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「明けましておめでとう」が詰まる

 「明けましておめでとうございます」

 年が明けると否が応でも聞こえてくる挨拶。私はその一言を自然に発せられない。それだけじゃない。仕事納めのときもそうだった。「良いお年を」が言いだしにくくて同僚がみんな帰るまで残業をした。

 思い返すと「誕生日おめでとう」の一言もそうだった。頭の中では浮かんでいる「ありがとう」「ごめんなさい」だって簡単には言えなかった。

 冒頭の一言に戻ると、年が明けることの何がめでたいのだろうか。という大人になりきれない斜に構えた考え。ロボットみたいに「今年もよろしくお願いします」となんの意味もなく発せられる言葉に嫌悪感があるのだろうか。

 答えは単純だった。「ありがとう」はあなたの好意に感謝します。ありがたいと嬉しさを表現している。「ごめんなさい」は申し訳ない。あなたを不快にさせてしまったと哀れみを表している。そして「明けましておめでとうございます」は新しい年を迎えられたことへの喜びを表現している。

 そう。私は感情を伝えるのが苦手なようだ。それに相まって、その言葉を伝える意味や意図を斜に構えたり、深読みをしている。

 社会では当たり前とされる言葉を簡単に発せられない理由からずっと逃げてきた。いつもその場をやり過ごして、ボカして過ごしてきた。一時期「ボソボソ」とあだ名を付けられていたのも、はっきりと発せられないのが原因だった。

 「ありがとう」や「ごめんなさい」のように自然と「良いお年を」「明けましておめでとう」が言える日はくるのだろうか。

 

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