見出し画像

グリルミヤザキのハンバーグ(福岡県久留米市)|柳家喬太郎の旅メシ道中記

当代一の落語家・柳家喬太郎師匠。お声がかかれば全国あちこち、笑いを届けに出かけます。旅の合間の楽しみは、こころに沁みる土地の味。大好きなあのメシ、もう一度食べたいあのメシ、今日もどこかで旅のメシ──。この連載「旅メシ道中記」では、喬太郎師匠の旅メシをご紹介します。

 仕事で方々伺うので「打ち上げで地元グルメが食べられていいですね」なんてよく言われますが、そんなこともないんです。店を選ぶのは主催の方なので「高知だから今夜はかつおかなぁ……!」なーんて期待してたらイタリアンだったこともありました(すごくおいしかったんですよ!)。

 んで、落語教育委員会*の仕事でここ10年ほど伺っている久留米でも“地元感ゼロ”のものをいただきます。それが「グリルミヤザキ」のハンバーグ。地のものってわけじゃないですけどね、ここでしか食べられないんじゃないかってくらい、飛びっきり旨いのよ!

 久留米駅から車で5分程の住宅街。店構えは至って普通の町の洋食屋ですけど、味は並じゃあない。鉄板の上でジュウジュウ焼かれながら運ばれてくるハンバーグは、ふわっとしていて肉汁たっぷり。玉ねぎの甘みという甘みを凝縮させたようなコクのあるソースがかかってて、それが肉の脂と合わさると、もう信じられないくらい旨いのであります! ねぇ大将! どうしてこんなにおいしいのっ!

「黒毛和牛100パーセントで脂が旨い未経産の雌牛だけを使います。肉は毎朝店でいて、ねないでさっくり合わせるだけ。そのほうが食感がいいとです。ソースは醤油ベースで、甘みの強い佐賀県白石産の玉ねぎを惜しみなく使います。醤油も地元メーカーに特別に作ってもらってます。店は48年目です。試行錯誤して今の味に落ち着きましたけど、まだ進化するかもしれんです」と、いつも寡黙な御年77歳の大将が、ハンバーグのことになるととても饒舌においしさの理由を教えてくれました。にしても、そんなにいい素材で1470円って利益度外視すぎないですか⁉

「お客さんに『大将が死ぬまで食べるんやけん、値ぇ上げてくれ』と言われるけどなかなか……でも去年100円上げさせてもらいました」と申し訳なさそうな大将の隣で、きびきび働く女将さんが一言。「もっとコストを抑えて儲けなさい! って言ったこともありますよ(笑)。けど『材料費ケチったらちゃんとしたものできん』って。まぁ、料理人として幸せなんじゃないですか」

 自分の理想の料理を追求する大将と、あきれ(?)ながらも愛情深く支える女将さんに感謝しつつ、最高のハンバーグを食べて今日も高座に臨むのであります。(談)

談=柳家喬太郎 絵=大崎𠮷之

*三遊亭歌武蔵、柳家喬太郎、三遊亭兼好(敬称略)による落語ユニット。2017(平成29)年に兼好師匠が加入する以前は故・柳家喜多八師匠との3人組で、殿下(喜多八師匠の愛称)もグリルミヤザキがお気に入りだったそう!

【グリルミヤザキのハンバーグ】
長崎県出身のご主人・宮崎国義さんが大阪や福岡での修業を経て、女将のチエ子さんと共に久留米市で洋食店を始めたのは1976(昭和51)年のこと。一番人気の黒毛和牛ハンバーグを目当てに、鹿児島や熊本など県外から足しげく通う常連もいる。

グリルミヤザキ
☎0942-38-7544
[所]福岡県久留米市螢川町4-2 
[時]11時30分~14時、17時30分~20時
[休]月曜 
[料]黒毛和牛ハンバーグ1,470円(ライス、サラダ付き)
*月~土曜はランチメニューあり

柳家喬太郎(やなぎや・きょうたろう)
落語家。1963年、東京都世田谷区生まれ。大学卒業後、書店勤務を経て89年に柳家さん喬に入門。2000年真打昇進。「グリルミヤザキから徒歩2分ほどの場所にある『KURUMEジェラート』もおいしいよっ!」

出典:ひととき2024年2月号

▼バックナンバーはこちら。フォローをお願いします!


この記事が参加している募集

ご当地グルメ

よろしければサポートをお願いします。今後のコンテンツ作りに使わせていただきます。