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#010_【組織的公正】人事パーソンは正しくあれ、ってなんで??に応える(#4-103)

Barattucci, M., Alfano, V., & Amodio, S. (2017). The company judged from the inside: diversification, equity and justice in organizations. Journal of Psychological & Educational Research, 25(1).

目次


本日の論文への惹かれポイント

「人事管理における組織的公正の重要性と実務的応用性」のレビュー論文、ということで研究というよりは自分の仕事に活かせないか、というのが発端。思いのほか、研究にも活きる。
社会人である強みは、現場の課題感と研究を紐づけられること。というのを改めて認識。

この論文の目的は?

組織的公正とその実践的適用に関する文献をレビュー。
今日の人的資源管理(HRM)における組織的公正の重要性と適用可能性を明らかにすることが目的。理論を交えつつ、かなり現場に寄り添った組織正義の概念と実践・運用について考察されています。

POINT1. 再編、多角化、交流、噂

全体的に過激なトーンでまとめてみました。
※注意:あくまで個人的な解釈です。論文が過激なわけではありません。

過去:「就社」そんな言葉もあったね。
雇用の安定と強いコミットメントへの要求との交換に基づく関係的な心理的契約があった(Robinson, 1994)
会社は一生君を雇うよ、一生君に給与を払い続ける、つまりは一生食い扶持に困らない生活を保障する。だから会社のために一生働いてくれ、ということ。

現代:「世の中、金さ」ネオ傭兵的(専門職)で功利主義的世界
利益とサービスの短期的な交換に基づく取引的な契約へと移行しており、そこでは組織と個人は交換自体の利点を絶えず秤にかけている(Folger & Cropanzano, 1998)。

とはいえ、現代においても皆が個人事業主というわけではなく、会社に勤めている人は大勢いる。日本においてはジョブローテがあることからも専門職よりも、その会社で活躍できる人材育成がまだまだなされています。

だからこそ・・・
従業員のモチベーションを高めるために、従業員が企業風土や個人の成長、会社の公正さ、ワークライフバランスを重視するようになり、キャリアや知名度、社会的地位が重視されなくなるという変化が起きているのだそうだ。

傭兵とはいえ、会社に勤めている・・・では会社にコミットする感情をどう育むのか。
以前のように生涯生活を保障される、ということによる心理的交換は勝手に生まれない。だからこそ、労働者は会社に対する不満や疑念を持ちやすくなっている。つまり、それらを低減することが重要になってきているということなのです。

POINT2. 私は他の人と同じように扱われているか?

みなさん、どうでしょうか?
あなた、もしくはあなたの周囲でありませんか?「同期のあいつと自分は同じように頑張っているのに、あいつのほうが先に昇進した(給与が高い)」みたいなお話し。

正義、公平性、公正性 組織的正義の理論によれば、態度や行動は、労働者、職場、その規制原理の間の関係に関する認知プロセスによって決定される(Greenberg, 1987)。

公平性の条件は、労働者が自分自身の貢献(パフォーマンス、スキル、プロフェッショナリズムの観点から)と結果(有形・無形)と、その時に比較対象となる他の同僚の貢献との間にバランスがあると認識するときに決定されます。

多くの人は職場において公平な状態を好み、不公正の認識は否定的な感情を生み出し、公平性を回復するために交流における不協和を軽減しようとする意欲を生み出します(Cropanzano & Greenberg, 1997; Reginald & Jeanette, 2012)。

不公正の知覚はすべて否定的な感情につながります。
代表的なものは・・・
① 怒り
② 嫌悪感
③ 悲しみ
④ 恐怖
⑤ 羞恥心

感情的反応の性質と強さは、結果の関連性、その状況に対処する能力などの要因の組み合わせによってきまります。

POINT3. 人事慣行は公正を認知するのに大事な機能

組織的公正の知覚は、組織が効果的に機能し、従業員が個人的に満足するための基本的要件である(Greenberg, 1990)。

人事方針と慣行は従業員の組織的公正の知覚に影響を及ぼし、それはひいては従業員の感情や情動に影響を及ぼす(Frenkel, Li, & Restubog, 2012)。

従業員が人事制度や慣行をどう思うか、どう感じているかで、その従業員の行動やパフォーマンスに影響する、ということ。

本論文では、人事の行動が公正であると感じると、マネージャーの採用した決断も公正であると従業員は感じる、とされていると示していました。
また、当然に公正な手続きを策定するだけでなく、手続きの最終結果が公正であると認識されることも非常に重要である(Ribeiro & Semedo, 2014)とされています。

組織の公正な手続きは、個人的な満足度よりも従業員の組織に対するコミットメントに大きな影響を与える。従業員が給与やその他の金銭的な問題に満足しているかどうかにかかわらず、組織の公正な手続きは、組織に対する肯定的な態度を築くのに役立つようである(Aryee, Budhwar, & Chen, 2002; Tremblay, Cloutier, Simard, Chênevert, & Vandenberghe, 2010)、と結ばれています。

感想

背筋がピンとなる論文でした。
人事の振る舞いが、上司の決定を公正と見るかに影響している、と言われると・・・「人事は聖職」のような言われ方をすることもありますが、えらいとかそういうことではなく、やはりこういうところからきているのだと思います。
本来の自分の性格や思いとは別に、人事という職業を担う上では、誰よりも「正しく」あらねばならないし、「正しさ」を実践し、それを見せていく必要があるのかな、と。それは時にいろんな人の反発を食らうとしても。

私は、「正しいことをする」人に世の中をよくしてほしい、と思ってこの仕事をしています。もちろんいろんな正義があることもわかっています。(例えば戦争においてもどちらの立場での言い分があるように)
だからこそ、自分自身も正しくありたいし、自分の正しさを信じていたい。


サポートしていただけると嬉しいです! ぴよぴよ社会人博士課程の学生ですが、Organization Justiceについて研究を進めています。また、理想だけでなく実務で壁となるGoing Concern(売上、利益)といった面も考えつつ・・・模索しています。