深紅のもみじ

この秋のもみじの紅葉は
ことのほか真っ赤である。
葉の老化現象から守ろうと
アントシアニンが生じ、
それで赤く色づくのだ。

カエデ科のもみじのなかでも
イロハモミジの紅葉が見事だ。
那須の乙女の滝の向かいにある
山水庵のイロハモミジに目を見張る。
渓流のある庭を赤く染めてしまう。

はらはらと紅葉の葉が落ち、
渓流の水面をゆっくりと流れる。
息を呑むような妖艶な美しさに
眺めているだけで陶酔してしまう。
万葉の時代に思いが馳せる。

在原業平は詠う。
〈ちはやぶる神代も聞かず竜田川
からくれなゐにみずくくるとは〉
「神の時代にも聞いたことがない、
竜田川の水を紅葉が紅色に
くくり染めにするとは」