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リコリス・リコイル3話感想

これは1話、2話にも言える事だけど”13話で一つの物語としての一部”ではなく、”一話単体として”の話の構成が上手すぎるし、完成度が高すぎる。

その中でも3話は頭一つ抜けて上手かった。

3話の一番上手い点は視聴者の感情誘導だったと思う。

たきなが不当に転属させられていることは2話まででなんとなく察することができて、たきなが本部に戻りたいと強く思っていて、そのために頑張っていることも視聴者はわかっている。

この状態でたきなが必要以上に悪口を言われ、元相方だけでなく上司にも必要ないと言われている場面を見ればこの”理不尽な環境や状況”ではなく”DA側の人間”に視聴者は苛立ちを覚えると思う。

殴りたいこの笑顔

つまりここで状況的に仕方がなかったとして”理不尽なシチュエーション”で終わらせるのではなく、
自分達の落ち度もあるのにたきなを理不尽に追い出そうとするここで言えばフキやサクラという”悪役”を作っていた。

そしてこの悪役に吹っ切れてやり返す。
この理不尽への反逆に視聴者は快感を覚える。
これが一つの誘導。


もう一つはたきなの変化。

これまでずっとDAに従順で喫茶リコリコでもずっと一人で居ようとした
たきなが唯一自分を必要としてくれている千束に懐き、喫茶リコリコに帰属意識が芽生えたエモさ。

このあたりを同時に成立させているのは本当に凄い。


ここで一つ引っ掛かるのが「じゃあ2話までがなかったらたきなのバックボーンが作れてないじゃん」という話。
これも実はハックされたDAに責任があるという事や、写真を提出して自分のミスを取り戻そうとしているたきなの姿があるので3話だけでも一応状況は説明できちゃってるという優れもの。

やはり何回見てもフキとかサクラとか楠木に苛立ってぶん殴りたいと思うし
実際にたきながフキをぶん殴った瞬間を見た時は脳から出ちゃいけない汁が出てる感じがする。

親の顔より見た右ストレート(助走付き)


ここまで一話単体の出来の良さを語ってきたが
1〜3話までの”第1章”みたいな切り方で見てもここ数年
下手すれば過去10年で見てもトップクラスの完成度だと思う。

ここまでの重要なポイントとして、伏線、千束の秘密、たきなと千束の関係性の3つ。

伏線は物語の常套手段なので割愛。

千束の秘密は明らかに2話で勘付かせるように作られていた。
1話の戦闘で気付く人には気付くくらいの千束の違和感を見せて「強いな〜」程度に思わせて2話で弾を避ける事を強調して明らかに「千束には何かある」と思わせていた。

また3話までに千束の秘密を明かしたのも得策だと思っていて、
この段階で公開する事で、変に引っ張って物語の世界観と視聴者の考察やら期待との乖離が生まれる心配がなくなる。
これで物語が進むにつれて視聴者の”ナンカコレジャナイ感”を無くせる。
普通の人間のガンアクションだと思っていたらいきなり超能力ものに変わりましたってなったら”ナンカコレジャナイ感”を感じると思う。これがなくなるのはマジでデカイ。

ちなみに”ナンカコレジャナイ感”で死んでいった作品は数多くあるので
オリジナルなら尚更だが早い段階で説明できるものはやっちゃう方がいいと思ってます。

そして一番重要なたきなと千束の関係性。

ツンデレなんて言葉もあるようにツンがデレになる瞬間だったり、
千束視点からすれば親身に接していた相手が心を開いてくれた瞬間ほど嬉しいものはない。
一言で言えばエモが爆発してて良いの一言に尽きる。

前の記事で話したように世界観だったり用語も会話の中に自然と混ざっているので説明っぽさを感じることもなく説明してくれるので
本当に第1章としては完璧だったと思う。



絵コンテ、演出周りも勿論良かった。

多分一番わかりやすいのはこの部分。

一見「尊い」の一言で終わりそうな尊いシーン。
個人的には3話の中で一番と言っていいほど大事なシーンだと思っています。

このシーンに至るまでの流れを整理すると

たきなが事実上の追放宣言を受ける
⇨傷心したたきなを千束が慰める
⇨たきなが千束に八つ当たりをする
⇨千束はたきなにDA側のミスを説明する
⇨千束は事実を突きつけようとするたきなを引き留めて喫茶リコリコで共に過ごそうと説得する。

つまりこのシーンで千束はたきなに対して一時的であれどDAを諦めろ(裏切れ)と言っていることになるわけです。
その対価として千束はたきなの居場所(喫茶リコリコ)を用意するよ
という話。

とはいえたきな達リコリスにとってDA(本部)は孤児だった自分達を救ってくれた(居場所をくれた存在)であり、
フキも言ってたように親ないしは恩人のような存在で
それを裏切れというのは簡単に決断できることではないでしょう。

新しい居場所とDA、どちらかを取れと言われた時に新しい居場所に行く決断をするにはたきなにとってそれ相応の魅力がないと不自然になる。
これは視聴者も一緒でそれを解決するのが上のGIFになるってわけ。


