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ここがすごいよリコリス・リコイル

ストーリーの考察ではなく1話から感じた事を考察します。

致命的なネタバレはないと思いますが気になる方は1話視聴してから
読む事をおすすめします。



色彩がすごい


とりあえず例を見ましょう

この場面。
ぱっと見でキャラ、背景合わせて使われている色が派手かつ数が多いように見えますが、
視線が背景だけではなく自然にキャラへと向きながらもキャラが浮かずに”そこに居る”ように感じられるかと思います。

理由としてキャラが手前にいる(画面を占める範囲が広い)という
こともあると思いますが、それと同時に色彩による印象操作の効果も大きいと思います。


上の場面で使われている色はざっくりこんな感じになるのですが、
並べてみるとぱっと見よりも派手な印象は薄いように感じるかと思います。

この”ぱっと見は印象に残るが背景、キャラ共に違和感なく馴染みやすい色”が本作(恐らく色彩設計の佐々木さん)の色彩の特徴であると思います。


このカラーサークルを基に色を整理してみると
千束は赤〜黄の間で明度、彩度共に中〜高度の色が多く、
たきなは青〜紫の間で明度、彩度共に低〜中度の色が多く使われています。
また背景は色相こそ幅広いものの、明度は高めで彩度は低く設定されています。

図で表すとこんな感じ

ここまでを踏まえて先ほどの場面を色彩の観点からみると

背景は喫茶リコリコの明るく平和な雰囲気を表すために明度を高めで
目立ち過ぎず尚且つキャラが浮き過ぎない程度に彩度を低めに設定。

千束は明るく元気な性格なので明度、彩度共に高めに、
たきなは比較的落ち着いた性格なので明度、彩度共に低めに設定されています。

更にこの場面で主要となる千束とたきなとで色調差を作ることによって
キャラそれぞれに視線が誘導されるようになっていると考えられます。

こんな感じでキャラと背景が馴染むような絶妙なバランスの色使い、
描写の印象作りは本当に上手いと思います。


色彩に関してもう一つ
光源の使い分けがあります

日中の屋外でのたきな
日中の公園でのたきな
夜の市街地でのたきな

3枚の画像のそれぞれ光源に照らされた髪の部分に注目してください。

屋外で日光に照らされたたきな(特にアップの時)の髪色は赤っぽく
緑が多い公園での照らされた髪色は黄色っぽく
夜の街灯に照らされた髪色は緑っぽいです。

つまりこの作品は光源の種類や背景による照り返しの色などが細かく設定されているのだと思います。

キャラ単体だけではなく光源や背景といった要素の全てを複合させた上で
色彩設計がなされていると考えられるのでこの辺りからもスタッフの連携の高さも伺えます。



プロップ(小物)、衣装デザインがすごい


喫茶リコリコのティーカップ
待ち合わせをした店のティーカップ

1話で特に注目してほしい小物はこのティーカップ。
待ち合わせをした店のティーカップはシンプルなデザインで
多くの人への提供などを考えられた実用的な面が重視されている。
よってこの店はチェーン店なのだろうと推測できます。

それに比べ喫茶リコリコのティーカップは、実用性というよりかはデザインを重視したようなティーカップになっていて、
より多くの人を相手にするというよりも一人一人にカップや店の雰囲気を含め1杯をゆったりと楽しんでもらう個人店であろうと推測することができます。

小物一つからもこれだけの場面や背景を説明できるほどの緻密な設定を感じられます。


衣装もDAの制服、喫茶リコリコの制服どちらも独特さがありながら
現実にあってもおかしくないデザインに仕上がっているように思います。

あと衣装がやたら絞ったりヒラヒラしたりしていて普通であれば
影であったり皺であったり動きが単純に増えるので
労力を考えれば極力やりたくなさそうなところをこのデザインでやるという決定を下したのはすごい。



