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“海外現地採用”を目指す就職活動について ー 日本で働きながらの活動はかなり大変⁉

本記事では、私が経験した“海外現地採用”の就職活動について、最終的に内定を得るまでの経緯や所感などをお伝えしたいと思います。

2023年9月、私が通うイギリスのビジネススクールでMasterコース(MSc Human Resource Management)の一年間のカリキュラムが無事終了しましたが、それに先立ち、同年春頃から就職活動を進めてきました。最終的に、幸いにもタイ(Thailand)での人事コンサルタントとしてのポジションでオファーをいただくことができたため、来年からタイで働く予定ですが、その内定に至るまでのおおまかな流れについてご紹介します。

2023年春(2月~4月)

自分がやりたいことの明確化とCV(履歴書/職務経歴書)作成

コース終了の約半年前から、就活の準備を始めました。
まずは「自分がやりたいことの明確化=文章化」を行いました。海外就職の場合、募集されている各ポジションに、日本よりも明確なジョブ・ディスクリプション(JD、いわゆる募集要項)が用意されており、採用する企業側にとっても「必要とする人材(スキル、経験、コンピテンシー等)」が明確なケースがほとんどです。

なので、自分のやりたいことを整理して文章化しておくことで、JDを読んだ際に自分の興味・関心と一致するポジションかどうかを素早く判断し意思決定のスピードを上げることができ、時間の節約にもなります。この時点での文章化は、箇条書き程度の短いもので大丈夫かと思います。

ここで補足的に所感をお伝えすると、現地採用を目指す場合、日本で就活を行う場合以上に「自らJDを読みこなす」ことが必要になると実感しました。
イギリスを含めた世界の主要な国では日系の転職エージェント会社が営業しているため、日本人としてはそこに登録することで希望に合う仕事を(日本語で)紹介してもらうことが可能です。ただ、“現地採用”を目指す場合、多くの海外の企業はそういったRecruitment Agencyを使わず、自社の採用担当者が直接求人の作成・応募・採用まで行うDirect Recruitmentが主要であるため、より自身の希望・条件に合ったポジションを幅広く探すためには、自らJDを直接読んで判断することが必要になってきます。

一方で、実際に求人への応募(書類選考)を進めた場合、JDに記載されている要件に一致するスキルを保有している応募者であることを企業側へ明確に伝えること、も重要になってきます。そこで、企業へ提出するCV(Curriculum Vitae:日本の履歴書/職務経歴書と同類の書類)に、自身のやりたいことに関連する具体的で明確な経験・スキル等を記載するためにも、事前の棚卸しや文章化という作業が、まず最初にやるべきことかと思います。

次に、それを基にCVを作成していくのですが、ベーシックなCVのテンプレートがWeb上にたくさん展開されていますので、デザインやビジュアルの好みを含めて、自分が好きで書きやすいと思うものを選ぶと良いかと思います。ちなみに、私は以下のサイトを使い、無料版の範囲でCVを準備しました。顔写真欄の有無・カラーリングなど、幅広い選択肢からデザインを選ぶことができます。

具体的なCVの書き方については、より詳細に説明されている他のWebページ等が既に存在すると思いますので本記事中では割愛させていただきますが、基本的には先述の通り、自分のやりたいことにマッチするポジションで主に求められるスキル・経験にフォーカスして、自身の過去の成果を端的かつ具体的に記載する、ということになると思います。

