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カンペキ職人 #2:全部1人でやってみる

前回は、カンペキ職人さんの完璧主義をやわらかくすべく、色々一緒に試してみました。今日は、その第2回目です。今日読んで欲しいのは主に、前回のお話でご自分の完璧主義が柔らかくならなかったと感じた方です。まだ固いな、カチカチだなあと自覚がある方向けのお話になります。


自分に深刻になるな。作品に真剣になれ

突然ですが、1つ言葉を引用させてください。イギリスの画家、デイヴィッド・ホックニーの言葉です。

私はこの言葉を、坂口恭平さんの「自分の薬を作る」という書籍で知ったのですが、とても深く刺さる言葉だったんですね。自分が今まで悩んできたことの多くは、自分自身の資質について。思うような作品を作れない時に自らの性格や特性に対して否定的になってしまうんです。「やっぱり私には才能ない」「なぜ良い作品を作れないんだ」目が向いているのは自分の作品ではなく、自分の心でした。

カンペキ職人さんが、完璧主義であるがゆえに悩みがちなのが、完璧でない自分に否定的になるということです。前の章でもお伝えした通り、自分のしごとに対しては、とことん完璧を追求してしまって良いと思います。理想をめざして突き進むことが、カンペキ職人にとっては楽しいことであり、生きがいにもなるからです。

でも、間違えてはいけないのは、自分に対して完璧を求める必要はないんです。できない自分を責めてはいけません。完璧から程遠い目の前のしごとを見つめて、真剣に向き合うんです。どうしたら良くなるのか、どうしたら理想状態に近づけるのか。その研究を繰り返していくんです。自分との向き合いは、そこには必要ありません。理想を現実にするために、淡々と目の前のしごとに意識を向けます。


ここから今回の本題に入っていきますが、自分のしごとに対して完璧を追い求めるためなら、全てひとりでやっちゃうという選択肢も全然アリだと思うんです。

組織に入り、誰かと協働することで理想を目指していける人ももちろんいます。こういうタイプのカンペキ職人さんは、前章でお伝えしたように、理想を現実に棚卸しすることを心がければ、他人と協力しながら、上手く折り合いをつけながら完璧を目指すことができると思うんです。


でも、そうじゃない人もいます。やっぱり他人といっしょに働くのは苦しい。1人で仕事をしたい。自分が思い描く世界を、自分で目指していきたいと思う方もいるのではないかなと思うんです。

やっちゃえばいいんです。1人で全部やってみましょう。びっくりするほど楽しいと思います。自分のしごとに対して誰よりも真剣に向き合えるあなたです。完璧を目指すための地図を、自分で引いていけるはずなんです。全部というのは、本当に全部です。計画を立て、調査をして、作品を作り、それを世の中に出す。反応を見ながらまた作品を生み出す。このすべてを自分でやってみます。納得するまでとことんやるんです。


少しだけ私の話になってしまいますが、聞いていただけますか。私は今後2-3年の間に、自分の仕事を、ひとりで全部やる状態にしたいなと思っています。自分のブログを解説して、note記事もすべてそちらに移行。そこで毎日記事を書いて書籍化をめざしながら、デザインのお仕事も慎ましやかに続ける。空いた時間は絵を描いて売りながら、ピアノのコンクールに挑戦して、いつか対話型のコンサートを開く。今の私の目標であり、未来図です。

なぜひとりで全部やることを選ぼうとしているか、その理由も少しお話させてください。新卒就活時代にさかのぼります。大学生になり、はじめて挑んだ就活。予想はしていましたが、困難だらけの日々でした。

私は面白いことが好きです。アイデアを形にしたり、ひとつの課題に対して深く思考する。それがとても好きで、得意なんですね。

だから、ESやグループディスカッション、一次面接まではほとんど落ちた試しがありませんでした。自分のことを深く分析してキャッチーな言葉に落としこむ。出された課題について深く考えてアイデアを出す。

もう、得意分野でしかなかったんですね。就活って結構楽しいなあ、と余裕しゃくしゃくでした。まじで、あの時の自分の鼻をへし折ってやりたいです。

本選考が地獄だったんです。二次面接や最終面接。ズタボロでした。理由はわかっていました。私は、組織に対する所属欲求がほぼ0に等しかったからです

会社に入ったら何がしたいか。
あなたはどう貢献できるのか。

何度も問われました。多少台本はあるのでそれらしいことは言えるのですが、心から納得していない言葉を自分にモヤモヤが止まりませんでした。

貢献欲なんて、これっぽっちもありません。
できることなら1人で仕事したいです。
成果だけは出せるように頑張ります。
同僚とのコミュニケーションも、
最低限頑張ります。

だから、基本的にそっとしておいてもらえませんか。その方が、ストレスなく1人で楽しくやれるので。

本音はこうでした。当然、言えるはずもありません。なんであなた就活してるの?というお話になるからです。

でも、その時は就活以外に自立して生きていく術を持っていなかったのですね。就活文化に違和感しかないけれど、生きていくにまずトライするしかない。やるしかない。そんな状況でした。

人間の生き方は確実に広がっていました。フリーランス、ノマド、就活せずにフリーター。他人の生き方を簡単にのぞけるハイテクな世の中なので、前よりも選択肢は多くなっていることは、実感としてありました。

でも、まだそこに踏み切れるほど、意思が強くありませんでした。やってみたいけど、怖い。ここでわざわざ無難じゃない方を選ぶ必要はありないと思っていましたし、当時はまだ、集団の中で自分がそこそこ頑張れるのではないか、と数ミリの希望が残っていたんですね。

