見出し画像

難敵とのアウェイ決戦 〜2019J2リーグ 第10節 モンテディオ山形 vs レノファ山口FC プレビュー〜

こんにちは!

今回のnoteは、現在2位のモンテディオ山形戦のプレビューです。

前回の試合の振り返りはこちらです。


先制点は与えたくない山口


まずは,過去の対戦成績を見てみましょう。

画像1

昨年は互いにアウェイで0-1の勝利を収めるという結果になりました。どちらの試合も山形ペースで進んでいたという印象が残っていますが,アウェイの試合では,ディフェンスラインの裏に走った高木大輔へのロングパスというワンチャンスをものにしての勝利でした。

それから,山形の好調を表している数字が,先制したときの勝率の高さです。山形はここまでの9試合のうち5試合で先制点を挙げています。そして,先制した試合は,4勝1分という成績です。勝率にすると80%です。

唯一の引き分けは,前節の新潟戦です。ただ,この試合も山形ペースの中,最後の最後ペナルティエリア内に混戦を作られ失点してしまったことによるものでした。山形が悪かったわけではなく,新潟の意地のようなもので追いつかれたわけなので,先制時の山形の強さに変わりはないと思います。

山口も同じく5試合で先制点を挙げています。しかし,山口は2勝1分2敗の成績です。比較をすることで,ここまでの山形の強さがより際立つのではないでしょうか。


ボールを奪って,奪われての展開が多い山形

Football LABのスタッツを見ながら,山形の特徴を紹介したいと思います。

まず特徴的なのは,攻撃回数と被攻撃回数の多さです。攻撃回数はリーグで4位の1試合平均133.8回,被攻撃回数はリーグで20位の139.2回です。攻撃をする回数が多く,攻撃受ける回数も多いことから「ボールを奪って,奪われて」という展開が多いことがが予測できます。

実際に前々節の東京ヴェルディ戦や前節の新潟戦を見てみると,その傾向が読み取れるプレーがいくつか見られました。

例えば,自陣で奪ったボールをどうするかということで言えば,試合の立ち上がりはリスクを回避する為に,ワントップの選手に向かってボールを蹴りだすことが多かったです。特に,ワントップにバイアーノがいる場合には,サイドに流れた彼に向かってのロングボールが多く,そこでファウルをもらったり,スローインを獲得したり,相手にセカンドボールを回収されたりといった部分で,攻撃回数も被攻撃回数も増えていくのだろうと感じました。

では,前線に向けてのロングボールを相手に回収された場合などの守備はどうなのかというと,自陣に構えて敵を待つのではなく敵陣からの強烈なプレッシングを敢行します。そのプレッシングでボールを奪い切ることができるため,それぞれの回数が増えていくのだと思います。

山形の強さの要因の1つがこの敵陣からの積極的なプレッシングだと思います。この守備でボールを奪い切れるということは,スタッツにも表れていると感じています。

それは,攻撃を受ける回数(被攻撃回数)が多い割にシュートを受ける本数が圧倒的に少ないことです。

先ほども書きました通り,山形の攻撃を受ける回数はリーグで3番目に多い139.2回です。ただ,シュートを受ける本数は1試合平均9.0リーグで最も少ない数字です。シュートを受けていないということは,自陣深くまで相手に侵入されることが少ないからだと思います。つまり,自陣深くに相手が入ってくる前にボールを奪い切ることができるということです。

このように山形の戦い方の特徴の1つとして押さえておきたいことは,自陣深くで奪ったボールは,まず敵陣に蹴り出して,そこで前から積極的にプレスをかけて行ってボールを奪って速く攻めることです。

山形サポーターの方や山形をよく見ている方は,「おいおいそれだけじゃないぞ山形の戦い方は」とお思いだと思いますが,それは一旦お待ちいただいて話を続けます・・笑


山形ディフェンスのスイッチを入れるルーキー坂元

さて,先ほどの山形の戦い方,特に前からのプレッシングを行う上で,キーマンとなっていると感じた選手が,坂元達裕です。

山形は基本が3-4-2-1,守備時は5-4-1のフォーメーションを採用しています。坂元は3-4-2-1の2の右サイド,5-4-1の4の右サイドを担当しています。

坂元の守備でまず言及したいことは,ポジショニングです。相手の右CBや右SBがボールを持っている時,坂元は相手の左CBにも,左SBにもアプローチがかけられるような絶妙なポジションを取っています。

そして,次に言及したいことは,判断の良さです。ここで言う判断とは,相手の左CBにプレスに行った方が良いのか,行かないで待った方が良いのかという判断のことです。これがとにかく素晴らしいと思います。

坂元は,守備の時よく首を振って後ろの状況を確認しています。だからこそ行くか行かないかの判断ができるのだと思います。

そこで,後ろの状況が整っていると判断したときには,相手の右CBから左CBにパスが出るその瞬間に,強烈なスプリントを左CBにかけます。相手のCBはそのアプローチを感じて,横にいる左SBにボールを逃がします。すると,山形の右WBの三鬼が連動してアプローチをかけボールを奪います。

