見出し画像

金魚になるんじゃないよ

「金魚になるんじゃないよ」
祖母から言われた言葉で
どういう意味かと質問し
「煮ても焼いても食えない人のこと」と返ってきた

祖母は一筋縄では行かない人だった

うちの祖父母は同じ歳で、よくケンカをしていた
どちらも遜色ない家柄と学歴があっても
祖母は気高く、実際、頭の回転が速い
祖父が言い負かされていた

祖母はそんな自分を反省していたのだと思う

煮ても焼いても食えないと言えば
取り柄がない、どうしようもない人のことも指し
金魚は優美な見た目と泳ぎで、誰かを癒す
金魚より、土葬されたミイラが適当に思う

そんな意味では、祖母の教えを踏襲できなかった
せめて、誰かの薬や毒になっていたらと願う

誰の薬や毒にもならない、興味を持たれない
昼行燈のような存在
居ても、居なくても誰にも影響しない自分

自分を捨て、誰も傷つけず、生きようとするのは
人生を、井戸の中で座って過ごすようなもの
誰にも知れず、静かに息を引き取る
面白味のない『物語』

大なり小なりの自己主張がないとは
薬にも毒にもならない、特徴がない
他人には、いい人止まりで
自分の中に言い分を溜め込み、自分を傷つける

「金魚になるんじゃないよ」
わたしの新解釈は、肥やしにもならない人
澱みのない水槽に満足する
陰でしか生きれない人