戦闘シーンがすごい


おそらく1話で一番の見どころであるBパートでの戦闘シーン。
尋常じゃないほどのこだわりを感じました。

まず一つ目はたきなが車の前に立った場面。

真っ先に運転手の肩を打って瞬時に車を動かせない
ようにして、車の機能を潰すためにヘッドライト、タイヤを潰し
その間に相手の情報源となりえるミラーを撃ち落とします。

この後の展開もあって車で逃げられるという状況を徹底的に潰す事と
たきなが射撃に自信があるという設定をここで説明したのだと思います。

とはいえ上記の2つのためだけに作ったのであればかなり丁寧な描写だと思います。


もう一つは銃の構え方

千束は接近戦なので半身で体の真横で銃を構えているのに対して
たきなは少し遠めの車の中にいる敵に狙いを定めているので
腕を伸ばして体の前に突き出した構えをしています。
(詳しいことはcenter axis relock system等で検索してください)

また千束と相対している敵は無防備に体の前で銃を構えていて
素人であるという反面千束たりリコリスはしっかり訓練されている事が
推察できます。

こんな感じでこれから物語の主軸の一つになるであろう部分を
しっかりと監修を入れて作り込まれていると思います。



1話の構成がすごい


大量のコンテンツを好きな時に好きなだけ摂取できる昨今
において、1話でどれだけ視聴者を引き込めるかが重要になってきました。

というのも数分で楽しめる動画コンテンツが増えた反面
深夜アニメは基本的に1クール約6時間を3ヶ月かけて楽しむので
比較的時間のかかるコンテンツとなりました。

なのでこれまでよりも見続けてもらえる可能性が格段に減り、
今まで以上に1話分(正確には約24分)だけで作品の視聴を継続する価値を証明をする必要が出てきました。

見てもらえなければ作品の良し悪し以前の問題になりますから。


というわけでリコリス・リコイルは1話でその価値を証明できたわけですが
その理由の大きな部分に構成の上手さがあったからだと思います。

リコリス・リコイル1話の構成で特筆すべき点は
イントロダクション(物語の世界観や情報)を1話へ完全に落とし込んでいる点、世界観に引き込んでいるこの2点。


そもそもこの作品はオリジナルなので基本的に視聴者は何も情報がない状態から物語がスタートします。

(これは個人的な偏見ですがPVや公式サイトをしっかりと確認してから作品を見る人は少数だと思います。)

なので何時どこで誰が何をするのか
異世界なのか現実世界なのか、能力ものなのかリアル指向なのか
日常ものなのか波瀾万丈あるタイプなのか

物語を始める前に視聴者に世界観を知ってもらうためのイントロダクションを説明する必要があります。

ですがただ説明するだけだと面白くないので視聴者が離れてしまうので、
1話として物語を進めながらイントロダクションを説明する事が求められてくるわけです。

リコリス・リコイルではこのイントロダクションの説明が上手いです。

例えば、リコリスとはどういう人たちなのかという部分をミズキがDAを辞めた理由にさりげなく混ぜてリコリスの生い立ちを説明していたり、
路地や屋内などを視聴者が見覚えがあるような舞台にすることでこの作品の世界が現実世界に限りなく近いものにしたり、
上でも書いたように現実に則した戦闘方法を描写することでよりリアル世界に近い(異世界や能力ものでない)といった事を
説明するのではなく1話の流れの中で読み取れるよう構成されているように感じます。

そして1話で物語の世界観を説明しつつ様々な伏線、千束の過去、
喫茶リコリコの日常感とリコリスとしての非日常がどうなるのか。

といったオリジナルアニメとしてイントロダクションを含めた1話とは思えない程に散りばめられた今後のストーリーへの情報は「2話が気になる」ではなく「この作品がどうなっていくのか気になる」という気持ちにさせてくれます。

これを24分でやってのけているのは凄いの一言に尽きます。



終わりに

みんなみてね。

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