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読書感想『ウクライナから愛をこめて』

命は理不尽に奪われてはならない。
遠い外国のことと思っていても、明日には自国で起きることかもしれない。
よく知らないからこそ、知らねばならないと思い、図書館のデータベースで「ウクライナ」と検索して表示されたのがこの本だった。

著者のオリガ先生はウクライナの最高峰であるキエフ国立大学をご卒業後、同じ「赤門」をシンボルとする日本の最高峰である東京大学で博士号を取得され、現在はキエフ・モヒラ・ビジネススクール(東ヨーロッパ最古の大学校であるキエフ・モヒーラ・アカデミー国立大学のビジネススクール)で助教授を務めておられる。

出版元の群像社は1980年に3人の株主によって創立され、ロシアの多くの優れた現代文学を日本に紹介されてきた出版社である。
現在は代表者の島田さんがお一人で全ての業務を行われつつ、オリガさんはじめ、東ヨーロッパの素晴らしい文学作品を世に出し続けてくださっており、その中には『戦争は女の顔をしていない』で知られるノーベル文学賞受賞者スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの作品群も含まれる。

多くの戦争や飢餓、更には原発事故にも見舞われ、多くの国民の命と暮らしを傷つけられた国であるウクライナは、土地・文化・言語というアイデンティティまで奪われながら復活した国である。大事な人を理不尽な理由で失いながら、彼らはあきらめず、ゆっくりと確実に命を繋ぎながら国を再建してきた。

オリガ先生は日本人の私が恥じ入ってしまうほど端正な日本語で、ご自身や身の回りにいるウクライナの人々と彼らの人生について淡々と綴られていく。簡潔でありながら豊かな表現は見たこともないキエフの街を我々の心に描き出す。
読んだ人はみな、先生ご自身であとがきに書かれているこの文章が、この本の全てを語っていると思われるだろう。

「この本は歴史の教科書から抜け落ちた話、口伝えのささやかな歴史がたくさん入った物語。良き友達に語る物語のように。読んでもらえれば、ウクライナの人の個人の顔がよりはっきり浮かぶでしょう」

オリガ先生は現在避難しておられるようだが、そのような苦難にありながらも、3月11日には東日本大震災の被害者の方々、東北地方の方々に向けてTwitterで応援メッセージを発しておられた。その心のあたたかさと強さに私は衝撃を受け、どうにかして、彼女とウクライナの人々にエールを送りたい、もっとこの本を多くの人に読んで欲しい、私のできることは何か、と考えた。
私の気持ちを汲んでくださった雑貨とアパレルのお店「ユニテ」オーナーさんが、私に店頭でイベント開催を行う許可を与えてくださり、ユニテさんお手製のキーホルダーと合わせて、収益はウクライナ赤十字に寄付することになった。

更に、群像社さんのご厚意により、オリガ先生のご本を販売させていただけることになった。オリガ先生や群像社さんの収入を削らず、利益をウクライナ赤十字に寄付できることにもなり、なにより、より多くの方にこの本を手にして読んでいただけるきっかけができた。

日本から愛をこめて。
臆病で本好きなおばちゃんは、どきどきしながら企画の準備を始めているところである。

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