義姉を支えた義兄

桜が綺麗に咲き始めたこの春、
脳腫瘍を患っていた義姉が死んだ。
ひどい痛みを発症して緊急手術、
悪性の腫瘍は難しい箇所だったため、
完全には切除しきれなかった。

抗癌剤と放射線治療をしたが、
腫瘍が小さくなることはなかった。
義兄は完治の見込みはないと判断、
これ以上の抗癌剤使用を望まず、
自宅での緩和療法に変更した。

義兄は歯医者をしていて、
医学の知識も豊富だった。
抗癌剤で体が弱まるよりも、
なるだけ元気を維持して
過ごすことを義姉も望んだのだ。

自宅での緩和療法で義姉は
2年半を愉しく生き続けた。
2年間は娘と孫たちと一緒に
温泉や遊園地に何度も出かけた。
以降も自宅でゆったりと過ごした。

愛する子供や孫たちに囲まれ、
自宅で亡くなることができた。
義兄は痩せて窶れてはいたが、
看病をやりきった満足感が
涙する顔に溢れていた。