仮にこの画像の構図のままでGIFの時と同じセリフが起きていると考えてください。

おそらく双方の表情が細かく描き込めないのでこの構図だと喜怒哀楽の表面的な部分しか写し出せないと思います。

ここがポイント

このシーンでの千束は喫茶リコリコの代表なり象徴として考えられる。
つまりこのシーンの千束がたきなにとってDAを捨ててまで選ぶほどの
居場所であるかどうかの判断材料となるわけです。

とは言えここまでの会話で千束が本当に好意を持ってたきなを説得しているのか。
本当に必要としている存在なのかというのは深く言及されていない事と
千束の本の性格もあって曖昧な状態にあったと思います。

そこにたきなの視点から千束がどデカイ笑顔で「君に会えて嬉しい」
と言うことで実際にどれほど嬉しいのか。
どれほど”リコリスのたきな”ではなく”たきなという1人の存在”が大事であるかを表現できる。

それに加えてたきなの戸惑った表情を見せることで
いつもクールなたきなとのギャップで本当に気持ちが揺らいでることと、
抱えられても拒否しないお互いの距離の縮まりも表現できています。

なのでこのシーンはたきながDAではなく千束(喫茶リコリコ)を
選ぶ決断をするための説得力を作るとても重要なシーンになります。

これを一言で表した単語が”尊い”になるわけですね。
日本語って便利。


これだけで終わらないのがリコリス・リコイルのすごいところ

ここまで話した中ではDA側の人間は完全に悪役のままです。

正直サクラに関してはここまでは完全に悪役以外の何者にもならないと思います。
けれども楠木、フキに関しては彼女らなりの正義を物語の流れから掬うことができると思っています。

楠木はDAの司令官としてトップにいるわけでリコリス以外にも多くの
人間を守らないといけない立場にある。
作戦中にシステムをハックされても起きたことは仕方がない。
たきなが待機という命令違反をしたことも事実であり、
上が納得する最小限の被害としてたきなを転属という形にせざるを得なかったと捉えることもできる。
この楠木に関しては裏側の想像でしかない。


ただフキは3話においてもう少し具体性を持って彼女なりの正義を説明できる。

3話でのフキの発言に注目してみると「あいつ(たきな)は任務以外で戦えるような奴じゃない」「(たきなは)どうせ(DAの本部に)戻りたがってるんだろ」「待ってんだろ(千束は)そういうやつだ」
と相方になった人間の事をやたらよく知っている発言が結構ある。

つまりフキは仲間の事よく見ている誰よりも仲間思いのリコリスであると言える。

そんなフキの前で命令違反。仲間の命を軽んじたかのような行動をすれば
憤るのも理解できると思う。
そして平然と「生きてますよね」なんてひろゆきばりの顔で言われれば
そりゃ一発殴りたくもなるし、戻ってきてほしくないと思うのも理解できる。

もう一つはフキと千束との関係。

体力測定や模擬戦からもわかるようにやる事全てにおいて
いつも千束の下にいるフキにとって千束とタッグを組んでいる事は
永遠と劣等感を感じることも周りからの評価も全てが重荷であったことは
容易に推測できます。

それでもフキは相当に少ない(3話まではフキと千束しかいない)ファーストリコリスとして仕事を果たしている事を考えればフキは凄く真面目なので、DAの命令も仲間も大事にする人である。という裏付けになる。

これを踏まえて模擬戦で負けた瞬間を見ると、ペイント弾の色を
敢えて水色にしていることも、フキの「クソ」という一言もフキという
存在そのものを3話の中だけで説明できてるなと思う。

全て深読みにすぎないけどもしこれが全て意図的に作られていたら
孤独を知らないこの街にはもう2度と帰ってくる事はできないな。



ここからは考察と予想の話。
前回書いた記事を読んでる前提で書くので暇な人は見てください


まず前回の記事から確定した事として
千束の洞察力が異常だった事。
ここは変に超能力設定みたいなものも付けてこないあたり
とかはほぼ予想通り。
たぶんこのまま千束が特殊ってだけの設定で進むのかなと思う。
フキもファーストリコリスなのに千束のような特殊性はなかったように思うのでたぶん千束だけ特別って形が一番自然な感じがする。


物語の流れ。特にたきなと千束の関係あたりもだいたい想像通り。

ただ今回で増えた材料としては千束がDA本部か楠木かどちらかに
いい感情を持っていないと言う事。

ミカが千束とほぼ同時にDAからいなくなったor千束がミカを連れ出した可能性が高くなった。

となると、DA側が千束を追い出した可能性もあるが、千束が自らDAの本部から離れた可能性が高くなったように思う。

また楠木が「リコリスとしての義務は果たさないくせに特権だけは欲しいんだな」と言っているので”義務”や”特権”の詳細はわかっていないが、
やはり千束は人を殺さない(殺せない)事が原因でDAとの確執があるという筋が一番可能性が高い。

とはいえたきなの「あなたはDAに必要とされているからいいですよね」という発言や、模擬戦の後の楠木の反応をみるとDAとしても千束を無下に扱うつもりもないように思う。


なんにせよとりあえず3話はエモくてよかったです。


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