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リカちゃん人形 全裸発見事件(1988年)


皆さんこんばんは。ネコRです。

先日投稿した姉とチャゲ&飛鳥の話を読んでくださった方、心から御礼申し上げます。

たらふさん、サポートいただきありがとうございました。たらふさんからサポートいただいたお金で、銭湯のロッカーに鍵をかけることができました。ありがとうございます。

これからも、社内や車内で吹き出してしまう、変な目で見られる話を、文法の基本を無視した国語力により産みだしてゆきます。

以下、リンクを貼っておきますので是非、TPOをわきまえずご覧ください。

さて、それでは本題に入りましょう。

私は、2歳年上の「姉」の影響をとても強く受けて育ちました。

何をするときも、競争相手はいつも姉。ビックリマンシール集めも、絵画コンテストも、勉強も。姉は何をするにも私の前に立ちはだかり、におうだちしている。姉は私のライバルであり、目標であり、金剛力士像であった。

ゴーリキーである姉に対し、私は、スポーツこそ得意だったものの、性格が弱虫の泣き虫で、「キャンディキャンディ」などの名作少女漫画を密かに愛する、愛ゆえに愛に漬かる少年でありました。少女漫画を読んでしとしとと泣いていると、姉は、

「あー!りょうがキャンディキャンディで泣いてる!ワハハ!馬鹿だねー!あんた!それ、作り話だよ!」などと、夢もかけらもないことを言ってくる。姉は実際そういう人であった。

ついでに、クリスマスの謎についても、「サンタさんなんて、いないよ。ほら見な。押し入れにプレゼントあるじゃん。これ、おじいちゃんが買ったんだよ。サンタさんに手紙書いたじゃん。あれ読んでるのおじいちゃんだよ。あんたそんなことも知らないの?」と、ご丁寧に教えてくれた。姉はとにかく現実的で先が読める人なのだ。そして、バカのアホのロマンチストの私とは違って、大人びているのだ。

そんな、現実的な姉と繰り広げる、唯一の「虚構」の遊びが「おままごと」であった。

当時、姉はクリスマスという名のおじいちゃんを利用して手に入れた「リカちゃんハウス」という名の二階建てのハウスを、押し入れの下の段に所有しており、そこでシルバニアファミリーという、ウサギやクマの人形とリカちゃんの家族を、シェアハウスで住まわせていた。なんと時代を先取りしていることか。

リカちゃんハウスを舞台に繰り広げられる、文学少女でもある姉の、「一人全役」の演技も、横で見ていられるくらいに見事であった。

感心して見ている私に、気を良くすると姉は、時たま、チョイ役として、私にリカちゃんのボーイフレンド「イサム君」の役を授けてくださった。

「リカちゃんを、キザにデートに誘う」という、それだけの役割である。

「やぁ。リカちゃん。今日もかわいいね。じゃあデートに行こうか」

これが、私に与えられたただ一つの台詞である。それ以外の台詞は禁じられている。これは禁じられた遊びなのだ。

私(イサム)がそう言うと、姉(リカちゃん)は

「わかったわ。待っててね。おめかしするわね!」などと言い、リカちゃんをパンツ一丁にして放置し、自分はゴソゴソと、押し入れにあるリカちゃんの服や靴を品定めし始めるのである。

放置され、両手を天に差し出し、虚空の一点を見つめているパンツ一丁のリカちゃんの前で、私(イサム)は一体どういう気持ちで居るのが正解なのだ?

神よ教えてくれ。押し入れからはみ出ている姉のケツを見ているのが正しいのか?それとも、イサム君になりきって、ガールフレンドを待っている青年を演じていればいいのか?

虚空にそびえたつ、リカちゃんの胸部の二つのふくらみ、いや、二つの肌色の突起を見つめながら、私は自問自答を繰り返していた。


ある夜のことである。私(イサム)はリカちゃんの胸部にそびえ立つ肌色の生めかしい突起、というかおっぱいが気になって、眠れなくなった。

そして、暗闇の中、姉に絶対に気づかれないゆっくりの速度で、無限ともいえる格闘の末、ついに、押し入れのリカちゃんハウスから、リカちゃんを誘拐した。

そのあとのことは、ハッキリとは覚えていない。

ただ、一つ言えるのは、リカちゃんの突起はとても硬かったということだ。父がいつも踏んでいる健康足つぼマッサージのあの突起と何ら変わりのない感触で、なんならリカちゃんでツボが押せた。

パンツの中は見ていないが、どうせ、肌色の機械的なプラスチックであろうと容易に想像がついた。

私(イサム)は、幻滅したまま、深い眠りについた。

なんの夢を見たかは覚えていないが、たぶん、空を飛ぶ夢か、穴に落ちる夢を見ていた。


翌朝、起きてみると、姉が、ドタバタと、何かがないだのと言って騒いでいた。

私は、寝起きのまますぐ、おばあちゃんに甘えていた。言うのを忘れていたが、私はおばあちゃんが大好きなのである。


すると、姉が何やら騒ぎ立て、私の前にのっしのっしズンズンと歩いてきて、仁王立ちし、こう言い放ったのだ。

「リカちゃんが、裸でりょうの布団から出てきた。」


私は死んだ。

なぜなら心臓が止まったからである。

リカちゃんを、リカちゃんハウスに戻し忘れたのである。これは痛すぎる。

今振り返っても、「今の人生は…いろいろあって、二度目の人生なんだよね」と、自信を持って言えるほどに、あの時、私は確かに死んだのである。最愛のおばあちゃんの前で。

私(イサム)は絶望の中、思った。

「(チクショー、せめて、服を着せておけば…。)」

しかし全ては後の祭りである。

姉は、におうだちを崩さず、私を「えた・ひにん」でも見るかのような軽蔑の目で睨みつけた。

姉がそれと同じ目をしていたのは、その20年後、最愛のおばあちゃんの葬式の時に羽目を外していた親戚のオジサンを睨みつけていた時だけである。私の起こした事件は、それと同じくらいに軽蔑される行為だったのである。

その事件があって以来、姉とのままごとは一生、再開されることはなかった。

リカちゃんが私を性へといざない、一方で私と姉との関係を破壊していった。

広瀬香美がロマンスの神様で、姉と父の関係を引き裂いていったのと、同じように。

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