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100%マッチが支払い対象外なら非表示にしないと とてもじゃないけどおもしろ可笑しくってよ?

こんなツイートに遭遇して首がもげました。

これ、これすぎる。いいですか、よく聞いてください。まずは次の前提でお話ししますよ。

  • 一定以上の規模のクライアント、仕事量もそこそこ

  • さまざまな立場で多くのリンギストが仕事に関わる

  • ICEマッチは支払い対象外でロック済み

  • 100%マッチは支払い対象外(ロックされていたり、されていなかったり)

この状況なら、100%マッチは係数0.1でもいいので支払い対象にするべきなんです。支払い対象外にするなら、せめて翻訳対象ファイルから消すべきです。順を追って説明しますよ。

ICEマッチは正しいという前提でOK

ICE(In-context match)の定義に多少のゆれはありますが、基本的には前後のセグメントも含めて100%マッチだった場合に、その真ん中のセグメントはICEマッチになるというものです。
ツールや設定によっては、ファイルタイプ(≓拡張子?)も一致しないとICEにならないとかいう話も聞いたことがありますが、細かいことは置いておきます。

つまり、元々の翻訳に問題があった場合を除いて、ICEマッチはそのセグメントにふさわしいはずなんです。元々の翻訳が正しければ、正しい訳が入ったとみていいんです。このしくみを考えた人は偉いですよ。ICEマッチは翻訳マップを作る上での基準点みたいに機能します。

100%マッチは危険な香り

「タダより高いものはない」とはよく言ったものですが、「100%マッチより怪しいものはない」っていう言葉も子々孫々まで伝えていきましょうよ。だって、過去のTMの中で単純に同じ形の原文が一致しただけで、そのほかは何の情報もない。これほど怪しい存在はないわけです。

短い単語は特にデンジャラス

たとえば、極端な例ですが「To」という原文が100%マッチで入っていたら90%くらいの確率で間違っていると思います。「まで」「宛先」「目的地」とか、とにかくいろんな訳語があり得ます。1~2単語くらいで構成されているセグメントに100%マッチが入ったらそこはデンジャーゾーンと化すわけです。
「Terms」だったらどうですか?用語かもしれないし、条件だったり、期間、検索語とか、かなりのパターンが予想されます。何食わぬ顔でコンテキストにふさわしくない訳語がデカいツラして鎮座していたら困るんです。
「35」とかの数字だけが入るのも鬼門です。前後を見ないと絶対に危ない。

長いセンテンスなら安心というわけでもない

前述の例に比べればやや安心できるものの、長いセンテンスでも危ないケースがあります。厳密な意味で翻訳が正しくても、前回は見出しとして使われていて、今回は表の中の項目になっている、なんてことがよくあります。この場合は違うスタイルで書く必要があるかもしれません。

100%マッチを対象外にするとどうなるか

翻訳者にとってICEマッチは道しるべになります。マインスイーパで言えば、最初からブロックが崩れているところがあるようなものです(あった?)。これから作り上げる翻訳の手がかりであり足がかりになるのです。

一方の100%マッチも、一応の基準点です。対象外となれば特に、既存の100%マッチと祖語が出ないよう翻訳マップを作っていきます。しかし、先ほど説明したように間違っている可能性がそこそこあります。明らかな間違いなら見て分かりますが、微妙な感じであれば調べなくてはなりません。調べた結果、「ちょっと変だけど使えるかも」という100%マッチにスタイルを合わせていくか、合わせずに無視するかを決める必要があります。どちらの判断をした場合も、申し送りをしないと後工程の人は困ってしまいます。なので申し送りをします。

その場で自分で直せば早くない?

間違っているかどうかを自分で調べないと翻訳を作れないのに、修正はできず、支払いも受けられず、報告はしないとチームプレイヤーとしてはマズい。無駄な手数を発生させないために、微妙な100%だけどそれを基準にしてしばらく進めて、やっぱりうまくいかなくなるってケースも多いわけです。

その場で自分で直せば早くない?(2回目)

そもそも、100%マッチを対象外にすることで浮くコストってどんなもんなんですか?なるべくコストを抑えたいだなんて誰だって言いますよ。その100%マッチ対象外の判断が生み出す、無駄な労力やストレスを考えれば、0.1掛けした方がトータルは低コストです。

え?大量の100%マッチが並んでいたらコストがかさむって?いいえ、かさみませんよ。だって、100%マッチが並ぶところはICEマッチになるでしょう?ICEマッチは正しいという推定でOKなんです。後工程の誰かがツールチェックしたりさらっと通読チェックすればいいんです。

だから100%マッチは怪しさ満点なんです。

たいしたコストカットにならないのに無駄で不必要なしばりを作る「対象外100%マッチ」は悪です。邪悪ですよ、邪悪の極み乙女です。

じゃあ非表示にしましょう!

100%マッチを0.1掛けして対象に入れないというのなら、はなから見えないようにすべきと思いませんか?そうすれば、統一するか無視するかも考えなくて済みます。ICEマッチだけを基準点にして作っていけばいいわけです。

大がかりな修正が発生しても、それは後工程の人が担当すればいいわけです。後工程の人(っていうか私?)ごめんなさい。

翻訳会社の人はこういう現状をしっかりクライアントに説明してください。そっちの方が誰もがハッピーになります。

次善の策として、3単語以下の100%マッチはペナルティを掛けるとかしてほしいですね。現状でも複数の100%マッチが存在する場合にペナルティを掛けられるでしょ。
あれをやっていないプロジェクト設定を見ると翻訳と翻訳者に何かの恨みでもあるのかと誤解しちゃいます。

と、ここで宣伝です。
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今日のところはこのへんで。アディオス!

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