金足農業を導く魔曲・タイガーラグに寄せて
まだ秋田の高校生だった頃、母校秋田中央高校の野球応援が大好きだった。
応援しているうちにいくつか曲を覚えた。アフリカン・シンフォニー、see off、サウスポー、紅、そして……
タイガーラグ。
もうすっかり有名になったから今更私がするようなものでもないけれど、あらためて説明しておく。
秋田県勢の定番曲で、いわゆるチャンテ(チャンステーマ)というやつ。
高らかに響きわたるトランペットに導かれ、アルプス2階席のみんなもお茶の間アリーナのみんなもテンション爆上げになってしまうとんでもない曲だ。
後年、秋田の高校球児だったという知人に
「やっぱあれがかかると選手もテンション上がるもんなの?」
と聞いてみたことがある。いわく、
「上がるなんてもんじゃない、全能感が湧き上がってくる」。
まさに魔曲。
こんな冴えない大人(しかも無職)になってしまっても甲子園で流れるタイガーラグが好きなのは、やはりあれに魔力があるからだと思う。あのトランペットを聞くといつだってどきどきする。
私はもともと高校生の頃から冴えないやつだった。
野球部の人たちのことなんてぜんぜん知らなかった。友だちでもなかった、クラスには何人かいたような気がするけど、スクールカースト最底辺には関係のないことだった。
だからってどうでもよかったわけじゃない。
だだっ広いグラウンドで、背番号をつけて、名前をアナウンスされて、あんなに小さな球を死にものぐるいで、正確に投げたり打ったり捕ったりする同世代を素直に尊敬していた。
観衆が送る大声援なんか、万が一当時の私が受けたらほとんど暴力だ。きっと死ぬ。それを追い風にできる彼らが眩しかった。
だから応援した。苦手な大声を出して、振りも下手くそながら覚えて、メガホンを振り回して応援した。
いちばん祈ったのがタイガーラグのかかった時だった。
あんなにうるさいところで、灼熱の太陽のもと、大暴れしながら一心に祈ることってなかなかない。きっと二度とない。今年もし私が甲子園まで行って金足農業高校を応援することがあっても、あんなふうではないだろう。
それを寂しく思いながら、アルプスで舞い踊る高校生たちをお茶の間アリーナから眺めている。
タイガーラグがたくさん、たくさん、たくさん、何度も何度もかかるといい。
もうじき、金足農業の準々決勝が始まる。
【8/18 17:45追記】
勝ちました。タイガーラグ、たくさんたくさん聴かせてくれてありがとう。
明後日もがんばれ。大好きだよ金農。
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