セローの『ワールズ・エンド』

ポール・セローの短編集、
『ワールズ・エンド』を
村上春樹訳で読んだ。
ワールズエンドとは
世界の果てのことである。

本書の短編の最初が
『ワールズ・エンド』という
タイトルのもので
ロンドンに実在する街の
名前だそうだ。

しかし登場する主人公は
己の人生の世界の果てを
見たような思いに駆られる。
ワールズエンドという街で
ワールドエンドを思い知る。

その他の8編の短編も
それぞれの主人公は
ワールズエンドに生きる
哀しく切なく行き場のない
袋小路の者たちである。

ぐるぐると同じ場所を
際限なく回り続ける人生。
未来のない絶望的な、
救いようのない世界が
淡々と述べられているのだ。

それだけにどの話も
結末というものがない。
結末を書きたくても書けない
宙ぶらりんの人生なのだ。
では、自分の人生はどうなのか。
前に向かって歩いていたつもりが
いつの間にか出口のない道を
歩き続ていたのではないのか。
そう思うと、とても悲しくなってしまうのだ。