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ウェディングジャーナル連載 Vol5 成果を創出する組織改革

※本記事は2023年にウェディングジャーナルに連載した記事です。

成果を創出する組織改革


第5回は"成果を創出する組織改革をテーマとします。ブライダル事業は「装置産業」であり、ハードや外部要因が業績を左右します。しかしその一方で、例えば個人によって成約率や顧客満足が異なるように、ソフトによって業績が大きく変わることがあります。私の経験上でも、ハードを改修せずにソフト=組織を変革するコトで、業績が大きく変わった実例が多数あります。このコラムは、コロナ禍で苦闘を続けておられる方が、明日へのヒントに繋がったと感じていただけるように、私の実体験を通して今まさに重要だと思う5つのポイントを紹介しています。下記の記載内容に於いて、これらの全てが出来ていないとダメというよりも、5つのポイントから、一つでも多く「明日からこれを重視していこう」と参考にしていただければ幸いです。

成果を創出する組織となる為の5つのポイント

ポイント①「自責の思考」が強い組織

成果を創出する組織は、職位に関わらず「自責の思考」で考えます。結論を先に記載すると、人それぞれが固有の価値観をもっていますが「ビジネスに於ける自責の思考」は、マネジメントや研修によって変容させるコトが出来ます。私にはそう語るコトが出来るだけの、多くの実績・裏付けがあります。「それは自責の組織の方が良いだろう」とお感じの方も多いと思いますが、この章でのポイントは、その価値観を醸成するのは経営層・管理職の役割であるというコトです。来館数が上がらないコト、成約率が上がらないコト、生産性が上がらない、顧客満足が上がらない、自己成長が見えないなどの「全ての要因を他責」にしてしまう組織は、成果が上がりづらいです。そして、他責にすることで安堵(納得感)を得て、状況が悪くなるに従い、さらに他責を強めるコトで納得しようと試みます。他責の組織では、自ら打破するアクションを考えるコトが出来ないのと、仮に他者から業務指示が出たとしても、出来ると思って行動しない為、精度が低い傾向にあります。自責の思考が強い組織は、分かりやすい表現をするのであれば「事業会社にとって他責の思考は、無価値であり、害でしかないというコト」を知っています。そして更に、自責の思考が浸透している組織の特徴は一方で、自責で考えないほうがよい事象についても、正しい分別があるコトが多い為、過度に自責で考えるコトがなく、結果として健全性も担保されているコトが挙げられます。

ポイント②「ビジネスとしての前提条件」が浸透しているコト


個々の働くモチベーションとなる、成長している実感や期待、待遇面、自己効力感、ワークライフバランス、人間関係などはもちろん重要です。しかし一方で、私が長年ブライダル事業に携わり感じているコトは、そもそも「ビジネスとして大切にしなくてはならないコト(前提条件)」が浸透していないことが多いという点です。ブライダル事業として大切にした方が良い普遍的なコトとは、成果・顧客満足・安全・生産性・協調性・納期などありますが、まずそれらが浸透しているがどうかが重要だと感じています。当たり前だと思う方も多いと思いますが、実態は本当にそうなっているでしょうか?これらのコトを、浸透させる努力を怠っている組織が、私の実体験上少なくありませんでした。そうした組織では、成果や顧客に向き合うよりも、個々の希望が叶わないと不平不満を重ねているコトが多いように感じています。私も多くのコンサルティング支援で「人の成長の為に企業・組織があるのではないというコト。お金を払って教えてもらう学校と、対価を得て責務を果たす企業とは性質が違う。但し、私は組織として人の成長を大切にすることはとても重要だと考えている」と発信しています。驚くような成果を挙げている組織ほど、個性や個々の価値観がそれぞれバラバラでも実際は非常に健全に作用して、一方で高いビジネスリテラシー・前提条件の共通理解が浸透していると感じます。そして、それらを浸透させること自体は決して難しいコトではなく「重要視するか?実施するかどうか?」の組織としての意思決定の問題でしかないとないと感じています。但し、ポイントはいかに初期からずっと、且つ平時に浸透させ続けるコトが出来るかどうかです。こうした話に於いて多くのケースでは、退職の相談や不平不満が出たときに、カウンタートークとしてこれらの前提条件で説き伏せようとする管理職の方をよくみるのですが、おそらく火に油の状態であるコトが多いです。

