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サイゼリヤがイタリアの被災地に1億円を寄付したのだが、その寄付はほんとうに被災地に届いたのだろうか? ‐ イタリアの震災の「いま」を知ろう #1

※この記事には地震に関する記述を含みますが、画像や動画は掲載していません。また、リンクのプレビューに画像が含まれる場合があるため、この記事ではあえてリンクのプレビューを切っていますが、ブラウザなどの使用により表示された場合はごめんなさい。
※やむを得ず、テキスト表示ができなかったので1枚画像を入れています。年表形式です。

「イタリアの震災の「いま」を知ろう」と題した連載を、私の精神がもとうまでしてみようと思う。突然途絶えたら察してほしい。

2016年イタリア中部地震の概要

サイゼリヤが2016年の地震で被災したイタリアの被災地に1億円を寄付した。

2016年8月24日の地震(日本では一般的にイタリア中部地震、イタリアでは一般的にTerremoto del centro italia、英語圏ではcentral Italy earthquakeなどと呼ばれる)において、最大の犠牲者数を出したのが、ローマがあるラツィオ州からアブルッツォ州などの県境に近いところにある、アマトリーチェ(Amatrice)という市だ。

なお、日本は人口によって「市区町村」という区分があるが、イタリアにはない。すべて「コムーネ(comune)」という単位なので、たとえばアマトリーチェの場合はcomune di Amatriceとなる。これを日本のメディアが「市」だの「村」だの訳している。

イタリアの統計局ISTATが人口動態を調査しているが、その記事によると、震災前までの人口はだいたい2500人前後といったところだろうか。

https://www.tuttitalia.it/lazio/82-amatrice/statistiche/popolazione-andamento-demografico/
↑イタリア語の記事

なお、ISTATは「(イタリア)国立統計研究所」と訳されることが多い。イタリア語の正式名称はIstituto Nazionale di Statisticaだ。

この記事では、適宜イタリア語訳をつけるようにしているが、それはイタリアの震災のニュース、とくに最新情報を知ろうと思うと、どうしてもイタリア語ができないとなにも入ってこないからだ。

そして「2016年」と私がわざわざ書いているのには理由がある。

イタリアは地震が多い国で、かつ起きるエリアが似通っていることが多く、そのため年号を書かないと一位に特定できないからだ。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%81%AE%E5%9C%B0%E9%9C%87%E4%B8%80%E8%A6%A7
こちらのWikipediaでは、イタリアの地震一覧という記事があり、私が大幅に加筆修正したのだが、概略をつかむには十分になっている。

戦後にイタリアで起きた地震の一覧をここに載せる。

イタリアの地震一覧(戦後のみ)

そして問題は、防災が進んでいないこと、そもそも防災という文化が根付いていないことだ。

これは産経新聞がよく特集してくれているので、興味のある方は日本語で手に入る情報としてこちらをご覧ください。

https://www.zakzak.co.jp/smp/society/foreign/news/20160828/frn1608281111002-s1.htm
↑産経新聞の記事

サイゼリヤが1億円を寄付したのだが、それは現地に届いているのだろうか?

たとえ現在は募金箱が置いていなくても、私はたまにサイゼリヤに行く。

https://www.saizeriya.co.jp/PDF/irpdf000419.pdf

※公式です。PDFファイルです。

https://www.adomani-italia.com/chiacchiere/chiacchiere-4942/

※私が以前お話を聞きに行った留学エージェントのアドマーニさんの記事です。アドマーニさんはイタリアに行くひとを支援する留学エージェントですが、学士課程などへの正規留学にはあまり対応しておらず、主にイタリア語を学ぶための語学留学を専門にしていらっしゃいます。すごく親切でいろいろな情報を知っています。

現在はこの募金活動は終了しているし、私の最寄りのサイゼリヤには募金箱は置かれていない。

ここでアマトリチャーナについて書いておく。

アマトリチャーナは、アマトリーチェを象徴するパスタだ。トマトを使い、比較的簡単にできる。

そして、毎年夏にはアマトリチャーナをふるまうイベントが開かれ、数年の中断ののちに再開した。

https://www.comune.amatrice.rieti.it/sagra-degli-spaghetti-allamatriciana-2021/
こちらはアマトリーチェのコムーネの公式ページで、2021年の際の情報がある。

このイベントと震災の発災が重なったため、帰省客が多く巻き込まれた。

また、2024年現在、アマトリーチェでアマトリチャーナを食べる方法はこのイベントに参加する以外にもある。

https://www.comune.amatrice.rieti.it/ristorazione/
またアマトリーチェ市の公式サイトのリンクを貼る。これらのレストランでアマトリチャーナを食べられる。

ただひとつ問題がある。そもそも震災があってもなくてもアマトリーチェは公共交通機関で向かうのが難しいのだ。

https://www.comune.amatrice.rieti.it/come-arrivare/
こちらが何度も登場してそろそろロゴマークが親の顔より見慣れてきたくらいのころだと思うが、毎度おなじみアマトリーチェの公式サイトだ。

