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朝からドキがムネムネの一日 〜後編〜

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 午後からの勤務時間が始まり、わたしはまた仕事に集中し始めました。

 すると、先輩(以前このnoteに書いた、通称「孫の手の先輩」)が仁王立ちでわたしをジーッと睨んでいるではありませんか!

 「どうしたんですか?」と聞いたら、

 「どうしたんですかじゃないでしょ! あの男の子(Yさんのことらしい)のところに行かないの!? わたし、今日こそは何かが起きると思って楽しみにしているのに! なんでずっとここにいるの!?」

 と先輩から怒られてしまいました!

 それでわたしは、

 「先輩がここまでおっしゃっているんだし、Yさんにチョコをお渡しするために時間休をとろうかな?」

 と思ったのですが、

 「いや、でもみんな年度末で忙しいのに、わたしだけそんな理由で急に休みは取れないよね…」

 と思い直しました。

 おいおい、またおじけづいたな! と思ったそこのあなた!

 その通りです!

 わたしはまたおじけづいたのです!

 このまま去年の二の舞になるのか!?

 …しかし、偶然にも、わたしがYさんの職場へ行く用事が突如として幾つも舞い込んできました!

 ちなみに、これは孫の手の先輩の策略ではありません。

 たまたま、利用者さんたちから色々な頼まれごとをしたのです。

 どれも、Yさんの職場まで行かないと済ませられない用事ばかり。

 わたしは思わず利用者さんたちに「ありがとうございます!」と満面の笑顔でお礼を言ってしまいました。

 利用者さんたちは「ん? 頼み事をしたのはこっちなのに、なぜG-darkさんに感謝されるんだろう?」と首を傾げていましたが。

 人というものは、知らず知らずのうちに誰かを救うことがあるのですね。

 「良かった! これで勤務時間中に、正当な理由付きでYさんの職場へ行ける」

 とわたしがホッとしたのも束の間、

 「…ということは。わたしはついにと言うか、とうとうと言うか、ようやくと言うか、勇気を出さなくては…。な、なんて言ってYさんに声をかければいいんだろう…? だめだ、イメトレした内容が吹っ飛んだ」

 と緊張してきました。

 すると。

 突然ピーン!と閃きました⚡️

 頭の中で、

 「〝15時のおやつにどうぞ〟と言ってチョコを渡せばいい」

 と誰かの声がしたのです。

 何これ天啓!?

 もしくは、お昼に「チョコ 織田信長 方法」と検索したのが織田信長公の霊に届いて、そのお返事を賜った…!?

 もしそうだとすれば、なんという奇跡!

 わたしでは思いつかないナイスアイディア!

 すぐに時計を見ると、なんと現在時刻は既に14時50分。

 わたしは慌ててYさん用のチョコをバッグの中に忍ばせ、Yさんの職場へGO!

 心臓がばくばくで、もう、胸がドキドキしているんだかドキがムネムネなんだか、よく分からない感じにとにかく緊張。

 「もしかしたらYさんは外出中かもしれない。その時は②の作戦でいこう」

 と内心またおじけづきながらも、「わたしは仕事のためにやって来ただけですよ」という表情を作りながらYさんのデスクへ近づいてみると…。

 Yさん、いました!!

 デスクで何やら作業中!!

 …ここでわたしはまた思いました。

 「お忙しそうだから」というもっともらしい理由をつけて、このまま立ち去ってしまおうか? と。

 しかしこうも思いました。

 そんなことをしたら、みんなを裏切ることになる。

 「チョコを買わないと絶交する」と脅迫してくれた友達。

 仁王立ちをしてハッパをかけてくれた孫の手の先輩。
 (そういえば、最近先輩は孫の手ではなく、目を疑うほど大きな定規で背中をかいているので、「定規の先輩」に改名しても良いかもしれません)

 首を傾げながらもわたしに用事を頼んでくれた利用者さんたち。

 そして何より、今までこのnoteでわたしの片想いを応援してくれた皆さんの真心を裏切ることになってしまう。

 わたしは色んな人たちの応援のおかげで、今ここに立っている。

 ここで勇気を振り絞らなければ、わたし、みんなに絶交されちゃうかもしれない!

 …そう考えたわたしは、つとめて明るい声で、

 「こんにちは😄」

 とYさんに挨拶しました。

 すぐにYさんが振り向いてくれたのですが、その顔にわたしは非常に驚きました!

 なぜなら。

 さっきまでYさんは普通の顔色でした。

 なのに、わたしと目が合った瞬間。

 Yさんの顔も耳も首も、カーッと真っ赤っかになったからです。

 「真っ赤」どころではありません。

 「真っ赤っか」です。

 特に耳が完熟トマトみたいな色になりました!🍅

 わたしは物凄く心配になり、「Yさん、熱があるのにお仕事をしてるんですね!? 少なくとも39度くらいはありそうな顔色ですよ! 大至急病院に行った方がいいですよ!」と声をかけそうになりました。

 しかし、周りにいたYさんの同僚や先輩や上司たちは、なぜかこちらに一瞥もくれず、お仕事に集中していました。

 いつもなら誰かしら「おや、G-darkさん。お疲れ様」と言ってにこやかに歩み寄って来てくださるのに、なぜか今日は誰もデスクから立ち上がる気配は全く無し。

 もしYさんに高熱があったら、みんなこんなに落ち着いてお仕事をしてはいられないでしょう。

 こうした様子から察するに、Yさんが熱発しているわけでは無さそうなので、わたしはとってもホッとしました。

 良かったです。

 Yさんが元気で。

 …そういえば、今思うと、この時Yさんの上司の佐々木さん(仮名。以前このnoteに書きました)と一瞬だけ目が合い、「あら♡」という感じで微笑まれた後目を逸らされたような気がするのですが、きっとわたしの気のせいですね。

 なぜか誰一人としてこちらを見ようとしないので、今こそ絶交の…じゃなくて絶好のチャンス!

