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3分とちょっとで目覚めた恋

 もっと話をしたい。いつもは淡々と聞かれたことに最短距離で回答するのに、あの日だけは違った。

 以前から気になっていたあの人が私に声をかけてきた。会話の時間は3分とちょっと。ウルトラマンの活動時間を少し過ぎたくらいのそれだけで、その日は浮足だっていた。

 無意識に自分から会話を広げるなんて信じられない。聞かれたら答える。ボールをもらっても自分から返すことはなかった。だけどあの人は違う。渡されたボールをもう一度投げ返していた。いつもと違うのはそれを意識してやっていないというところ。自然と言葉が出てきて自分でも何を言っているのかわからなくなる程、高揚していた。

 多分、恋。いや恋ですね。お薬をください。

 私の恋が始まった瞬間だった。心の奥底に眠っていた好意が、見て見ぬ振りしていた恋心が、3分とちょっとの時間で顔を出した。ずっと隠していたのはどうせ実らない。そんな諦めが重りとなっていた。

 そんな重りも、いとも容易く持ち上げてしまうほどの力がある。それが恋なのだ。

 この恋心は果たしてどうなるのか。乞うご期待。


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