逆に,後ろの状況が整っていないと判断すれば相手の左CBにパスが渡ってもプレスはかけず,まず縦のパスコースを防ぐポジションを取ります。そして,相手左SBにパスが出るように誘導して,そこに出た瞬間にアプローチをかけます。この時には後ろの状況も整い始めているので,三鬼も相手の左SBにアプローチをかけることができます。相手の左SBが横から坂元,前から三鬼の圧力を感じて左CBにボール下げると,それを狙っていたかのように坂元が一気にCBにプレスをかけてボールを奪ってしまいます。

このように,坂元の判断の良さとそれに連動する後ろの守備陣の正確なスライドが,山形ディフェンスの堅さのカギだと感じました。

坂元の凄みは,これらのポジショニングや判断の良さ,アプローチの強度を長い時間続けられることに加えて,これだけ守備で貢献しているにもかかわらず,攻撃面でも違いを見せられるところにあると思います。これが大卒とはいえルーキーだということですから末恐ろしい選手です笑


山形の攻撃の話

ここまで,「自陣深くで奪ったボールは,まず敵陣に蹴り出して,そこで前から積極的にプレスをかけて行ってボールを奪って速く攻める」という山形の戦い方について,前からのプレスの部分を少し詳細に紹介してきました。

最後に,山形の攻撃は全て,後方から前線に蹴って「あとはバイアーノ任せた」といった感じなのかということについて少し紹介したいと思います。

確かに,試合の立ち上がりは,リスク回避もあってかロングボールが多い傾向があると思います。ただ,15分30分と時間が経過していくにしたがって,その傾向は薄れていくように感じました。

こうなってくると相手は,ロングボールを蹴らせないように前線からプレスをかけてきます。この動きに合わせディフェンスラインも高くまであげ全体をコンパクトに保てれば良いのですが,山形の前線のバイアーノや阪野の動きやキープ力によって相手のディフェンスラインが押し下げられ,前線からディフェンスラインまでの距離ができることも時間の経過とともに出てきます。

すると,山形は途端に空いたスペースに顔を出してパスをつなぎながらボールを運んでいくようになります。

この時に気をつけたいのが,右WBの三鬼からの斜めのパスです。距離が開いたディフェンスラインと中盤のラインの間にパスを通してきてチャンスを作ります。新潟戦の2得点はともに三鬼の斜めのパスがスイッチとなり生まれたゴールでした。

このように,山形は攻守ともにバリエーション豊かな戦い方ができるチームだと思います。


展望

画像2

山形のスタメンは,GKを含めた後ろの8人と坂元は鉄板だと思います。あと2人の予想をすることは難しいのですが,おそらく,ここ2試合で3ゴールを挙げている大槻はスタメンで出てくるのではないかと思っています。

山形に対して,山口としてはまず前線から最終ラインまでをコンパクトに保つことが重要になってくるでしょう。後ろの準備が整っていないのに相手の3バックにプレスに行ってしまうと簡単に剥がされてしまうと思います。チーム全体で意思統一をして守備をしてほしいです。

攻撃面では,ビルドアップ時に,SBにどのような形でボール預けることになるのかがポイントになると思っています。何気なくボールを預けてしまうと相手のプレッシングの餌食になってしまいます。特に,これまで右サイドを本職としていた川井が左サイドで坂元,三鬼を相手にうまくボールを運ぶことができるのか,そして,川井に良い状態でボールを届けてあげることができるのかということに注目したいと思います。

また,山口の左サイドがうまくいくかということもそうですが,どちらかと言えば右からの方がボールを運びやすいのではないかと思っています。

なぜなら,山形の左のアタッカーで出場するであろう大槻よりも右の坂元の方が守備がうまいように見えるからです。大槻の方がより攻撃にストロングを持っている選手だと思うので,そっちのサイドからの方がボールを前に運びやすいのではないかと考えています。

山形のプレッシングに負けないで,なんとかうまく前線にボールを運んでいく形を出してほしいです。


個人的には,これらのポイントに注目しながら山形戦を見たいと思います。

山形のアウェイ戦は,非常に厳しい戦いになると思います。ここまで書いてきたように,山形は戦い方の幅が広く,状況に応じて戦い方を変えられる強いチームです。また,アウェイ戦ということで注意したいのはです。NDスタは風が強い日が多いように見えます。それによって空(浮き玉のパス)がやや使いにくくなることもあるかもしれません。

そういった要素にも打ち勝って,勝ち点3を獲得することで波に乗っていきたいところです。


*文中敬称略
*データは全てFootball LAB(http://www.football-lab.jp/ryuk/preview/?year=2019&month=03&date=30)のものを参照しています。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?