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富裕層向け会員制レストランの話

最近会員制のレストランが増えている気がします。

その多くは、クラウドファンディングで会員を募集して、会員に向けてワンメニューのコースのみを提供するという仕組みが多いようです。

入店できるのは、会員と同伴者のみ。「会員限定」にすることで、「特別感」を演出し、入会者は自分が「特別」であるように感じ、同伴者(主に会員が男性で、同伴者が異性であることが多い)に、ドヤれる(と会員は思っている)という理由でありがたがって入会するのだけど、店にとっては、開店資金を早く回収でき、大抵の場合、会員による事前予約制で、多く場合、ワンメニューなので、材料のロスが少ないといういいことづくめのシステムなのでしょう。

最近増えているのは、クラウドファンディングで会員を募集しているものが多いので、誰でも申し込めば会員になれるのであって、入会資格は期間内に募集人数(コストコと違って人数を限定しないと予約が取れなくなるので限定している)に達するまでに申し込みさえすればよいというだけの代物。

こういった類のお店になんどか連れて行っていただいたことはありますがが、残念ながら、そのほとんどは、さほど美味しいわけでも、かといって空間や雰囲気について特筆すべきものもなく、連れて行ってくれた方も、後で聞けば、それ以降、再訪していないんだよねと。加えて、1年後には、店自体が無くなっているというケースも少なくありません。まあ、会費で開店資金は回収できているし、ただ会員制というだけの普通のお店は、行く理由がほとんどないから、さほど流行るわけでもないのでしょう。

もちろん、全部だめなわけじゃなくて、広尾のローストホースみたいにちゃんとやっていけてるところもあるけど。

さて、前置きが長くなりましたが、今日の話は、リアルに特別な会員制レストランのお話です。

先日、知人と夕飯を食べた後に、もう一軒いきますか?と言われ、連れて行っていただいたレストランだったのだが、レストランといっても、バーとしても使えるレストランだったので、2軒めの我々はバーとしてだけ使わせていただました。

その店は、都心の高級住宅地の中にひっそりとありました。

西麻布のラウンジ同様、外に看板はなく、入会時に登録した生体認証でドアが開きます。

ドアを開けて迎えたくれたのは、ドラマや映画に出てくるような初老の紳士。(初老というのは、本来40歳のことですが、ここではもう少し上の60歳過ぎくらいのイメージ)
「ようこそいらっしゃいました。〇〇様」と会員である彼の名前を呼ぶ。会員が何人いるのかわかりませんが、おそらく、会員の顔と名前は全員一致しているのでしょう。

中に入ると、ヨーロッパのお屋敷のようなこれまた映画のような空間。これは、撮影用のセットかなんかですか?やりすぎですよレベル。食事はしているので、バーを指定すると、オーセンティックなバーカウンターに通される。ご注文はと言われ、その日は、1軒目からすでにシャンパンやワインを飲んでいたので、引き続きワインを飲もうということになって、好みを伝えました。

しばらくして出てきたのが、知らぬものはいない銘柄のワイン。思わず、2度見ならぬ、3度見。しかも、我々よりはるかに年上のヴィンテージ。一軒目のレストランでごちそうになっているので、2軒目はお返ししようと思っていたのですが、こんな銘柄がおまかせででてくるとは、一体いくらなのか。

お店で飲むのではなく、酒屋で買うとしても(と言っても店舗はもちろんネットでもお店で販売されているのをみたことはないですが)おそらく500万円くらいはするだろういうワインがグラスで出てくるとは、想像がつかない。普通に考えると1杯数十万円。

値段のことは忘れて、まずは香りを確かめたあと、口に含んでみると、今までの人生で飲んだことのないほど美味しい。ソムリエのような表現ができず、稚拙な表現になってしまうが、とにかくまろやかで、やさしくて、うまいという感覚が広がる。いつまでも飲み続けていたい感じで、まあ、結局、うまいしか言えない。

一体この一杯はいくらなんだろ、こいつはなかなかの出費だなあとか思っていたのもつかの間、楽しくなってしまい、気づけばそれなりに飲んでしまっていました。

結局、このお店も知人にごちそうになってしまったのですが、どうしても気になって支払金額を聞いたところ、全然僕でも払える額。

ご馳走になったにもかかわらず、思わず、脊髄反射で安っと言ってしまいました。

それもそのはず、ここの会員になるには、会員からの紹介と審査が必要で(審査内容は不明)、年会費が4桁万円とのこと。その代わり、通常飲んだら一杯数十万するようなお酒を超破格で飲めるというシステムらしい。詳しくはよくわからないし、それで採算合うのか?とか全くわからないけど、聞いた限りそんな感じでした。

もちろん、食べログなどのサイトなどネットには一切載っていません。(もちろんこの記事のタイトルにある写真は関係ないイメージ写真です)

この店がいつから存在するのかを知る由もありませんが、少し前から、食べログに載っていないお店が増えた気がします。点数の高い店に行って、写真を撮り、SNSに上げることが目的化されていて、それはそれでいいのだと思うのだけど、食事やお酒を楽しむことだけが目的の、客は誰も写真を撮らないというようなレストランが一部の人達には、求められているのかもしれません。

日本はジニ係数からいうと貧富の差が非常に少ない国ではあるのだけど、老後2000万円問題とか言われている一方で、同じような額をレストランの年会費に支払っている人たちがそこかしこに存在しているのだなと実感した貴重な体験でした。

ご紹介しましょうか?と言われましたが、もちろん、僕の身の丈には合わないので、「いえいえ、恐れ多くてと丁重にお断りしました。