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無意識って、言い訳が思いつかない怖さだと思う。

握っていたスマホを被写体に向け、連写する。
実体より画面を凝視し、
まだ誰も知らないことを掴んだ高揚感。

高校2年の正子が、青木先生と手を繋ぐ。
ときに正子は繋いだ手を解き、腕に絡むと、
青木先生の肩へ頭を傾け、上目遣いをした。

あの2人はクリスマスだけの関係じゃない。
もっと長く、私たち生徒の目を盗んで愛欲を交わし
放課後の準備室や資料室でまぐわい、
皆が知らないことをエクスタシーの燃料にしていたに違いない。ズルい。

正子と青木先生に勘づかれないよう、後をつける。
私の妄想は憤りが分解し、
微笑ましいなど、爪の先もない。

「裏切り者」
私は目を見開いているのか、痛い。
充血しているかもしれない。

アリバイ作りに協力しているのが正しいか、
正子の親や校長先生に密告するのが正しいか、
人混みを掻き分け、見逃さないようついていく。
2人は全く私に気づかず、イルミネーションから離れた公園に到着した。

青木先生が正子の髪を撫でる。正子の慣れた顔が青木先生に近づく。
ここは外で、しかも気温は冷蔵庫より低い。
2人は構うことなく、コートの前をはたき
両者の手は互いの下半身へ伸びた。

私は再びスマホを被写体へ向け、動画を撮る。
日頃から、あんなこともこんなことも
服を着たままなのに、エロ動画を観るより淫らで、
憤りはとっくの昔に昇華し、ほくそ笑んでいる。

2人の最中に、公園から離れる。
イルミネーションを潜っても、感動すらない光。
「このザマをどうしてやろう」

帰宅して、家族が待っていてくれた食事を断り
風邪気味だということにして、先に風呂へ入る。

正子と青木先生の様子がフラッシュバックし
イルミネーションに溶け込む2人より、
闇の中でケダモノの、下着がローファーで止まり
腰を突き出す正子と一心不乱で突く青木先生。

滑稽だと嘲笑う気持ちに逆らい
私は自然と自分の胸へ手を伸ばしていた。
「そうか、正しい用法はこれ」

ベッドに入ると、スマホからVPNを経由させ
動画サイトへ、アカウントを作ると
『現役女子○生!!? 夜会』

ネタに困っているオトコ達へMerry Christmas.

山根あきらさんの作品
『短編 夜会』からのインスパイアです
作品をお借りし、誠にありがとうございます!

「あ、そうなの
もう理恵も高校生だもんね」
高校2年生のクリスマス・イブ。
同じ塾に通っている正子にアリバイ作りを頼まれた。
一緒に塾に行って、その帰りに一緒にイルミネーションを見たことにしてほしいと。
それにしても、あの敬虔なクリスチャンである正子がイブの夜にデートなんてね。人は見かけによらないな。お付き合いしてる人がいるなんて知らなかった。
私は今日もなんの予定もなく普通に塾に行った。なんでこんな夜に三角関数を勉強しなくちゃならないんだろうと思いながら、つまらない講義を上の空で聞いていた。
となりの空席を見て、今頃正子はどうしてるのかなぁ、なんて妄想した。
やっと塾が終わって、いつもようにまっすぐ家に帰りたい気分だったが、一人でイルミネーションを見に行って、時間をつぶすことにした。
毎年、家でイブの夜を過ごしていたから、外の様子を知らなかった。目の前のイルミネーションを見て、別世界に来たような気持ちになった。
「えっ?」
イルミネーションに照らされて、ある見覚えのあるシルエットに気がついた。
青木先生がなんでこんなところに?
そのとなりには先生と手をつないだ正子がいた。