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「平等院鳳凰堂と浄土院 その美と信仰」展の見どころをご紹介!(静岡市美術館)

仏像イラストレーターの田中ひろみさんが、静岡市美術館で行われている展覧会「平等院鳳凰堂と浄土院 その美と信仰」[会期2022年2月5日(土)〜3月27日(日)]の見どころを現地からご紹介します!

文=田中ひろみ

静岡市美術館は、JR静岡駅北口の地下道を通れば徒歩3分という好立地にあります。会場に向かう専用エレベーターの扉には、展覧会のビジュアルイメージが装飾されており、期待で胸が高鳴ります。

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館内には、まるで雲に乗っているように撮影できるフォトスポットがあります。私も、もちろん撮影しました。

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(※展示室内は撮影禁止です)

京都の宇治にある平等院は、平安時代中期の公卿・藤原道長が所有した別荘を、長男の藤原頼通が改めてお寺として建立したもの。今年で開創970年を迎えます。近年は創建当初の姿の復元を目指し、鳳凰堂の修理や調査研究が進められています。今回の展覧会では、末法の世*に救いを求めて創建された平等院の寺宝のほか、調査で新たに発見された作品や、復元されたものなどもあわせて展示され、極楽浄土のきらびやかな世界を垣間見ることができます。

*釈迦入滅から2000年がたち、仏教が衰え、道徳が乱れた末の世のこと。平等院が創建された1052年は末法元年にあたるとされている。

1万円札でもお馴染みの
「鳳凰像」がこんなに間近で…!

10円硬貨のデザインでも知られている平等院鳳凰堂は、極楽浄土を再現すべく造られた伽藍の一つです。その屋根に飾られている鳳凰は、現在の一万円札の裏側にも描かれています。今回は模造品の展示ですが、とてもリアルに再現されており、これほど間近で見られるのは非常にありがたいことです。

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鳳凰像 模造 昭和31年(1956)、平等院

鳳凰堂の中に安置されている阿弥陀如来坐像は、仏師・定朝作として唯一認定されているものですが、そのまわりを飛ぶように配置されているのがこちらの「雲中供養菩薩像」です。雲に乗り、楽しげに楽器を奏でたり踊ったりしています。今回は、国宝に指定されている52体の雲中供養菩薩像のうち4体が展示されます(※前期と後期で2体を展示替え。模刻の2体は通期展示)

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雲中供養菩薩像
上左:模刻「南20号」中村美緒 作、令和2年(2020)、浄土院
上右:原品「南14号」平安時代 天喜元年(1053)、平等院、国宝
下左:原品「北1号」平安時代 天喜元年(1053)、平等院、国宝
下右:模刻「南21号」村上清 作、平成10年(1998)、平等院

会場の終盤に展示されている、新納忠之介*の描いた「平等院明治修理帖」と比較しながら見ると、どの部分が修復されたのかよくわかります。

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平等院明治修理帖 新納忠之介 筆 明治39年(1906)、平等院
*岡倉天心が創設した「日本美術院」で、仏像修理などを行った彫刻家

昔とお姿が変わった!?
浄土院の「聖観音菩薩像」

平等院には、2つの塔頭たっちゅう*があります。浄土院(浄土宗)と最勝院(天台宗)です。

*塔頭:本寺の境内にある小寺

浄土院の「聖観音立像」は、ほかの聖観音立像と比べて異なる点がいくつかあります。

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聖観音立像 平安時代(11世紀)、浄土院

かなり前傾姿勢で、片足を前に出す「遊足」というポーズをとっています。また、肩から胸に斜めにかける「条帛じょうはく」の端が風に吹かれたように横に流れ、腰に巻いた布の後ろ側が風に煽られたようにめくれ上がっています。こうした点などから、元のお姿は両手に蓮の花を掲げ持ち、極楽浄土から雲に乗って死者を迎えに来る「来迎菩薩像」であったと考えられているそうです。

“截金文様”におもわずうっとり……!
浄土院の「阿弥陀如来坐像」

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阿弥陀如来坐像 江戸時代(17世紀)、浄土院

浄土院の養林庵書院仏間の本尊「阿弥陀如来坐像」には、様々な種類の截金文様きりかねもんよう*が施されており、あまりの美しさにうっとりしてしまいます。

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*金箔や銀箔を細い線や点に切って貼り合わせることで文様にする日本独特の装飾法

当卋来迎図とうせいらいこうず」で宝探しを楽しむ!

