意外と知らない「同一労働同一賃金」の中身

昨年の3月28日に「働き方改革実行計画」が公表され、政府が目指す様々な働き方改革の内容、目的等が示された。このうち、特に政府が重要視するのが、「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」である。今年の6月1日にハマキョウレックス事件や長澤運輸事件の最高裁判決が出たこともあって、「同一労働同一賃金」という言葉は、誰もが耳にしたことのあるフレーズとなった。もっとも、「同一労働同一賃金」という言葉が一人歩きしてしまい、必ずしも正確な中身を捉えられていないように思われる。

現行法において、無期雇用労働者・有期雇用労働者間における「同一労働同一賃金」を定めた規定は?との問いかけに対しては、労働契約法20条と答えるだろう。労働契約法20条は、無期雇用労働者と有期雇用労働者間において不合理な労働条件の相違を設けることを禁止する規定である。

もっとも、労働契約法20条が「同一労働同一賃金」を定めた規定である、という表現はやや不正確である。

すなわち、労働契約法20条は、「賃金」だけでなく、労働者に対する一切の待遇(例えば、休暇、教育訓練、福利厚生施設の利用等)についても、格差禁止の対象としている。

また、「同一労働」でない場合であっても、「賃金」その他の待遇に格差を設けることが違法と判断される可能性がある一方で、「同一労働」である場合であっても、「賃金」その他の待遇に格差を設けることが許容される場合がある。

このように、「同一労働同一賃金」という言葉から受けるイメージと労働契約法20条が意味する内容は必ずしも同一ではなく、「同一労働同一賃金」という言葉はキャッチフレーズにすぎないのである。

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