クープランの「神秘の障壁」

フランソワ・クープランの
「Les barricades misterieuses」
「神秘の障壁」の優雅な
ハープシコードの音色に包まれ、
午後のひとときを過ごしている。

「クラブサン曲集第2巻」の
「第6オルドル」がその曲。
フランス語のクラブサンは
イタリア語のチェンバロ、
ハープシコードことである。

流れる曲はテンポ良く快活で、
明快で素朴な美しく短い曲。
音楽でロココ調の絵画を描いた、
そういわれるクラブサン曲集だが、
「神秘の障壁」とはいかなるものか。

硝子でできた神秘の壁の向こうに
妖艶な美女が佇んでいるとしたら。
会話ができそうでいてできない、
手が届きそうでいて届かない。
そんな神秘の壁の神秘の美女。

妖艶な美女に、硝子を通した
陽の光が当たったり陰ったり。
僅かに横顔が見えるだけで
はっきりと見ることもできない。
曲は流れていきやがて終わる。

ふと気がつくと美女もまた
音楽とともに消えてしまうのだ。
神秘の障壁の向こう側に見えた
あの妖艶な美女は幻だったのか。
それとも儚い夢だったのか。