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「トッツィー」を観た!(その1)〜山崎育三郎というミュージカル俳優

ミュージカルと私の関係は微妙である。もちろん嫌いではない。ロンドンに住んでいたので、色々楽しんだ。ニューヨークのブロードウェイの公演にも行っている。ただし、例えばオペラに比べるとプライオリティは低い。さらに、私の好きなミュージカルは、フレッド・アステアに象徴されるクラシックなものである。ウエスト・エンドで観た「レミゼラブル」も「オペラ座の怪人」も、舞台版「オクラホマ」「ショーボート」「雨に唄えば」にはかなわない。

このような背景なので、ミュージカルの日本語版公演は、さらに優先度が低い。しかしながら、今月10日から始まった、東宝ミュージカル「トッツィー」、1月19日の夜公演@日生劇場に私はいた。なぜか?

主演は山崎育三郎、妻が彼のファンなのである。

もちろん、私もミュージカル俳優としての彼に興味がなかったわけではない。さらに演目が「トッツィー」である。

さて、この舞台の観客のどの程度が映画「トッツィー」(1982年)を観たことがあるのだろうか。日本では1983年に公開された作品。大学四年生の時で、映画館で観たことを覚えている。

「トッツィー」という作品、売れない男性役者が、女性の役に女装して挑んだところオーディションに合格。ドラマが転がって行くという作品である。

映画版で主演したのがダスティン・ホフマン。正直、きわもの映画ではないかと思って観に行ったが、楽しい作品だった。

このホフマンの役を山崎育三郎が演じる、しかもミュージカルとして。日生劇場は、9割方女性の観客。かなりアウェイ感がある客席である。そんなことはどうでも良い。私は結構な期待を抱いていた。

40年近く前の作品が、2018年アメリカでミュージカル化され、19年にブロードウェイに進出、受賞は逃したもののトニー賞の候補になった。そのプロダクションを、日本に持って来た。

山崎扮するマイケル・ドーシー、これまた売れない脚本家のジェフ(金井勇太)と共同生活を営む。彼らに絡むのは、これまたブロードウェイを目指す女優サンディ(昆夏美)。

マイケルは、女優ドロシーとしてオーディション→舞台へと進むのだが、山崎育三郎が上手い。ダスティン・ホフマンばりに、“女性“を違和感なく演じていく。

前述の通り、日本人の演じるミュージカルに対しては、“食わず嫌い“的なところがあるのだが、彼のような才能を見るにつけ、ミュージカルという文化が日本に完全に根づいたと思い知らされる。

“彼“を受けとめる役が、舞台のヒロインであるジュリー(愛希れいか)。舞台をかき回し、アクセントをつける俳優マックスはおばたのお兄さんと岡田亮輔のダブル・キャスト。私が観たのはおばたのお兄さんだが、彼にとっては東京公演最後ということもあって、熱演だった。

舞台は非常によくまとまっている上、ジェンダー・ギャップといった問題を提起している印象もあり、単なるコメディ・ミュージカルにとどまらない内容にもなっている。

客席の“ノリ“も素晴らしい。こうしたファンに支えられて、日本の舞台が進化していることを、今さらながら知らされた。東京は1月30日まで、大阪・名古屋・博多・岡山を回るようだ。

妻に引かれたミュージカルに大いに満足しつつ、そもそも映画「トッツィー」はどのような内容だったのか。確認したくなった


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