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クイーンたちの人間ドラマが最高!Netflix「ル・ポールのドラァグレース」

2018年エミー賞5部門を受賞した「ル・ポールのドラァグレース」。

Netflixで配信されてるこの番組にドハマりしてるので、魅力を紹介します。

「ル・ポールのドラァグレース」では、全米から集まった10数人のドラァグクイーンたちが、ファッションやパフォーマンスの腕を競います。

ドラァグクイーンとは、派手な女装をし、主にヒットソングを口パクしながら踊るなどの、ステージパフォーマンスをする人のこと。はるな愛さんのあややのモノマネも、もとはドラァグの口パクから来ています。

衣装のすそをずるずる引きずる(=drag)様子から名前がついたとも言われます。

司会は、伝説のドラァグクイーン、ル・ポール。毎回、素晴らしいドレスで登場するこのキメのシーンも、楽しみの1つ!

アメリカでは超有名人のようですが、私は知らなかったため、番組を進行するこのおじさんは誰だろう、と思ってました…。

まさか、、同一人物だったなんて……!!!(笑い方が特徴的で気づいた)

「ル・ポールのドラァグレース」は、各シーズンごとに新しい挑戦者が集まり、踊りや演技、コメディなど様々な課題+ファッションショーに挑み、1話に1人ずつ脱落していきます。

Netflixでは、残念ながら初期シーズンが配信終了となり、私もシーズン8からしか見ていません。8ともなると、集まってくる挑戦者のレベルもかなり上がっており、クオリティの高い戦いが見られます。

しかし。

この番組の本当の見どころは、クイーンたちのきらびやかな衣装でも、素晴らしいパフォーマンスでもありません。回を重ねるごとに明らかになっていく、クイーンたちの背景や人間関係が一番見るべきところです。

シーズン8から10まで見て思ったんですが、番組が本当に面白くなるのは、シーズン中盤から。

最初は出演者が多くて、一人ひとりにスポットが当たりづらく、人物を掘り下げる時間もありません。

それでも、クイーンたちはみな個性を前面に出そうと必死で、かつ率直に思ったことを言い合い、きわどいジョークが飛び交って、見ていてじゅうぶん面白いです。

前半に出てくるテーマで特に好きなのは、全員がセレブの物まねをしてクイズ番組に挑む「スナッチゲーム」や、番組スタッフの男性をきれいに女装させ、ピンヒールの練習をして挑むパフォーマンスなど。

最初は、必ず誰かがいがみあい、ケンカになります(笑)。見ながら「コイツなんて性格悪いんだ、早く脱落しろ」なんて思うことも。

しかし、課題に向けて準備する間や、鏡に向かってメイクしている最中に、誰かが身の上話をしたり、過去の辛い経験を話したりして、クイーン同士の絆が徐々に深まっていきます。

ゲイである彼女らの問題は、そのまま社会の問題にもつながります。

働いていたクラブで、ホモフォビアによる銃撃があり、友人を亡くした者。クリスチャンの両親にゲイであることを受け入れてもらえず、セックスした相手の名前を、教会で全部書かされた者。黒人で、さらにゲイであるというリスク。

彼女らがジョークと他人の悪口で武装した中に隠している、本当の顔が見えてくるのです。

視聴者が共感するのを待っていたかのように、ル・ポールからの要求も、より内面を掘り下げる方向へと移っていきます。

「ただきれいな衣装を着てニコニコしているだけではない、本当のあなたの姿を見せて。弱い部分を見せることで、人はあなたを愛してくれる」

ル・ポールからのアドバイスは一貫して、「弱い自分を受け入れ、そのうえで他人の目を気にせずに自分らしく輝くこと」。

ファイナリストになるためには、美しいだけではダメ。自分にしか出せない真の魅力がなければ、その年を飾る「ドラァグ・クイーン スーパースター」にはなれないのです。

ル・ポールをはじめとする審査員たちの、厳しくも愛のあるコメントは、なぜか見ている私にも刺さります…。

この番組は、1990年のドキュメンタリー映画「パリ、夜は眠らない」をモデルにしています。

1980年代のNY・ハーレムに集まったセクシャルマイノリティの黒人たちが、人目を忍び夜な夜なパーティを繰り広げる様子を伝えた、ドキュメンタリーです。こちらもNetflixで配信されています。

ル・ポールは、まだまだ地位の低いドラァグ・クイーンの地位向上のため、番組をスタートさせました。

優勝者はその年の「大使」として全米をまわり、LGBTの活動などに参加します。ほかにもCMやTV出演など、無名の状態から一気にスターになれる、夢の番組なのです。

ここで、私のお気に入りクイーンを2人ご紹介。

まずはシーズン8から、初のアジア人出場者となった、キム・チー。

アニメからインスパイアを得た超個性的なセンスがありながら、実は不器用でダンスが大の苦手、という応援せずにはいられないキャラクター。

続いて、シーズン9が生んだスター、バレンティーナ。

笑顔がとってもキュートな彼女は、実は女装してない姿も超イケメン。番組出場時、まだドラァグを始めて数か月の若者でしたが、すぐに才能を発揮し、いまやインスタのフォロワーは90万人を超えています。

最初から輝いていた人がちょっとした油断で脱落したり、すぐにいなくなるだろうと思われていた人がめきめき成長していったり、思うように運ばないのがこの番組の醍醐味です。

勝負を進める中で自らの内面と向き合い、セクシャルマイノリティであること、黒人であること、太っていることなど全てをさらけ出して輝くファイナリストの戦いは、涙なしには見られません。

ただ、唯一納得できないのが、日本語字幕。クイーンたちがメイクを落として男性の姿の時も、一切女装しない審査員たちまで、みんな女言葉になってるんです。どうやら、ゲイは女言葉、と決まっているみたい。

番組の中でマシンガンのように繰り出される言葉遊びや下ネタを、すべて訳しているのはすごいと思います。でもそこまで出来るのに、どうして、性の多様性を見せるこの番組で、人々を古くさい言葉の型にはめてしまうのでしょう。そこだけがとても残念です。

とは言っても、Netflixに入っている人には超おすすめですし、入っていない人は、1か月の無料期間中にぜひ見てみてください(笑)。

ル・ポールの笑い声が頭から離れなくなりますよ~。

エミー賞を5部門も獲ったことだし、新シリーズも期待しています!!


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