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「捨てないレシピ」という本のこと。

 この前の投稿のそうめんで食べなかったナスの皮は、出しがら昆布とにんじんと合わせて、きんぴらにしました。

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味付けはこちらのレシピで。バルサミコ酢を使います。

ナスの皮のむにっとした食、昆布のサクサク、にんじんのしっとり
仕上げに加えたすりごまの香ばし
そして、食材を使い切る満足。「五感」に響く、いいお惣菜ができました。

 こんぶやいりこといった出汁食材は、逆に考えると、「おいしい出汁が出る乾燥食材」かと。軽いし、長い保存期間も、ストック食材として理想的です。
上リンクの「昆布はどこへ行く」の時に感じたそのことは、この夏の自由研究でいりこでパスタやフリットを作ってみて確信となりました。

そんな時に出会った本がこちらです。出会うときに出会うものですね。

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 大阪の老舗「こんぶ土居」の土居純一さんは、20年余にわたり道南南茅部(みなみかやべ)の産地に通い、生産者を手伝い、こどもたちに大阪の昆布屋として昆布の価値を伝える食育をされ続けています。
そして、昆布ミュージアムを大阪に作られました。
(すごい。。。その原動力はどこからくるんだろう。。。。。。
答えを探しつつ、本を読み進めることにしました。)

その土居さんの新刊は、一冊で2度、3度とおいしい、まるで出汁をとったあとに料理して楽しむ昆布みたいな本でした。

 土居さんは前書きに、本当に伝えたいのはだしがらの利用価値だと書かれています。
 おいしい出汁の取り方、昆布食の歴史、栄養、だしがらを使った料理と、土居さんワールドは広がります。気になるヨードのことや1番出汁、2番出汁のことまで、知りたかったことや「当たり前」とされていたけどそれってどうかなぁ?と思っていたことが、シンプルに解き明かされていきます。

おいしい出汁を楽しむ。だしがらでおなかも気持ちも満たされる。
捨てずに使い切ったという気持ち、材料の栄養をまるごと自分に取り入れておいしく食べたという満たされた気持ち。なるほどこれはいい。
鰹節に煮干しに椎茸。単品に組み合わせ、だしがら三昧。あんこ最中にチャトゥニにマリネにトルカリ。発見三昧なレシピたち、おっもしろーい!

そこに土居さんは問いかけます。「だしは、どこへ行く」
だしとだし的なもの。食文化、日本人の味の価値観・・・。

ここでわたし個人のことを。
 こどもの頃は昆布は必ずある身近なものでしたが、大人になってから長い間、昆布を使わなかった時期がありました。昆布があたりまえから、出汁調味料があたりまえへ。色んな商品を試すのも楽しくて。
「だしがらって捨てるの嫌だし、そもそも佃煮そんなに食べないし・・だから、昆布いらない。日本料理以外に使えないし」と思っていましたとも。
 ところがです。
自分のいるところの素材を工夫して何世紀にもわたって料理してきたイタリアの地方料理を学ぶ中で、道産子の自分の足元にあった昆布という北海道の食材に気づいたのです!!!
 しかも、近所の昆布屋との出会いがありました。「真昆布の佐吉や」さん。天然真昆布のおいしさ、南茅部の風土、真昆布の歴史。買い物に行くといろいろ教えてくださって。
ナニコレちょっと、面白い!こんなにおいしくて面白い素材がすぐ近くにあったなんて!知らなかった、出会っちゃった。学ぶことは山ほどある!!

 出汁化学調味料の味は食べたときにガツンと感じるおいしさ。しっかりした塩味も強いおいしさに効果的です。
昆布が作る味は、料理の底上げをするおいしさ。しみじみと広がり、どこまでも広がっていくおいしさです。どこまでも、広がるのです。
だから、イタリア料理にも、中国料理にも、なんにでも使えるのです。
わたしは昆布に戻りました。カムバックトゥーコンブ!

 自分の経験からわたしは、昆布の良さを知ったひとたちは、昆布を選ぶようになると思うのです。
楽天的すぎるかもしれないけど。
ゆっくりかもしれないけど。
そう、ゆっくりすぎたら?そこが問題です。

「未来に向けて」の中で、土居さんは天然真昆布が採れなくなった海の異変を心配されています。
 歴史の中で、昆布が採れなくなった浜で漁師たちが取り組んできたことをふりかえり、そこから今に何を学ぶか。
わたしは、壮絶なコロナ渦の2020年のイタリアで、100年前のコレラ渦の時の本が読まれたことを思い出しました。先人たちから学び、未来に生かすことが重要なんだよ、と言っていたイタリアの人たちを。

 1世紀にわたる大阪の昆布屋の四代目店主として、壮大な昆布の歴史の中の未だかつてないヘビーな時代を生きている土居さんが今書かれたこの本は、レシピ本にして、昆布本にして、未来に続く生きた歴史本ではなかろうか。
同じ時代に北海道で生きる自分に、未来に続く海のためにできることがあるのだろうか。

 まずは、だしがら昆布を食べよう。
そうして、土居さんの昆布のだしがらで、きんぴらを作りました。

ご縁をいただき、この本を読む直前に函館で、土居純一さんにお会いする機会がありました(喜)。
わたしが何故昆布の勉強を始めたかという話をしたら、ニヤッといたずらっぽい笑顔とともに、この本の139ページを差し出された土居さん。
いやー、嬉しかったです(嬉)。






 









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