえのないなぁ。。。。
みたいな。
たしかにロマンチック。。。
で、このロマンチスト具合って、ファッション業界でも実はあるあるで、日々感じていたことだった。
ヨーロッパのファッションは確実にゲイの方たちが強いのだけど、彼らに限らず、男性のデザイナーは女性デザイナーに比べてロマンチックな服を作る。
そんな話を同僚のサライにしたら、
「男性のシェフが多いのは、女性は実用的な理由で料理をするのに対して、男性は情熱や好奇心から料理をする。」と彼女の思う補足を加えてくれた。たしかにそこにもロマンが見え隠れしていた。
さらには、「女性は子供を産むという、生理学的に責任をおう場面があるから、先天性に実用的な判断をするけれど、男性はその都度その都度、場面に応じて必要な判断を下すということができる。」と、ラサイは付け足した。
なるほど、男性は先天性のロマンチストか!

以前父親に、「お父さんてさ〜、誰か尊敬する建築家っているの?」と、興味本位で質問したことがある。
父は、「お父さんは、村野藤吾っていう建築家が好きなんだよ。」と教えてくれた。
村野藤吾は明治25年生まれの昭和を代表する建築家で、東京の日生劇場や広島の世界記念平和聖堂など、名建築を数多く残した。
そんな村野藤吾作品を見ていたら、ここにもたくさんのリリシズム。
日本の良さを存分に魅せるモダニズム建築にはロマンがいっぱい溢れてる。
父よ、あなたも相当なロマンチストだね!

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東京千代田区 日生劇場

実用的ロマンチストのわたしは、
先天性ロマンチストに嫉妬をいだきながら、
この文章はこの辺で〆ようと思います。



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