近隣の主要都市とアマトリーチェを結ぶさまざまなバス サービスもあります。

COTRAL 社は、ローマとリエティ間の往復サービスを提供しています。 www.cotralspa.it – 電話番号。 800 15 00 08

START 社は、ローマとアスコリ・ピチェーノ間のサービスを提供しています。 アマトリーチェ行きの停留所はサレッタ交差点にあります。 www.startspa.it – 800 44 30 40

ARPA 会社はラクイラ発着のサービスを提供しています。 www.arpaonline.com – 0862 412808

とのことだが、そのためにはローマなどの周辺の大都市に行かないといけない。

2024年現在、震災の被災地に寄付する方法

2024年現在で直接募金箱がある日本のお店は、関東にあるシチリア料理のフィーコディンディアさんくらいかもしれない。数年前に私がDMで直接確認したときには、募金箱を設置していると言っていた。

正直、2024年現在、日本から日本円で募金できるシステムは私は把握していない。

大概の場合、イタリア語の知識が必要で、場合によってはイタリアの銀行口座を要求するケースもある。

ちょっと調べてみた。

https://www.poste.it/sisma-centro-italia-donazioni.html#:~:text=Se%20sei%20cliente%20BancoPosta%20registrato,%22Pagamenti%22%20di%20Poste%20Italiane.
こちらはイタリアの郵便局であり、銀行口座なども運営しているポステ・イタリアーネの記事だが、イタリア赤十字社(Croce Rossa Italiana)のIBAN(銀行口座番号)を載せている。日本から募金するのは厳しいだろう。

https://emergenze.protezionecivile.gov.it/it/sismiche/terremoto-centro-italia-2016/donazioni/
これはイタリア市民保護局(Protezione Civile)の記事だが、「2022年時点までにいくら集められました」としか書いておらず、募金先の記述がない。

これでは埒が明かないので、さっそく市民保護局に問い合わせをしている。返答結果はここに載せる。

以上で見てきたように、イタリア語の知識とイタリアの銀行口座を要求するケースが大半だ。多くの日本人には敷居が高いと予想されるため、私が率先して募金しようとしているが、正直信頼できるNPOや公的機関などがないのが実情だ。

直接コムーネに募金しても良い。ただ、私が知っているとあるコムーネでは、私が市長さんと知り合いなので彼に連絡してみたところ、返事がないので、なんとも言えない。

知人が運営しているNPOがひとつあったのだが、そこはもう運営されていない。そしてそこは被災者支援というよりかは、被災者が国内外の病気のこどものために運営しているものであり、この記事の目的とそもそもそぐわない可能性が高い。

そして、募金先を探すのが難しい理由として、イタリアは残念ながらマフィアや貧しいひとが多くいるので、寄付したお金が適切に使われないことは多い。

また行政もろくに機能しない。

それはおいおい書いていくことにしようと思う。

サイゼリヤの寄付は適切に使われたのか?

イタリア人に「サイゼリヤって知ってる?」ときくと、ほとんどのひとが知らない。

日本に詳しいひとが数人知っている程度で、私の調べた範囲では、その誰も募金のことを知らなかった。

イタリアの大手新聞ラ・レプッブリカから引用する。

Messe tutte insieme le donazioni dei ristoratori del nostro Paese non superano la maxi beneficienza di Saizeriya, la catena giapponese di cucina italiana, che ha sottoscritto un bonifico di 875.656 euro.

我が国(イタリア)のレストラン経営者からの寄付金を合計しても、87万5,656ユーロの送金を申し込んだ日本のイタリア料理チェーン店であるサイゼリヤからの慈善活動を超えることはない。

https://www.repubblica.it/cronaca/2017/04/16/news/i_donatori_del_terremoto_mezzo_milione_dall_amatriciana_solidale_ma_i_piu_generosi_sono_stati_gli_stranieri-163117336/

同じ記事が、2017年現在、まだこのお金は使われていないと書いている。

大手の新聞社Il Messaggeroによると、このお金はホテルの経営者に寄付されたとのことだ。

https://www.ilmessaggero.it/rieti/rieti_donazioni_amatrice_giappone-3271301.html

Ieri girava su facebook una notizia rilanciata da un sito internet e tratta da Il Giornale di lunedì. Titolo: «Sono spariti anche altri soldi». Occhiello: «Mai visti neppure i 980mila euro donati dai giapponesi».
昨日、月曜日の Il Giornale (新聞社)から抜粋したニュースが Facebook 上で広まりました。インターネット サイトによってそれは再び公開されました。 タイトルは「またお金が消えた」。オッキエロさんは語ります。 「日本人が寄付した98万ユーロすら見たことがない」。

なぜこのホテルに寄付されたかというと、サイゼリヤはアマトリーチェとつながりがあり、本場のアマトリチャーナ(アマトリーチェで有名なパスタ)を学ぶためにそこに滞在していたのだった。

結論から言うと、残念ながら、サイゼリヤのあの募金は、2024年現在、被災者のもとに適切に届いていない可能性が高い。

留学資金などに使います。ご支援よろしくお願いします。 また、私が欲しい本を集めたほしいものリストも公開しています。 https://www.amazon.co.jp/hz/wishlist/ls/9WBR0K7KWYX8?ref_=wl_share/