企業成長を阻害しないパワハラ対策

引用した記事にあるとおり、厚生労働省は、職場のパワーハラスメント(パワハラ)対策として、企業に防止措置を講じるよう法律で義務付ける方針を示した。防止措置としては、相談窓口の設置やパワハラをした社員の処分内容を就業規則に設けることや、相談した人らのプライバシーの保護などが盛り込まれる予定である。

これにより、すでに防止措置に関する規定が存在するセクハラやマタハラと同様に、パワハラについても対策を講ずることが法的に要求されることになる。

といっても、そもそもパワハラの内容がわかっていないと対策のしようがない。

厚労省の示したパワハラの要件は、(1)優越的な関係に基づく(2)業務上必要な範囲を超えた言動(3)就業環境を害すること(身体的、精神的な苦痛を与えること)の3つであるが、極めて抽象的な文言であり、この要件から具体的にどんな言動がパワハラに該当するのかを正確に把握するのは非常に難しい。パワハラかどうかは、当該言動の内容のほか、当該言動に至った経緯等様々な事情を考慮して決まるものであるため、具体的に定義できないのも仕方のないことである。

上司・部下がパワハラの言葉の意味を十分に理解できていない中でパワハラ防止措置を強化していってしまうと、「パワハラを過度に気にしてしまい十分な指導ができない上司」と、「気に食わないことがあるとすぐにパワハラを主張する部下」が増えていくおそれがあり、その結果、上司がパワハラに委縮し、企業の成長を阻害するおそれがある。

労使がパワハラの内容を正確に理解した上で防止措置を強化していくことが、企業の成長を阻害せずにパワハラをなくすための重要なポイントであるといえる。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO38133960T21C18A1EA3000/

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