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階段をのぼってきたのは(母談)(日常の中の不思議ファイル 11)

小さい頃は両親と妹と一家4人でアパートに住んでいました。
1階と2階が4軒連なっている、いわゆるメゾネットタイプです。

当時私たちはまだ幼かったので、
母は私たちと2階の寝室でお昼寝をするのを日課にしていました。

あのころの母は、いつも具合が悪そうでした。

小さな子を二人育てるのは体力も必要だったのでしょう、
母は元々体の弱い人でした。

ある日いつものように母が2階で子供たちを寝かしつけていると
階段から母の母親(私たちの祖母)が登ってくるのが見えました。

母は洋裁が得意なので
祖母に縫ってあげた格子縞(こうしじま)の上着を着ているのが見えました。

《その少し前に、祖母は亡くなっています。》

母は、体の弱い自分を母親が自分を迎えに来たと思って、
「まだ早い、まだ早い!」と言ったそうです。

「子供もまだちっちゃかったからね。」

とその話をした時、母は私に言いました。
そしてそのあと、

「もしかしたら、迎えに来たのではなくて
兄弟8人の中で一番体が弱かった私が子育てしているのを
心配して見に来てくれたのかも知れないね。」

と続けました。

母が「まだ早い」と言ったら、祖母の姿はパッと消えたそうです。


※ 写真はNeCozou  http://ne-cozou.com/

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