ポイント③セクショナリズム・心理的安全性の欠如を生まないマネジメント


未だに「上長や他部署に相談しに行くのが怖い」とか「お願いしても断られるから行かない」など、時代錯誤な事例が見られます。もちろん、長年そうした環境で育ってきたという理由があることを承知していますが、そんなことが成り立つ平穏無事な世の中ではありません。ただでさえ、難しいビジネス環境の中で、むしろ足を引っ張り合うような関係性を許容している場合ではありません。これらを改善できない原因は、経営層に責任があります。ボトムアップで、改善するコトは難しいというコトを多くの方が分かっているはずです。甘やかすとか礼儀・礼節を失うのではなく、適切な組織の関係性を構築する。その為に「マネジメント層に対するマネジメント」を、経営陣が怠ってはなりません。特にブライダル事業は、組織の健全性や、モチベーションの高さが顧客満足・従業員満足・業績にダイレクトに影響します。良くなるしかありませんので、現状把握と改善が必要な場合は、早期に着手されることをお勧めします。

ポイント④適切なG-PDCAサイクルの運用・結果だけを詰めるのはマネジメント放棄

「G-PDCAサイクルが重要で、運用しています」という組織は大多数だと思います。しかし、適切な運用が出来ているか?という点に於いては、そうでないことが散見されるように思います。代表的なケースとして、3つあります。そもそもPDCAというのは「Planning=計画立案」が重要なように思われがちですが「Check・Action=確認・修正」も非常に重要だという視点が不足しているように思います。結果的に、出来なかった事実だけを指摘をするリーダーが非常に多いと思うのですが、そもそも途中段階で軌道修正していれば、結果が変わっていたかもしれないと感じるコトが非常に多いです。ブライダル業界のよくない慣習として、新入社員以降、一人前になると個人商店化して放置される傾向を強く感じています。余談ですが、先日ブライダル業界外の方から非常に嫌な揶揄をされましたが「装置産業ではなく放置産業で、コーチングではなくホウチ(放置)ング」ですねと言われました。非常に悔しい思いをした一方で、遠からずという印象を抱いたのも事実です。二つ目の特徴として、ブライダル事業は、集客から施行日まで長い期間を要します。私は様々な企業・組織の会議に出席していますが「来週・来月の売上はどうするんだ?」「なぜこの結果なのか?」といった短期アクション・原因追及ばかりに終始する組織が非常に多いと感じます。半期に一度の長期アクション・2か月先を見通した中期アクション・二週先を見越した短期アクションの設計と運用が重要ですが、短期アクションと原因追求だけに終始すると結果的に、うまくいかないループは解消されません。
最後に三つ目として、アクションの自分ごと化・熱量の浸透が為されているかどうかです。
感情・モチベーションの高低に左右されないのがフレームワークだという専門家もいますが、実業家の立場からするとそんなことはありません。意図意味・任せる期待・達成した時の情景などを大切に組織に浸透させられているかどうかが非常に重要です。無味乾燥な、感情や熱量の低いタスクとして任せているだけでは、驚くほどの成果には繋がりません。

ポイント⑤ 成功を全力で喜び賞賛する組織

顧客の幸せを創出するブライダルビジネスに携わっていると、日々やって当たり前という風潮が業界を覆っているように感じます。これは、とてももったいない風潮だと思っています。成果を創出している組織のリーダーの特徴として、褒め上手という共通項があると私は思います。勘違いしてはならないのは、決して全てを甘やかすリーダーではありません。むしろ、成果や期限、クオリティ、健全な組織へのこだわりは非常に厳しいと感じます。リーダーの影響力に必要な要素の一つである厳格性について、「怖い存在と誤訳」してしまうリーダーによくいますがそうではありません。人は成功体験から多くを学び成長を遂げるだけでなく、モチベーションにも繋がります。どの組織でも、はじめての接客・施行担当、キャプテンとしてのデビュー、調理での新たなポジション等、はじめの瞬間には賞賛をする機会が多いものの、それ以降なかなか成功を共に喜ぶ機会がないように感じています。成果を創出している組織のリーダーは比率としては、褒める80%・指摘指導20%くらいのバランスを心掛けているようです。且つ、褒めるときも全力でというスタンスの方が非常に多いと感じています。褒めるときこそ、よりオーバーに分かりやすく。始動するときには、冷静に落ち着いて。

一つでも多くの項目が、明日からのヒントに繋がれば幸いです。

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