「働き方改革」で勝ち組企業になるために

「働き方改革」の大きな柱として、「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」と「罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」の二つがある。いずれも法改正を伴うものであるが、法改正による変更は限定的であり、各企業は一刻も早い対応を求められている。

各企業が一刻も早い対応をすべき理由としては、労働生産性を向上させること、潜在的な訴訟リスクや行政等による処分を回避することも当然あるが、最も重要なものとして、人手不足の解消(有能な人材の確保)が挙げられる。

では、どのような「働き方改革」を行えば、人手不足の解消(有能な人材の確保)という現代の最大の課題を解決し、勝ち組企業になれるのであろうか。

(1)「同一労働同一賃金」

「同一労働同一賃金」は、主に有期雇用労働者やパートタイマーの待遇改善に関して用いられるフレーズであるが、広い意味では、「労働」と「賃金」を紐づけようという考え方である。すなわち、雇用形態等の「労働」と直接関連しない事項によって賃金を決めるのではなく、各労働者の能力、経験、業務内容、役割、責任、成果等に応じて賃金を決定すべきという考え方である。

外資系企業は、「労働」と「賃金」を紐づける賃金制度を採用している会社が多い一方で、伝統的な日本企業は、いわゆる年功序列的な賃金制度や正社員優遇制度を採用している会社が多く、近年においては特に若くて有能な人材が外資系企業に流れる傾向にある。今後、広い意味での「同一労働同一賃金」の考え方が広まることで、日本企業においても、「労働」と「賃金」を紐づける賃金制度を採用する会社が増え、それに伴い、昔ながらの年功序列的な賃金制度や正社員優遇制度を採用している会社は、有能な人材を確保できず、衰退していくことが予想される。

このように、人手不足の解消(有能な人材の確保)を実現するためには、有期雇用労働者やパートタイマーの待遇改善にとどまらず、賃金制度の抜本的な見直しが必要であると考える。

(2)「長時間労働の是正」

人手不足を解消するために長時間労働を是正すべきことは当然のことであるが、長時間労働を是正するプロセス又は是正後の対応方法によっては、企業間でリクルート力に大きな差がつくと思われる。

法律を遵守するために残業時間を減らすことを徹底するだけでは、労働者の残業収入が減ってしまうため、労働者のモチベーション低下につながる可能性がある。そのため、残業を減らす(残業をしない)ことで得られる手当を支給したり、(業務の性質によっては適さないこともあるが)基本給や賞与等の算定基準において各労働者の生産力・成果等の「労働」の質の部分を多く盛り込むなどして、残業時間を減らすことにインセンティブを与える(残業することのメリットを小さくする)ような仕組みづくりが必要である。

(3)まとめ

したがって、法律を遵守するだけの「働き方改革」では、必ずしも人手不足の解消(有能な人材の確保)という課題は解決されず、「働き方改革」で勝ち組企業になるためには、法律の遵守は大前提として、これに+αした「働き方改革」が必要であると考える。

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