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きっとポーランドが好きになる10枚のジャズアルバム

僕は現在もっぱらエッセイストとして仕事をしていますが、そもそもは音楽ライターです。この分野でプロデビューして、今年が10年目です。

音楽ライターとしての専門は、ポーランドのジャズです。もともとはブロガーで、このニッチなジャンルをひたすら紹介していました。この国のジャズを聴き続けていく中で、だんだんポーランドという国の文化についても興味がわくように。映画やグルメ、建築などなど、気になっているところからちょこちょこ勉強を重ねるようになりました。

僕はジャズを入口に、ポーランドという国を知り、より深く好きになったのです。

こういうことってありますよね。ある国の文化やスポーツをきっかけにその国に興味を持つこと。例えばサッカーをきっかけにブラジルに。ムーミンをきっかけにフィンランドに。BTSや韓流ドラマをきっかけに韓国に。またはアパルトヘイトやチェルノブイリなど負の歴史をきっかけに南アフリカやベラルーシに興味を持つということもあるでしょう。

特に韓国と韓流のパターンは理想的な展開があり、ドラマにはまった日本の多くの女性ファンが朝鮮語を勉強するようになり、少し理解できるようになった人がけっこういたんです。僕の前職の図書館員時代の同僚にもそういう人がいて、単純なやりとりのドラマだったら字幕なしで観れると言っていて驚きました。

僕と同じように、ジャズをきっかけにポーランドの文化に興味を持つ人が出てくれば素敵だなと思ってこの仕事を続けています。

今日はクリスマスイヴ。ポーランドと言えば国民の9割がカトリックという敬虔なキリスト教国家。かつてのローマ教皇ヨハネ・パウロ二世もポーランド人です。僕からみなさんへのイヴの贈り物というわけで「きっとポーランドが好きになる10枚のジャズアルバム」を厳選してみました!美しいポーランドジャズをお供に楽しいイヴの夜をお過ごしください。

Wesołych Świąt !! メリー・クリスマス!

♪ショパンを生んだ国のピアニズムを聴く2枚♪

Sea / Sławek Jaskułke スワヴェク・ヤスクウケ
<最初に聴いてほしい曲:Sea I>

Faithful / Marcin Wasilewski Trio マルチン・ヴァシレフスキ・トリオ
<最初に聴いてほしい曲:Night Train To You>

ヤスクウケは日本で今いちばん愛されているポーランド人アーティスト。コアポートから国内盤が何作もリリースされています。ヴァシレフスキはヨーロピアンジャズ最高のレーベルECMの看板アーティストになった天才ピアニスト。ポーランドジャズの素晴らしさを世界に知らしめました。

♪ポーランド語の響きを楽しむヴォーカル作品2枚♪

Vesna / Babooshki バブーシュキ
<最初に聴いてほしい曲:Dajcieze mi skrzypce moje / A Wze Vesna>

Chopin Songbook / Kuba Stankiewicz クバ・スタンキェヴィチ
<最初に聴いてほしい曲:Smtuna rzeka>

バブーシュキはポーランドとウクライナの女性ヴォーカリストが結成した民謡ジャズユニットです。古くから伝わる民謡をモダンにカヴァーしています。スタンキェヴィチは南西部の大都市ヴロツワフに住むベテランピアニスト。ショパンの歌曲集をジャズとして現代によみがえらせています。

♪"若者の音楽としてのジャズ"を楽しむ2枚♪

XD[Experience Design] / Immortal Onion イモータル・オニオン
<最初に聴いてほしい曲:Triggers>

Total Panorama / Nene Heroine ネネ・ヒロイン
<最初に聴いてほしい曲:Yamaha>

イモータル・オニオンは10代でデビューした天才ピアノトリオ。イギリスのゴーゴーペンギンからの影響を感じさせるサウンド。ネネ・ヒロインは北部の大都市グダンスクを拠点にする若手たちが結成した実験バンド。ポストロックやエレクトロニカの要素を前面に押し出したエクスペリメンタルジャズです。

♪民主化以降の音楽シーンをリードしたカリスマを聴く2枚♪

Polka - Worldwide Deluxe Edition / Wojtek Mazolewski Quintet ヴォイテク・マゾレフスキ・クインテット
<最初に聴いてほしい曲:PUNK-t Gdansk>

Polska / Możdżer Danielsson Fresco モジジェル・ダニエルソン・フレスコ
<最初に聴いてほしい曲:Africa>

ヴォイテク・マゾレフスキ、レシェク・モジジェルともに90年代の民主化以降のポーランドの音楽を牽引してきたスターです。多種多様なジャンルで活躍し、リーダー作はジャズ作品でありながら国内ヒットチャートにランクインする、ジャンルを超えた国民的アーティストなのです。

♪最もポーランドジャズらしい音楽を楽しむ2枚♪

Eternal Entropy / Tomasz Chyła Quintet トマシュ・ヒワ・クインテット
<最初に聴いてほしい曲:Midnight Express>

Plays Komeda / Robert Majewski ロベルト・マイェフスキ
<最初に聴いてほしい曲:Kolysanka>

ポーランドジャズの最も印象的な特徴は「ミクスチャーな感性」と「美しい音色と旋律」です。トマシュ・ヒワは若手のヴァイオリニスト。ポーランドはジャズヴァイオリン大国でもあります。プログレッシヴな彼の音楽はこの国のジャズのエッセンスを象徴していると思います。マイェフスキはベテラン・トランぺット奏者。伝説的作曲家クシシュトフ・コメダの楽曲をカヴァーしたこのアルバムは、この国のジャズの美を凝縮したような作品です。

♪番外編2枚♪

ポーランド・ピアニズム&ポーランド・リリシズム / 選曲・解説オラシオ

世界でも珍しい?ポーランドのジャズ専門を謡う僕オラシオが、自信を持っておすすめする名曲名演の数々をコンパイルしたコンピレーションCD2枚です。ピアノにフォーカスしたピアニズムのほうはJAL国際線の機内プログラムにセレクトされたこともあります。リリシズムはヴォーカル曲も収録した多彩な選曲。いきなり個々のアルバムから聴くのはハードルが高い、という方はぜひこの2枚から入ってみてください。気持ち良くていつまでも聴き続けられるはずです。

(終わり)


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