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住野よる 著 『君の膵臓を食べたい』

登場人物紹介

今日の部室



マノ
  めっちゃ泣けました。

副部長 どのへんが?

マノ  最後の共病文庫で、ヒロインがどんな風に感じていたか、を読んだところで。もう、ぶわーって。

副部長 確かに。あれはくるものがあるよね。

マノ  そもそも、死に向かっている、っていう前提があって、悲しい終わりの予感をずっと感じている主人公が、気を張っていたところがプツンと切れる感じが。

副部長 物語がずっと主人公目線で語られているので、読者としては主人公の思いを追体験できるのが、最後の衝撃につながっているところがあると思う。

マノ  そうなんです!

副部長 そうなんですか。

マノ  結局、ヒロインがどう思っているかは、最後以外描かれていないので、読者としてはモヤモヤしているところで、こうだったんだーって!

副部長 ものすごくやられてるじゃない。

マノ  やられましたよ!

副部長 キャラ付けが上手い、というのもあると思う。一貫して、主人公もヒロインも、クールで知的な感じを出しているところで、抑えた演技というか、低温でじっくり火を通して、結果めちゃくちゃ ジューシーみたいな。

マノ  なんのたとえですか。

副部長 あの台詞回しが嫌いじゃない人ははまれると思う。

マノ  確かに、嫌いな人もいると思います。

副部長 涼宮ハルヒとか、化物語とか、あのへんからの流れのやれやれ系男子は、本好きな中高生男子の大好物だよね。きっと。

マノ  偏見がすごい。

副部長 とはいえ、世界観は素敵なんじゃないかな。で、さらに二人の世界だけで進んでいくところが良いんだと思う。途中、ヒロインの元カレみたいなのが出てくるんだけど、なんかもう主人公を際立たせるだけというか、物語上こういう役が必要なので出てきました、という感じがすごいの。でも、だからこそ良いというか、読者としては余計なところに視点を移さなくて済むんじゃないかな。これは二人だけの世界というね。まあ、恋愛してる人たちなんて、みんなそんな感じなんじゃないかなあ。

マノ  実体験ですか?

副部長 (地獄突き)

マノ  グハッ!

副部長 でも恋愛の姿って、そうなんだと思うの。仕掛けとして主人公の名前がずっと語られないんだけど、たとえ彼が世間からどう見えようとも、私にとってはヒーローなのよ、っていうのが恋愛の姿なんじゃないかな。

マノ  なるほど。確かに。●●●と●●●が一緒にいる姿とかよく見ますよね

副部長 こらこら。

マノ  タイトルもキャッチーだし、普段、あまり本を読まない人にもおすすめですよね。

副部長 仕掛けが豊富という感じはするな。タイトルもそうだし、(主人公の)名前が出てこないとか、(ヒロインの気持ちが)共病文庫の形で出てくるのは、結構ズルいと思う。主人公、つまりは読者のことだけど、ああいう日記とか手紙の形で出されると、受け取るしかないというか、一方的に攻撃されてしまう感じ。客観的すぎる。だからもう泣くしかない、みたいな。

マノ  あー、なるほど。会話になっていると、そこまで全部言えないし、言ったら言ったで大げさになってしまうのはあるかもですね。

副部長 そう。だけど文字で伝えると、大げさなのも、全部が思いの大きさに変換されるから、無理矢理泣いちゃうみたいな、ね。まあ、そういうのも全部含めて、なかなか本を読まない学生とか、これをきっかけに本って面白いかも、って思ってもらえるような作品なんじゃないかな。

マノ  ですねー。まあ、私にどストライクですし。

副部長 確かに。


ポイント

1.読みやすさ

文章自体は難しくない。 あえての難しい言い回しが、主人公とヒロインの知的なキャラ付け。

2.主人公の感情に沿って進む

主人公の目線で物語が進むことで、主人公の感情を追体験できる。それによって共病文庫の設定が強力な効果を持っている。

3.登場人物の少なさ

登場人物が少ないため、より二人の物語として読むことができる。
「世界=私とあなた」の構造。

4.効果的な仕掛け

キャッチーなタイトル。
主人公の名前が出てこない。
ヒロインの気持ちの客観性。


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