人を好きになることを避けていた私へ。
結婚したい。なんとなくそう思った。周りが結婚し始めたからではない。これからの人生を一緒に歩んでくれる人がいてくれたら幸せだと純粋にそう思った。子どもがいたらもっと楽しくなるだろう。
こんなことを考え出してから結婚について本気で向き合うようになった。とはいっても今までがそうだったように恋愛に関しては簡単に重い腰をあげられないことはわかっていた。だから極端な言い方をすれば追い込んでくれるような、脅しになるようなものが欲しかった。
それから結婚に関する本を買い漁った。実際に生涯未婚率は上がってきていること。20代後半から30代前半にかけて結婚する人が増えること。同時に年齢を重ねれば重ねるほど結婚のハードルが上がってくること。お金は共働きであればなんとかなりそうなこと。たくさんの結婚に関するデータや事実を頭に叩き込んだ。 結婚の事実を間のあたりにして、やっと本気で動いてみようと思った。理屈っぽい私には数字がどうやら効果的だったようだ。
そこで考えた。どうやって恋人を作るか。今までに付き合った人は1人。しかも周りからのサポートと相手からのアプローチのおかげで恋人関係になったようなものだった。つまり告白経験なしということになる。それは同時に自分から好きになった人にアプローチする経験もないということでもある。そこでまずは恋人候補を見つけることにした。
だけどそうはうまくいかない。そもそも人を好きになる方法がわからなかったのだ。だから今度は人を好きになる方法を探した。そこでたどり着いたのがフロムの「愛するということ」。「愛とは技術である」。いかに人を愛するか。そんなことに心躍らせながら血眼になって本と向き合った。
ここまで順調に進んでいるように思えた。人をどうやって好きになるのか。それさえわかれば上手くいく。そう信じていた。だけど人生そうは簡単に回らない。どんなに人を好きになるのはわかっても、それ以上、前に進めなかった。
ここまでは書いてきたことはほとんどが本当の話。だけど一つだけ嘘が混じっている。嘘をつけば前に進めない言い訳になることをわかっていながらついた嘘だ。
ええい。本当の私をここで暴いてやる。昨日までの私とはおサラバだ。昔の私覚悟しておけ。
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私の嘘。それは人を好きになる方法はわかっていたということ。結婚に関するデータを集めているときも、「愛するということ」を読んでいるときも誰かに心を動かされていた。本当は人を好きになれたのに、それに蓋をしてみないふりをしていた。
怖かった。好きになってからそれ以上前に進むことが怖かった。どうやって話しかければいいのか。仮にデートに行くことになってもどうすればいいのか。私には耐えきれなかった。だから知らないふりをすることを選んだ。
どうして恋人いないの? 周りの声も恐れていた。「好きになる方法がわからないんだよね」と土俵に立たないことを正当化した。卑怯だ。
昨日だって心を動かされる人と出会った。人を好きになる方法を学ぶ必要はなくて十分すぎるほど本能として備わっている。
もう辞めよう。本当の課題から目を背けることを。誰かと一緒に人生を歩みたいということは紛れもない本心なのだ。自分と向き合ってるフリをしても何も前に進まない。
今、私がやらないといけないことは人を好きになることではなくて、その後の行動だ。わかってる。最初からわかっていた。
明日になったら忘れてしまうかもしれない。見たくないものは見えないフリをする癖は1日で治るものではない。だけどこうして残しておく。明日の自分への戒めとして、そして未来の幸せのために。
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