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昭和20年代の男たち(2)

 約2週間前、こんなnoteを書いた。その後の話である。

 あれから祖父は一応、A先生宛に書かれた紹介状を握って病院へ行ったらしい。本来は紹介状を書くタイミングでかかりつけ病院から紹介先病院へ診察予約を取るらしいけれど、お友達の
「先生は手術中で会われへんかったけど、俺が看護師の一番偉い人に言ってきたから大丈夫や!紹介状持ったらそのまま行ったらええわ!」
という、何の根拠もない発言を鵜呑みにして予約なしに訪れた祖父は、案の定師長さんに
①診察は本来かかりつけ病院からの予約が必要なこと
②A先生は外来に出ていないので診察はできないこと
③執刀医の希望が100%通るとは限らないこと
をこんこんと説明(説教?)された挙句
「今日は外来の先生がいらっしゃらないので、きちんと予約された上で明日また来てください」
と家に帰されたらしい。まあ、そりゃそうだ。というか、①〜③までは私と祖母が何度も説明してきたことのはずだが……?
 それなのに、あ、帰ってきたなと思うなり、開口一番
「予約取らなあかんかったらしいやんけ」
とブーたれた祖父。幸い祖母は買い物で留守にしていたが、私は内心
 散々言いましたが……!?
と開いた口が塞がらなかった。これを素で言ってるのが恐ろしい。昭和20年代の男は本当に、甘やかされて育っている。
 謎なのは、祖父が、言ってしまえば何の役にも立たなかったお友達を一切責めないところだ。私なら師長さんに諭されている間「聞いてた話と違うが?」と友達に腹を立てている可能性があるのに。彼らの友情はそんな程度で崩れないのだろうか。それ自体は素晴らしいことだと思うけれど、その皺寄せが周りに来ているので、腹が立つことこの上ない。

 結局翌日再訪した祖父は、診察の結果4月にMRIを撮ると決まった。これまた随分先である。現時点では祖父に手術が必要かどうかはもちろん、病名すらもついていない。ただ、もうすっかり病人らしく振る舞っている。思い込みが強すぎないか?「自分が頼んだから絶対に大丈夫」と豪語した友達といい、まだ聴診器を当てられただけなのに「何とかっていう病気に違いない」とすっかり病がちになっている祖父といい、何なんだ。

 そんな昭和20年代生まれの祖父だが、最近は耳が遠いのか、話しかけても「は?」とか「あ?」とかで聞き返してくる。正直大変不愉快なので、先日
「聞こえんかったときは口閉じて返事してくれる?」
と言ってみたところ、次から「ん?」と可愛く聞き返すようになった。孫バカかも知れない。でも私は祖父の【こういうところでは】素直で可愛いところが、実は結構好きなのである。

 さあ祖父は無事、A先生から手術を受けられるのだろうか。あとは検査して、病状いかんで手術するだけだ!
 とはいえ、最近お友達に
「俺MRIは怖いからよ〜やらんわあ、行けへんかもしれんわあ」
とか言い始めてることを孫は知っているので、一体どうなることやら。


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