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正義感が仕事になる

筆者

検察官(水戸地方検察庁土浦支部〔雑誌掲載時〕) 渡辺梨咲(わたなべ・りさ)
出身校: 神戸大学法学部・同法科大学院/静岡県立静岡高校


刑事裁判を始める仕事

編集部:検察官の仕事はどんな仕事で,どんな特徴がありますか?

 大きく分けて「捜査」と「裁判」があります。「捜査」は,簡単に言うと,犯罪が発生してから,その犯罪を誰が起こしたのか,なぜ起こしたのかなどについて解明していく手続のことです。検察官は,被疑者〔ひぎしゃ〕(罪を犯したと疑われる人)や被害者などから話を聞き,警察と協力して証拠を集めます。捜査で集まった証拠を基に,その被疑者を起訴〔きそ〕するかどうか,つまり,刑事処罰を決するための手続である刑事裁判にするかどうかを決めます。「裁判」では,裁判官が,起訴された被告人〔ひこくにん〕(被疑者の起訴されてからの呼び方)を有罪か無罪か,いかなる刑罰が適切かを判断しますが,検察官は,捜査で集めた証拠を裁判で提出したり,証人尋問〔しょうにんじんもん〕を行ったり,意見を述べたりします。

 検察官は,「公訴権〔こうそけん〕」という,被疑者を起訴する権限を持っています。被疑者が起訴された場合,裁判で無罪とならない限り,刑罰を受けることになるので,とても重い権限です。被疑者が犯罪を犯したと確信し,刑事処罰を受けるべきであると判断したときに限り,検察官はその重い権限を使って被疑者を起訴するのです。

ドラマに憧れて

編集部:検察官を志望したきっかけを教えてください。

 木村拓哉さんのドラマ『HERO』がきっかけです(笑)。小さい頃から,刑事ドラマが好きで見ていましたし,刑事事件に興味があったのかもしれません。進路を考えたとき,実際はそんなに高尚〔こうしょう〕な目的があったとかではなくて,ドラマの影響からなんとなく検察官=司法試験受けたいな,というぐらいの感じで法学部を受験し進学しました。法学部に入ってからも,刑法や刑事訴訟法といった刑事系の科目を勉強しているのが一番楽しかったですね。

 その後,法科大学院に進学し,そこで初めて検察官に会い,その講義を聴き,誇りを持って仕事をされていると感じました。司法試験に合格後,「司法修習〔しほうしゅうしゅう〕」という研修を受けるのですが,そこで検察官の実際の仕事編集部:起訴・不起訴を決める場面も色々な事情を考慮して悩みながら決める姿を見て,やりがいのある仕事と感じ,検察官になりたいと志望を固めました。

どんな経験も仕事につながる  

編集部:法学部や法科大学院時代について教えてください。学生時代の学びは仕事につながりますか?

 検察官は,当然,法律を使う仕事なので学生時代の学びと仕事が直結します。法科大学院で大量の裁判例を読んだ経験のおかげで,今も大量の資料と向き合うことができているように思います。

 学部時代は弓道部に所属し副部長として,講義以外の時間は弓道場にいるぐらいがんばってましたね。法曹〔ほうそう〕の同期も,アルバイトや旅行,部活と,必ずしも勉強ばかりの人だけではなかったです。大学生は,高校生より自由なので,やろうと思えば,勉強だけでなく色々なことができると思います。そこで経験した色々なことが仕事にもつながります。私自身,部活の副部長として部員の意見を聞いてきたことなどが,今の事件関係者に話を聞くことにつながっていますし,アルバイトで様々なバックグラウンドや境遇の人と接することができたことが,被疑者などの事件の背景事情を考える上で活きています。

高校生へ一言

 大学は,色んなことを学び,経験しながら自分が進みたい道を探していく場だと思います。ぜひ,興味のあることに臆〔おく〕せず挑戦していってください。

※ 「法学部で学ぼうプロジェクト」編集部より

本記事は『「法学部」が面白いほどよくわかる』に掲載されたものです。
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