「村上開新堂」

「村上開新堂」のクッキーを
福助足袋の社長にお会いしたとき
お土産としていただいた。
家に持ち帰ると妻は大喜び。
「簡単に買えないクッキーよ!」
世間知らずな僕は「ふーん」と
こたえたような気がする。

包装紙を開くとさらに包装紙、
赤白の松葉結いの紐で縛られ、
花の絵のカードが入っている。
紐を解くと桜色の缶が現れ、
中にぎっしりと詰められたクッキー。
思わず「これは凄い!」と感嘆!
様々な形のクッキーが入っている。

小さな抹茶のメレンゲを口に含み、
「うまーい!」と言いながら、
大きめのコーヒークッキーに
目を惹かれて食べてみる。
このクッキーにはMKの文字が
刻印されている自慢の一品。
「おお!コーヒー風味だ」と笑顔。

「村上開新堂」は明治3年に
創業者の村上光保が政府からの
要請を受けてお菓子作りを始めた。
クッキーは二代目の二郎が
多彩且つ繊細にスパイスを使って考案。
人気のアニスは五代目の山本道子が
生み出したというクッキーである。

妻が言うように登録しないと買えず、
新規登録者は受け付けていない。
となれば登録者しか買えないという
貴重なクッキーなのである。
ジンジャーやチョコレート、ココア、
ヴァニラなど27種類のクッキーは
鹿鳴館でも持て囃された由緒あるもの。

ひとつひとつ大事に大事に
妻と一緒にいただいたのであるが、
あまりの美味さにすぐになくなった。
抜け駆けは決して許されない
皇室御用達のクッキーである。
最後のひとつを分けあったときは、
しんみり悲しみさえおとずれた。

クッキーを惜しむ気持ちから、
黄と茶色のストライプの包み紙を
大事に残しておきつつ、
ブックカバーとして使っている。
ああ、「村上開新堂」のクッキーよ、
再びお目にかかって食べたいもの。
天下一品の日本のクッキーである。