最後には、細密描写を得意とする画家・山口あきらさんが浄土院の養林庵書院に奉納された14枚の襖絵「当卋来迎図」が展示されています。

平等院の鳳凰堂近くにある藤棚を、南無阿弥陀仏の文字で表現したり、楼閣風の蒸気機関車が煙を上げながら宙を走っていたり、京都タワーの前に、和風な京都駅を描いたりされています。

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当卋来迎図 山口晃 筆 平成24年(2012)、浄土院

過去と現在、あの世とこの世が、巧みに調和して描かれています。清水寺や東寺や平等院なども描かれているので、まるで宝探しをするような気分で眺めることができました。

ミュージアムショップには、グッズも充実。私は「鳳凰」と「雲中供養菩薩」のピンバッチを購入。トランプは52体の「雲中供養菩薩像」がカラーで印刷され、ジョーカーが鳳凰というのもグッときて、オススメです。

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ぜひこの機会に、静岡市美術館で極楽浄土を体感してみてください!

「平等院鳳凰堂と浄土院 その美と信仰」
【会期】2022年2月5日(土)〜3月27日(日)
※会期中、一部展示替えがあります。前期2月27日(日)まで、後期3月1日(火)から
※国宝《雲中供養菩薩像》は前期2軀、後期2軀(全4軀)を展示します。
【開館時間】10:00〜19:00(展示室への入場は閉館の30分前まで)
【休館日】毎週月曜日(ただし3月21日(月・祝)は開館)、3月22日(火)
【観覧料】
当日:一般 1400円(当日に限り20名以上の団体/1200円)、大高生・70歳以上 1000円(当日に限り20名以上の団体/800円)中学生以下 無料
*リピーター割引:2回目以降、美術館窓口にて本展の有料観覧券半券提示で当日券200円引き
*障がい者手帳等をご持参の方および介助者原則1名は無料
*当館窓口での観覧料のお支払いは現金のみとなります。(クレジットカード・電子マネー等はご利用いただけません)

ご来館の際は、最新の開館状況および注意事項を静岡市美術館HP、またはお電話にてご確認ください。
https://shizubi.jp/exhibition/20220205_byodoin/220205_01.php

▼田中ひろみさんのご著書

仏像イラストレーターが作った 仏像ハンドブック
仏像拝観が好きでたまらない人、拝観してみたいビギナーに向けて、仏像イラストの先駆者である田中ひろみさんが、“仏像旅"のコツや、仏像を前にしたときの必要な知識(仏像の種類や手にする道具、装飾など)のキホンを、漫画とイラストで紹介。仏教の世界観や仏像そのもの、お寺の配置など、ちょっとした知識が増えるだけで、仏像拝観は10倍、20倍の深さと面白さに変化します。

東京・鎌倉仏像めぐり
日本各地を歩いた仏像イラストレーター・田中ひろみさんが絶賛する東京・神奈川の仏像とは? 田中さんが常日頃、ふらっと見に行く素敵な仏像を、すべて書き下 ろしていただきました。その数50以上。イラストにすることで細部までよ くわかること、また仏像のお顔や体型、衣の着方、指の形など、見て楽しいポイントも丁寧に解説しています。 お守りなども載せてあるので、お土産の参考にも。また、仏像の基礎知識もわかりやすく丁寧にまとめました。仏像初心者の方も、本書をおともに、ぜひ気楽に仏像めぐりへ。

東海仏像めぐり
仏像というと、京都や奈良、鎌倉といったイメージがありますが、
じつは東海エリアも仏像大国。仏像初心者の方も、仏像がお好きな方にも楽しんでいただけるよう、イラストとエッセイでわかりやすく解説。これからの時期、本書を片手にぜひ東海地方へ。

田中ひろみ
イラストレーター&文筆家。大阪府堺市出身。幼い頃から絵の仕事がしたいと願うが、両親の希望に添いナースになる。お金をためてから退職し、「セツモードセミナー」で絵を学ぶ。仏像本をたくさん出し、講演や仏像ツアーも行なう。女子の仏教レジャーサークル「丸の内はんにゃ会」代表や、奈良市観光大使も務める。

仏像について、初心者向けにわかりやすく解説した記事はこちら


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