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できそこないの男たち 福岡伸一 光文社新書

第七章をまた読む。繰り返して何度も読んでいる。
アリマキ(アブラムシ)たちは基本的にメスからメスが生まれる。
「アリマキたちは、ロシアのマトリョーシカのような『入れ子』になっているのだ。母の胎内に娘が育つ。そして娘は、まだ産み落とされる前に、すでにその胎内に次の娘を宿している」

その彼女たちが冬の訪れ(気温の変化、夜の時間の長さを計る)を予感するころ、秋も深まったある日、オスを作り出すという。

受精卵は硬い殻に守られて次の春まで生き延びるチャンスを得る。

新しい春にはまた、「基本仕様として過分も不足もない。付け加えるものもわざわざ捨てるものもない」メスたちが新しい命を開始するのだ。

「ほんの一瞬現れたオスによって、メスとメスの遺伝子が、新たに出会い、交換されている」

大規模な気候変動や、急激な試練が襲ってきた時のためだ。
「前の年にシャッフルを受けた遺伝子情報の組み合わせからほんのわずかながら、その試練をかいくぐって生き延びる者があればよい」

なんという賭け。

メスは縦糸。

オスは横糸。
ママの遺伝子を誰か他の娘に届けるために。

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