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人生にスパイスを与える、映画の名言#005 "一体何が起こる?""素晴らしいことだ"

"What's going to happen?" "Something wonderful."
"一体何が起こる?" "素晴らしいことだ"

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 2001年に行われた、宇宙船ディスカバリー号の木星探査ミッションは、船に搭載された人工知能「HAL」(ハル)の暴走による乗組員の排除、謎の黒板モノリスの登場、そして木星付近での船外活動で行方不明となったボーマン船長(キア・デュリア)からの最後の交信「すごい、星がいっぱいだ!」という言葉と共に、答えが明示されないまま終了してしまう。
 それから9年後の2010年。ボーマンの上司だったヘイウッド・フロイド博士(ロイ・シャイダー)は、ソ連(※映画製作当時は冷戦下だったため"ロシア"ではない)との共同ミッションに参加し、ディスカバリー号とモノリスの謎、そしてボーマン船長に起きた"何か"を調査するため、宇宙船レオーノフ号で木星の衛星イオへと向かう・・・。

 映画史上最高のSF映画の1本『2001年宇宙の旅』(1968年)から16年後、80年代中盤に製作された正統な続編。原作者のアーサー・C・クラークはもちろん、前作の監督/スタンリー・キューブリックからも承諾を得て製作され、そのSFX(視覚効果)や見事な美術セットは、当時のアカデミー賞にもノミネートされた。前作で特撮を担当したダグラス・トランブルの伝統を受け継いだような、リチャード・エドランドの細部にまでこだわったSFXや、シド・ミードの工業デザインも見どころ。製作前から「無謀すぎる続編」と言われながらも、その困難を見事に乗り越え『2001年』に対する、ある種の「答え」を提示した作品となった。個人的にも本作の監督・製作・脚本・撮影を兼ねたピーター・ハイアムズの功績は、もっと讃えられるべきだと思う。今ではこの映画について話すと「『2001年』に続編があるんですか?」と驚かれることもあるくらい、少々マイナーな作品となっているのは惜しい限り。あえてナレーションや説明を省き、観客に多くの謎を残す"モナリザ理論"を多用した前作とは異なり、『ジョーズ』『スター・ウォーズ』以降のブロックバスター映画(大作志向)を感じさせる、明瞭なエンタメ映画としての流れを汲んだ本作。確かに前作に比べると「軽さ」「ファンタジーっぽさ」「分かりやすさ」は否めないものの、『2001年』へのオマージュもたっぷり含まれた、製作側の愛情あふれる続編に仕上がっていると思う。

 今回取り上げたセリフは、劇中でヘイウッド博士が再会する、ある人物(映画本編で確認してほしい)が言う、クライマックスで起こることを予言するセリフ。当時冷戦下だったアメリカとロシアの関係性も含みつつ「一体何が起こるんだろう?」と、見る者の期待感を存分に煽る一言。その”素晴らしいこと”は賛否両論あるものの、今でも十分驚きがある展開かと。
 徹底的な"神の目線"に立ち、人間らしさを極めて排除した『2001年』に比べ、会話やドラマが増えた『2010年』は、温かみが増えた続編になっている。前作との明確な違いや「人間同士の協力と平和の重要性」というメッセージが込められた良作SFとして、今後も語り継がれていくはずだ。

-2010年(1984年)
監製脚撮:ピーター・ハイアムズ
原:アーサー・C・クラーク
出演:ロイ・シャイダー、ジョン・リスゴー、ヘレン・ミレン、キア・デュリア

この記事を書いた人
大石盛寛(字幕翻訳家/通訳)
通称"日本字幕翻訳界のマッド・サイエンティスト"。
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