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テレビには4本の脚がよく似合う時代があった|懐かしの昭和家電百科(1)

いま、全国の博物館で昭和の生活を回顧する企画展が開催されるなど、“昭和レトロ”のブームが再燃しています。とくに当時の家電は「シンプルで可愛らしい」と若者にも大人気。そこで今回は、まもなく刊行される町田忍の懐かしの昭和家電百科よりテレビに関するお話を一部抜粋してお届けします。ぜひ、ご覧ください!

町田忍の懐かしの昭和家電百科』(ウェッジ刊)
2022年5月20日発売

スマートにのびる4本の脚で、さっそうと立つテレビ。テレビはいつも、みんなの注目を浴びていた。楽しいことはそこからやってきた。まるで茶の間の劇場のようだった。

昭和28年(1953)の本放送時におけるテレビのデザインはというと、単純な箱型であった。当時はまだテレビをデザインする、というより機能優先の時代だったのだ。

しかし一般的なレトロなテレビというと、私ほどの年齢だと、木製のボディーに、にょっきりのびた4本脚の形を思い浮かべる人も多いと思う。

戦前からラジオを製作していた大洋無線工業のテレビのチラシ(昭和30年代)。脚は別売りで800円

シャープ「パロット」(昭和32年)。全つまみ類を側面に配置した斬新なデザイン(シャープ提供)

シャープのテレビのチラシ(昭和30年代)。すべて4本脚のテレビが並ぶ。「時間が来るとテレビが呼ぶ オートタイマー式電気時計付」もある

日本ビクターの14インチ。「アメリカン スタイル」とあるスマートなデザイン。画面にはビクター専属だった雪村いづみが(昭和32年6月17日)

この4本脚テレビは昭和30年代に入ってから登場している。本体底にネジで留めるタイプや、テレビをそこに乗せるだけのテーブル式もあり、回転式もあった。

シャープの回転式テレビ台(昭和31年)。14インチ用で3本脚、いま見るとちょっと不安定な気もする

昭和40年代になって、テレビ本体が金属製になってからも、しばらくは脚が付いていた。

その後、家具調のデザインがブームとなったが、まだ短い脚がついていた。

コンソールタイプにも脚が付いていた。松下電器の19インチ、人工頭能テレビ(昭和40年代)

我が家は、初代と2代目は4本脚付であったが、昭和44年ころ購入した3代目のテレビにはすでに脚はなく、段のついた小物置きになっていた。

それ以降、テレビは小型軽量化になり、持ち運びやすくなったこともあり、4本脚テレビは過去のものとなった。

文=町田 忍

いかがでしたでしょうか?
銭湯研究の第一人者で、昭和の暮らしにも詳しい町田忍さんの本書を読んで、レトロな昭和家電の魅力に心ゆくまで浸っていただけたら幸いです!

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【目次】
◉テレビ
放送開始、街頭テレビ、スポーツ中継、家具調テレビ、ボタンとリモコン、懐かしのテレビ番組など
◉白物家電
洗濯機の原理、進歩する洗濯機、掃除機のルーツ、掃除機戦国時代、冷蔵庫の多機能化、冷蔵庫と氷など
◉キッチン家電
電気炊飯器とジャー、電気で焼く、なんでも家電!、キッチンを変えた家電など

町田 忍(まちだ・しのぶ)
昭和25年(1950)東京生まれ。和光大学人文学部芸術学科卒業。学生時代にヨーロッパを一人旅。その後、警視庁警察官を経て、江戸から戦後にかけての庶民文化・風俗を研究し、庶民文化研究所を設立。執筆活動のほか、コメンテーター、コラムニスト、テレビ・映画・ラジオ出演、ドラマの時代考証など多方面で活躍。主な著書に『納豆大全』(小学館)、『蚊遣り豚の謎』(新潮社)、『町田忍の昭和遺産100』(天夢人)、『町田忍の銭湯パラダイス』(山と渓谷社)、『町田忍の手描き看板百景』(東海教育研究所)など多数。

※新聞広告は、特記がないものはすべて朝日新聞に掲載されたものです

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