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日常モノを書く効能があるとすれば

横断歩道を半分渡ったところで
わたしの真後ろに車が通ったときから見ていた
「危ないヤツ」目で車を追うと
わたしがいる横断歩道の左側で
歩行者が渡りを終えるのを待つ車に突っ込んだ

交通事故特有の金属が潰れる音が拡がる

わたしの隣で、同時に横断歩道を渡った女性が
「(車が)停まらんよ。当て逃げしよる」
ああ、やっちゃったな〜と片手に握るスマホで通報

徐行しながら、路肩に駐車した被害者へ
目撃者は駆け寄った
物損事故の音で駆け寄る人達もいた
被害者は幸い、怪我がなかった

加害者の車は、袋小路へ逃げていき
被害者も含めて「戻ってくるのかな」
待っても、一向に加害者の車はこちらへ来ない

被害者の車は、衝突で、後部が凹み塗装も剥げて
被害者は諦めた様子で
「洗車すれば綺麗になりますかね」
逃げられたら仕方ないですよね…力を落とした

目撃者や駆け寄った人達も
「待ち合わせがあるから、ごめんね」と居なくなる
被害者とわたしは、二人きりで警察を待った

被害者は、なにも悪くない
むしろ横断歩道で停まってくれた天使
こんなに善い人が理不尽に遭うのは、悲しい


日常、モノを書く効能があるとすれば
加害者や車の特徴など、どういう状況下で
どんな事故だったかを、素直に頭へ入れ
言語化できることなんだと体感した

それは元々、わたしの社会人デビューが
研究や実験を職業にしていた名残ではなく
日頃から、季節の些細な移り変わりを捉え、記憶し
言語化する力を養っていたからだと思う

到着した警察官へ迷うことなく
見たものをすんなり簡潔に説明できた
肩を落とす被害者へ、一定の距離で接し
「まだ諦めなくていい」と励まし続けた

事故を目撃してから2時間過ぎた頃
わたしの目撃証言と完全一致する車を警官が見つけ
ナンバーから、加害者を探し出せた

とてもショックなのは、加害者と同乗者3人は
全員、40〜50代の身なりの良い男性達で
誰ひとりとして、被害者の車へ突っ込んたとき
路肩に駐車し、被害者を慮る行動をしなかった
促さなかったこと

同乗者の男性が、わたしを薮睨みした
わたしは瞬きをせず、見つめ返した