転職エージェントへの登録とJob Searchingサイト(LinkedIn, Glassdoor)の更新

CVが準備できたら、応募先を見つけるため転職エージェントへの登録と、LinkedIn, GlassdoorなどのJob Searchingサイトの登録情報更新を行いました。
日本でもLinkedInを使われている方はだんだん増えてきているかと思いますが、いわゆるビジネスシーンでのSNSのようなサイトになります。直接の知り合いと繋がることもできますし、興味のある企業やヒトをフォローすることもできます。それと同時に、自身の学歴・職歴・スキル等の登録情報を充実させることで、人材採用中の企業や転職エージェントから直接メッセージを貰えたり、LinkedIn上に公開されている求人に直接応募することも可能になります。
また、同じような目的でGlassdoorというのも欧米では主要な求人探しサイトとして使われています。こちらは、LinkedInのようなSNS的な機能よりもジョブサーチ機能を重視しており、LinkedInでは公開されていない求人もあったりするので、両方に情報登録しておくことでジョブサーチの幅をより広げることができると思います。

私が登録・利用したエージェント会社は以下の通りです。一部、担当エージェントの方と直接面談は実施していないところもありますが、当該エージェントを通じた案件への応募やメールでのやり取りは行いました。
また、登録した時期が2023年春より後(秋:9月以降)のところも含めて全件列挙しています。

  • イギリス国内の転職エージェント
    - Centre People
    - People First
    - JAC Recruitment UK
    - Hays

    ※その他、「イギリス掲示板」「MixB」といったイギリス国内のアルバイト・求人を一般ユーザーが募集・応募できる掲示板サイトや、海外現地採用希望者向けのダイレクト・リクルーティングサイト「Daijob.com」なども利用。

  • その他の国・エリア
    - JAC Recruitment USA/Germany/Singapore/Malaysia/Hong Kong/Vietnum/Thailand/Indonesia
    - Reeracoen(リーラコーエン)
    - RGF (Recruit Global Family) Singapore
    - アデコ タイランド/オーストラリア
    - iconic (Vietnum)

同じヨーロッパ、アジア域内であっても各国で労働法が異なり、エージェント会社も各国で許可を得て業務実行していることもあり、世界各地のジョブを一人の担当者から横断的に紹介してもらえるというサービスはありませんでした。複数国に拠点を持っているエージェント会社の場合、企業内で登録者の情報を共有したり、ご担当者間で連携していただくことはもちろん可能なのですが、自身のより細かいニーズを伝えて積極的に仕事を探したい場合や現地の労働マーケット状況を詳しく知りたいという場合は、やはり担当者の方と直接お話しする方が良いことも多く、国ごとにエージェントの方と面談を実施することが必要になってきます。これは、かなりの時間と労力がかかりますし、海外在住のエージェントとの面談は時差も発生しますので、転職エージェントの活用スタートする前に予め念頭に入れておくと良いかもしれません。

私の場合、フルタイムの学生で時間的な制約は少なかったこともあり、上記の他に日本拠点のエージェントや転職サイト(ビズリーチ、リクルートダイレクトスカウト)もフルに活用したうえで何とかやりくりすることができましたが、日本にいながら、また仕事をしながら活動をする場合は、スケジュールの立て方活動の優先順位の付け方により工夫が必要になってくるかもしれません。

2023年夏(5月~8月)

イギリス国内の求人への応募・面接実施

転職エージェントからの紹介やLinkedIn等のサイトで見つけた興味のある求人に対し、まずはイギリス国内の求人へ実際に応募を開始し、書類通過した案件について面接を行いました。
私が主に探していたのは、「日系企業のイギリス支社での人事ポジション」でしたが、以下のような理由のために当初想定していたよりも厳しい状況となりました。。

  • そもそも該当する案件数が少ない
    ⇒海外支社の人事業務は、日本本社(Head Quarter)から派遣・駐在している支社長やマネジャーが営業業務等と合わせて兼任担当していることが多く、アカウンティングやマーケティング等のポジションに比べHR専門の担当者を現地採用するケースが多くはない

  • 求める給与水準が合わない
    ⇒上記の理由も含め総務・人事の業務範囲はオペレーショナルなものになるケースが多く、したがって担当者を置いた場合の給与水準もそれほど高くない。独身であれば問題ない水準でも、家族4人でロンドン近郊に住むとなると厳しいレベル

