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【ココロコラム】相性とは何なのでしょうか?

新しい人との出会いがあったとき、「この人はこういうタイプなんだな」と判断したり、「あの人とは相性がよくなさそう」と判断したりということもあると思います。

そもそも「タイプ」とは何なのでしょう?「相性」とは何なのでしょう?

人間の性格をいくつかの「タイプ」に分けてとらえようとする考え方は、古くはヒポクラテスの気質論から、クレッチマー、シェルドンなど多くの試みがあります。
その中でも、日本でとくに有名で、今でも一般的に用いられているのは、ユングの「タイプ論」です。

ユングという名前は聞いたことのある人も多いでしょう。ユングにはズバリ『タイプ論』という本があり、これは日本では何回も翻訳されています。

「内向的」「外向的」という分け方はじつはユングの発明です。人の性格を「あかるい」とか「暗い」とか分類したことのない人はいないでしょう。それほどユングのタイプ論は日本の日常に浸透しています。企業の採用テスト(SPIなど)の性格検査にも「内向的」「外向的」などのユングの尺度が用いられていました(現在では廃止されました)。

さて、タイプに分ける考え方が一般的になると、次に当然の成り行きとして「どのタイプとどのタイプは合うのか、合わないのか」という相性の問題が研究されるようになりました。

その結果、正反対のタイプどうしは相性がいいことがわかりました。【意識と無意識の相補性】という難しい言い方をされますが、ようするに自分の無意識の中にいる「もう1人の自分」、つまり自分の分身のように相手を感じることができるということです。

ただし、常に相性がいいわけではなく、いきなり冷める場合もあることがわかっています。

また、同じタイプどうしも相性がいいのです。お互いに理解し合えるからです。
しかし、これも心変わりすることが多く、最悪の相性に変化する場合もあることがわかっています。

ここまで読んで「あれ?」と思いませんでしたか?
正反対のタイプどうしも同タイプどうしも相性がよくて、しかもどちらも悪くなることがあるというのでは、けっきょく「相性はわからない」というのと同じです。

どうしてこういうことになるかというと、そもそもタイプというのは絶対的で固定的なものではなく、状況によって変化する流動的なものだからです。

たとえば、あかるい人は24時間、365日、人生80数年、ずっとあかるいわけではありません。いつもはあかるい人が今日は暗かったり、いつもは暗い人が今日はあかるかったりという変化は日常でもよく目にするはずです。

そういう流動的なタイプをもとに相性を出せば、どうしたって「このタイプとこのタイプはいいときもあれば、悪いときもある」という流動的な結果にならざるをえません。

ちゃんとした結果を出そうと思えば、毎日その人の心理状態を調べて、それでその日の相性を診断するしかありません。

つまり、「タイプ」や「相性」に、あまりとらわれないほうがいいということです。
「この人はこういうタイプ」「この人とは相性がいい/よくない」と決めてしまったほうが、たしかに楽です。

でも、誰でもじつは気づいているように、人間も、人間関係もそんなに単純ではありません。

「こういうタイプ」と思っていた人に別の思いがけない面があったり、相性がよくないと思っていた人と、意外にうまくいくことがあったり。
それは、複雑で面倒でわかりにくいことでもあります。でも、面白く、奥深く、つねに希望があるということでもあります。とらえ方次第です。

他人のタイプや、自分のタイプや、他人と自分の相性について、あまり固定的に考えず、「流動的なもの」ととらえるようにしてみましょう。それだけでも、ずいぶんちがってきて、それはそれで楽になれることもあるはずです。

(津田秀樹)

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