でも、やっぱり就活は苦手でした。心が拒否反応を起こしていることを半年以上続けたのですから、身体も悲鳴をあげ始めます。寝ている間に歯ぎしりが止まらず、顎関節症になりました。口を大きく開けられないのでご飯が満足に食べられず、大変困りました。左まぶたの震えが止まりませんでした。

最近知ったのですが、スピリチュアル的な観点だと、左半身の不調は心と身体の状態が乖離している時に起こるらしいのですね。あまりのしんどさに、ついには就活を中断せざるを得ませんでした。

絶対、会社員は無理。
小学生くらいの時から、漠然と感じていました。うちは教師家系で、ビジネスを生業にしている人があまりいなかったんです。なので、自分が会社員になっている想像もつかなかったのですね。

きっとみなさんもそうだと思います。家族から仕事のイメージを学びますよね。良くも悪くも、ですが。親は子どもにとって1番近い”社会”です。

私にとって会社は、テレビの中で見る空想の組織。なんだかみんな難しい顔をしていて、難しい数字を難しく分析している。わたしには絶対無理だ。利益とか全然興味ない。利益が増えてなんになるの?稼ぐことが豊かになることなの?私は違う気がする。

それに、私が1番のストレスに感じるだろうと思っていたのは、仕事の本筋以外で起こる、人と人とのトラブル。イザコザ。必要以上の気遣い。

私は小さい頃から大人の目に敏感で、周囲に必要以上に気遣いをしたり、想像力を働かせすぎて最悪の状況を常に思い描いてしまいがちだったので、人に囲まれながら働くというのが、もうそれだけででっかいストレスなのです。

だから絶対会社員は無理。
そう分かっていながらも、就活をしている自分。矛盾だらけで、でも就活しないと生きていく自信もなくて。

少しだけ就活休暇をとりました。身体ってほんとに正直なんですよね。就活を1回やめようと決意した次の日に、左まぶたの震えはとまりました。顎関節症は治りました。歯医者で作ったマウスピースの出番は来ませんでした。あれ、高かったのに。

2週間ほどの休暇を終え、就活に戻りました。その後、なんとか奇跡的に良い会社に巡り会えたんですね。社長さんがとてもすてきな方でした。なんというか、人間だったんです。ビジネスマンではなく人間。絶対ここに入ろうと思って本気で望みました。まあその会社も、その1年後には経営が危うくなってしまうのですが。

長くなってしまいましたが、
これが私の新卒就活体験記です。

就活、ほんと辛いですよね。ジョブをハンティングするためになんでこんな苦しくならにゃあかんのや、て感じですよね。わかります。

転職含めて、就活を2回経験して思うのは、やっぱり私には会社員は向いてないこと。やっと就職できても、すぐに嫌になる。仕事自体が嫌になるのではありません。会社という環境に、すごく不自由さを感じるのです。

会社にいれば、同僚から意見をもらえて、自分の技術を底上げしていけます。これは本当に自分が求めていることでした。お金をもらいながら技術を上げていけるんです。心からありがたいな、と思います。

でも、自分が描く理想の技術力とかデザイン力が身につけば、もう離れていいなと思うんですね。集団にいること自体が自分にとってストレスなので、そこをストレスフリーにしてあげる。そうすればもっと柔らかく、柔軟にこれからの人生を描いていける気がしたんです。


これが、私が全部ひとりでやってみようと決めるまでの、心の変化の過程です。ここでは就活のことしか触れませんでしたが、他にもいろんな心の葛藤や成長痛を感じる瞬間がありました。それも、この先どこかでお話できたらなと思うのですが、心の成熟が進むと、自分の意思決定の柔らかさも変わっていくのだと思います。自分を心から信じることがてきるようになるからです。そして、周りのことがまったく気にならなくなるからです。

かく言う私もまだまだ発展途上なので、菩薩のような悟り状態には至っていませんが、1年前の自分と今の自分を比べると、だいぶ心のしなやかさとか、他者との距離感が変わってきた自覚があります。


エピソードベースのお話になってしまい、すみません。組織という場所があなたにとって住みにくいのなら、勇気を出して自分で全部やってみるのもいいかも、という提案でした。

自分で全部やるためのスタートラインは、自分で企画書とカレンダーを作ってみることです。これは作家の坂口恭平さんをとても参考にしています。詳しく知りたい方は、坂口さんの「お金の学校」という書籍を読んでみてください。

やってみたいことを具体的に書いて、それをいつまでにやるか決めます。期限は曖昧でいいです。このスケジュールを完璧にするのはやめておきましょう。人生何が起こるかはわかりません。いくらカンペキ職人さんとはいえ、人生で起こるすべての出来事をコントロールすることは難しいです。だから、”大体これくらい”という曖昧さにとどめておきましょう。

そして、その計画に必要な準備を書き出します。どんな材料が必要で、自分はどんな力をつけていかなきゃいけないのか。そして、そこにはどのくらいのお金がかかるのか。とことん具体的に練ってみます。まるで、現実になったかのように。

自分がやりたいことなので、とても楽しいと思うんです。言霊ってほんとうにあると思っていて、無理だと感じていることも、現実かのように書いてしまえば、案外叶ってしまうものなんです。

大事なのは、素直になることです。自分の全ての欲に対して素直になります。好きなことだけじゃなく、嫌なことやこうなって欲しくないという願いも書き留めておくんです。他の人が言っていたからとか、社会がそう求めているからとか、全然関係ありません。まずは、自分が持っている幸せな感情も、恐怖心も、とにかくすべての感情をベースにして、企画書とカレンダーを作ってみましょう。

全部ひとりでやる、のスタート地点に立つことができると思います。とことん完璧を目指していくための、下地が出来上がるわけです。


次回につづきます。


今後の執筆活動やデザイン・アート活動の糧にさせていただきます。いつか絶対に恩返しするために。