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心理学や自己啓発が隠してしまっているもの

今日は科学や自己啓発が隠してしまっているものについてお話します。
心理学は科学です。再現性に乏しい実験結果を捨象することで生まれた「あるある」を語る学問です。

例えば、なぜか「いい子」を演じてしまい、その結果ストレスが溜まり悪いことをする。そういった症状を、心理学は、たとえば「境界性パーソナリティ症候群」と名づけます。

その治療は多くの場合、投薬によって行われています。その結果「その人だけの経験」が隠されてしまいます。

ある子は、親の顔色を伺いすぎるから境界性パーソナリティ障害になった。またある人は、本当は勉強などしたくないのに学校に行かなくてはならないという、子どもにとってはどうすることもできない状況ゆえに境界性パーソナリティ症候群になった。

つまり、その人だけの生活に基づいた「具体的な=本人にしかわからない」原因があるのです。それをまるっと無視して(あるいは一般化して)、「いい子」を薬で「治療」したところで、効果はありません。


実際に効果の出ない人が大勢います。「わたしの話を聞いてよ。どうして薬ばかり飲ませるの?」これが「患者」さんのホンネなのです。

自己啓発も同じです。「自己肯定感を上げるには感謝をしましょう」とよく言われます。しかし、感謝をしても自己肯定感が上がらない人は山のようにいます。

なぜ上がらないのか?

「その人だけの経験」が「感謝すれば自己肯定感が上がる」という一般論によって隠されてしまっているからです。

感謝をすれば自己肯定感が上がるというのは、じつは、再現性の低い一般論です。
どこかに神様がいて、感謝をすれば自己肯定感が上がるという「真実」を発言したわけではありません。

自己啓発が大好きな人たちが「感謝をすれば自己肯定感が上がる」と語り、そういった「雰囲気のいい言葉」に酔いしれたい人がそれを信じる――こういった構造が長年にわたって生み出した、一種の信仰です。

さて、感謝をしても自己肯定感が上がらない人は「ただし毒親は除く」などの「ただし書き」を、じつは持っています。

「多くの人に感謝をする。しかし自分にとって憎らしいヤツには感謝をしない」こう思っているから、感謝しても自己肯定感が上がらないのです。

自分にとって憎いヤツというのは「あなただけの経験」です。たとえば「毒親」とのこれまでの人生は、あなただけの経験です。

あなただけの親とあなただけの人生を歩んできた――それがどのようなものだったのかを、他者との会話をとおして、すなわちカウンセリングをとおして、ゆっくりと解きほぐすしかありません。誰しも思い込みの世界に住んでいますから、誰かに語ることで思い込みを思い込みと知る必要があるからです。

科学の心理学や自己啓発は、物事を一般化することによって、その人固有の経験やその人固有のものの感じ方を隠してしまいます。
これは、心理学や自己啓発が悪いのではありません。私たちの脳の限界なのです。

その限界に気づき、それを乗り越えることによってのみ、じつは自己肯定感は上がります。わたしが専門としている精神分析哲学は、じつはそのことに言及しています。

地球上に70億人以上の人がいても、あなたの経験はあなただけにしか経験できません。その経験が「どのようなものだったのか?」第三者との対話を通して、少しずつあきらかにしていく。そうすることによって、自己肯定感は上がるのです。

一般論はどこまでいっても一般論です。あなたが生きてきた世界がどのようなものであったのか、あなたがどんなにつらく哀しい経験をしたのか。それはじつはなにを意味する経験なのか。そういったことを1つずつ検討していくことで、愛され体質に変化できるのです。

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