母がまだ認知症を患うずっと前、「信夫はもう就職も結婚もしないでこのまま私たちと暮らすのだろうか・・でもきっと私が認知症にでもなれば逃げ出すだよ・・」と私に言った事がある。
「お母さんは認知症にならないし、信夫のことは何とかなるよ、人に迷惑かけている訳じゃないんだから」と、私は適当に母を慰めたように思う。
あれから何年経っただろうか?
母は認知症になった。
数分前の事も忘れてしまう。
逃げ出したのは弟ではない。
私だ。
電話も帰郷も避けている。
愛しているから辛いんだよ・・
弟も、お父さんもお母さんも、
私の実家は静かに確かに朽ちてゆく。
私自身も朽ちてゆく。

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