  • 業務経験のアンマッチ
    ⇒海外支社での人事業務の範囲には、ほぼ“駐在員の管理業務”(=ビザ関連・現地労働法の知識など)が入っており、当該経験を保有していることが採用条件として求められるが、私の過去の経験とはアンマッチだった

いくつか実際に面接を実施いただいた中でも、自身の英語力の無さと準備不足でお見送りになるケースがほとんどでした。
やはり、何度か面接を経験する中で、英語での表現方法・言い回しなど徐々に自分の中で“型”が決まってくる実感があったので、何事も実際にやってみるということが重要だなと改めて実感しました。

また一件、ロンドンにある日系企業をクライアントとする法律事務所での人事コンサルタントのポジションで最終面接まで進むことができたものの、先方内で「当初想定していたプロジェクトが立ち消えになったため、ポジション自体クローズ」となり、結果的に内定はいただけなかったということもありました…(面接後、一か月以上結果を待たされたのですが。。海外あるあるなのか…?)

2023年秋(9月~11月)

イギリス以外の国・エリアの求人への応募・面接実施

イギリス国内での持ち球が無くなり始めたため、他国の求人も積極的に検索・応募を開始しました。EU域内、北米、オーストラリア、香港、東南アジア、および日本。本当は9月末の大学院カリキュラム終了と同時に、10月から働き始めたいと考えていたのですがそんなに甘くはありませんでした…

また、可能であれば日本以外の国で英語を活かして仕事をしたいと考えていましたので、「何とか日本以外の国で見つけてやる」という気持ち一つで(笑)、自分の関心領域や将来やりたいことだけに捉われず、過去の経験を活かせそうなポジションを含め文字通り“手当たり次第に”応募しました…!その際、前述の通り多数の転職エージェントへの登録と担当者との面談が発生したため、その点でも当初想定のスケジュールよりも遅れてしまったなと感じています。。

結果的に東南アジアのいくつかの国で面接を実施していただき、シンガポールの人事コンサルポジションとタイの人事コンサルポジションからそれぞれオファーをいただくことができたのですが、最終的にはもろもろの条件等を勘案してタイでのポジションを受けることに決めました。
就活を始めてから約10か月の長い道のりが、ようやく終わりました…

ちなみに、イギリスと同様、EUや北米では基本的に私の希望条件に合う求人数が限られており、あっても「HR業務を含めた現地拠点の経営マネジメント」ポジションなど求められるレベルが高い求人が多い印象でした。
オーストラリアでは、日本人向けのHR業務のポジションは見つけられませんでした…営業やアカウンティングポジションでの求人はあるようでしたので、各国でどれくらい球数があるかは、希望の職種によるかと思います。どのような職種でニーズがあるのか、事前に労働マーケット情報をリサーチしておくとより良いかもしれません。

まとめ

最近では“海外現地就職”を目指している方も多いかと思いますが、そんな方にとって知っておいていただくと有用かなと思うことは…

  • めちゃくちゃ時間がかかる!
    ⇒日本在住・働きながらの場合は、なおさら時間的制約がある可能性も⁉

  • 日本での就活との違いに気を付ける!
    ⇒JDの読み方、CVの書き方、Job Searchingサイトの活用、ポジションの流動性の高さ

  • 自分の希望職種・ポジションに合わせて検討する!
    ⇒HR系のポジションなど、そもそも求人数が少ないケースもあり得ます。まずは、自分が希望する職種が、どの国・エリアで、どのようなポジションでニーズがあるのかを調べてみると良いかもしれません

  • とにかく応募しまくる!
    ⇒Web上に掲載されている求人でも、応募してみたら既にクローズになってしまっているというケースも多くあります。少しでも興味を持った案件にはすぐ応募してみるのが時間の節約に繋がります

以上、お読みいただきありがとうございました。
少しでも本記事の情報をご活用いただければ幸いです。


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