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【第26話】リーダーへのヒアリング②

順子は二人のリーダーに声をかけ、午睡中の時間に職員室に来てもらった。

約束の時間になると、二人一緒に職員室に入ってきた。

主任の順子に突然呼び出されることはこれまでもあったが、子どもの怪我や保護者からのクレームが入った時だった。そのため二人は心配になり、職員室に来る前にホールの片隅で乳児クラスと幼児クラスの情報交換をしていたのだった。

二人は不安な面持ちで、順子の前にある椅子に並んで座った。順子はすぐに本題に入った。

「実は、『リーダー会議』をやってみようと思っているのだけど、どう思う?」

滝本と、飛田は呆気にとられた。予想をしていた話題と違っていただけでなく、「リーダー会議」という言葉を聞くのも初めてだったので仕方がない。順子は二人の表情を見て、唐突すぎたと気づき説明を加えた。

「実は、この前の園内研修を担当していただいた栗田さんから、『リーダー会議』をやってみてはどうかという提案があったの。『リーダー』会議に参加するのは、園長と主任の私、それから乳児リーダーのまくちゃんと、幼児リーダーの虎くんね」

さくら保育園では、職員同士あだ名で呼び合うという伝統があった。乳児リーダーの滝本真玖(たきもとまく)は「まくちゃん」、幼児リーダーの飛田虎太(ひだとらた)は「虎くん」である。

「リーダー会議の目的は、リーダー層が自分たちのリーダーシップをふりかえること。リーダーシップに関して職員への影響についてふりかえって、意見を出し合って自信を持ってリーダーシップが発揮できること」

「私は良いと思います」「僕も賛成です」

順子はまだ説明の途中であったが、いつもは自分から積極的に発言することのない二人から同意の言葉が発せられた。今度は順子の方が呆気にとられる番であった。順子は思わず、「いいの?」と言っていた。

「実は前々から自分がリーダーとしてちゃんとやれているかどうか気になっていたんです。だから良い機会だなと思って」

「僕も同じです。実はリーダーシップの本をいくつか読んでみたのですが、どれもビジネス向けの本だったので、保育現場のリーダーとして自分なりの答えが見つからなくて困っていたんです」

「でも忙しくて大変じゃない?」言いながら順子は、まるで自分が「リーダー会議」の開催に反対しているようだと思った。

「どのくらいの頻度で会議を開催するのですか?」飛田が問いかけた。

「えっと、時間とか頻度とかあまり考えていなかったんだけど・・・」順子が答えると、滝本は言った。

「一ヶ月に一回くらいの頻度で、30分くらいなら、私の場合は何とかやりくりして参加できそうです」

「僕もそれくらいなら大丈夫です。それで、会議の内容や進め方については、すでに何か決まっていることがありますか?」

順子が首をふると飛田は続けた。

「じゃあ、一つ提案なのですが、以前読んだリーダーシップの本に面白いやり方が紹介されていたんです。質問会議というやり方なのですが、今度本を持ってくるので、紹介させてもらえますか?」


二人との打ち合わせは10分ほどで終わり、日程調整をした結果、来週の水曜日の13時から第1回目のリーダー会議を開催することになった。

順子は二人のリーダーが自分と同じように迷いながらリーダーという役割を担っていたことを知り、なぜだか嬉しく感じていた。また、何よりも二人の前向きな姿勢に驚いていた。


「ストーリーで読むファシリテーション 保育リーダーの挑戦」一覧はこちら
https://note.com/hoikufa/m/mdab778217cb1

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