 わたしは心臓が飛び出そうにドキドキしていましたが、Yさんが元気良く立ち上がり、ニコニコしながらわたしに歩み寄ってくれたので、ホッとして本題に入れました。

 わたしがバッグの中からチョコの袋を出した瞬間、Yさんが目を大きく見開いたので、わたしはちゃんと説明をすることにしました。

 …まあ、説明する声はだいぶ震えていたわけですが。

 「あのっ、お疲れ様。です。今日は転職活動の相談のお礼を持って来ました。いえ、お持ちしました。おかげさまで、今度とある所の面接を受けることになりました。Yさんがわたしの背中を押していただいて嬉しかったです…。あ、押してくださって…? これ、15時のおやつです。どうぞ。お返しは結構ですので。あっ、でも皆さんで召し上がるほど沢山なくて、ちょこっとしたチョコなんですが…。あっ、今のダジャレじゃないです偶然です」

 と、めちゃくちゃしどろもどろでしたが!

 …家でイメトレをした時は、

 「先日は転職活動の相談に乗ってくださり、親身なアドバイスもしてくださってありがとうございました。おかげさまで転職活動が進みそうです。こちらは、いつもお世話になっている心ばかりのお礼です。お返しは結構です」

 と明るく爽やか且つ簡潔に言うはずだったのに!

 恥ずかしい!

 Yさんは、顔も耳も首も真っ赤っかのまま、多分わたしがこれまで見た中で一番いい笑顔で、一番目をキラキラさせながら、わたしが差し出したチョコを受け取ってくれました。

 そして、わたしの目をジッと見つめながら、うん、うん、と頷き、このしどろもどろの話を優しく聞いてくれるものだから、余計にわたしは照れまくりました!

 しかも、よりにもよってYさんがマスクをしていなかったものだから、優しい笑顔がはっきり見える!

 なんてこった、これじゃわたしの方が真っ赤っかになってしまう!

 多分いま、わたしの耳も完熟トマト!!🍅

 …と慌てたわたしは、「お、お忙しいところすみませんでした。おやつにどうぞ。ちょこっとしたものですが。お返しはいいので! お疲れ様です!」と無理やり話を切り上げて、その場から足早に立ち去りました。

 Yさんは何か言いたそうだったのに。

 わたしはまさかの逃走をしたわけです。

 まるでピンポンダッシュみたい!

 ピンポンしてないけど!

 あまりの恥ずかしさに、わたしはすぐさま自分の職場に帰り、孫の手の先輩にだけ「渡してきました」と報告した後、仕事に戻ろうと…したのですが、ここで重大なことを思い出しました。

 「そういえば利用者さんたちから用事を頼まれていたんだった!」

 と。

 そこで、Yさんに見つからないようにしながらYさんの職場にまた行く、という挙動不審な行動を取りました。

 無事に用事を済ませたのですが、孫の手の先輩だけでなく他の同僚からも「今日何度も行ってない?❤️」とからかわれてしまいました。

 もうやめて!

 わたしのライフはもう0よ!

 あとはひたすら仕事に猪突猛進しました。

 仕事をしていると気が紛れるので良いですね。

 ずっと仕事をしていたい!

 …というのがわたしの今年の2月14日の出来事でした。

 ちなみに、この日記を書いている2月15日現在、わたしはなんと休みを取っています。

 なんなら明日も休みを取りました。

 明後日も明明後日も休みです。

 つまりわたしはバレンタインデー翌日から4連休をとっているというわけです。

 ふっふっふ。

 これは、有休消化のために以前から決まっていた4連休なのですが、「しばらくYさんと会わない日数があれば、わたしの顔が完熟トマトから普通の顔色に戻るであろう」という願いもこめた4連休です。

 これが本当の「冷却期間」。

 これが本当の「逃走中」。

 だって次にどんな顔をしてYさんと会えば良いのか、どんな話をすればいいのか、全然分からないのだもの!

 チョコをあげるだけでこんな調子なら、告白なんて、わたしにはエベレスト登頂並みに難しいということが、今回の件でよーく分かりました。

 また、昨日から今日にかけて、わたしやYさんの職場の人たちから、「見〜た〜ゾ〜❤️」とか「なに!!おばちゃんぶっ倒れそう」とか「小鳥のカップルみたいで可愛いおふたり💕」とか「みんなが待ち望んだ未来がきた」とか「ガチで鼻血が出た」といった色んなLINEをガンガン貰っています…。

 が、今のところわたしはまだ誰にも返信できていません。

 なぜなら恥ずかしいから!

 わたしなりに周りの様子に気を配ってからYさんに話しかけたつもりだったけれど、…えっ、みんな見てたの!?

 どこから!?

 どこまで!?

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