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『ささるアイデア』を読む

2350文字


はじめに

この本は、15人のクリエイター達のアイデア観を取材してマトメられています。

なぜ、すぐれたクリエイターたちは「ささるアイデア」を生み出す事が出来るのか。その理由のひとつは、彼らの「発想の作法」にあると編者/松永光弘氏は、見ているようです。

この作法は、いわゆる「発想法」ではなく、どちらかと言えば、今この時代に求められているものは、こうだと言う「アイデア観」に支えられています。

「何をやるか(what)」「どうやるか(how)」ではなく「何のために(why)やるか!!」に通じる。

要約すると「自分なりのアイデア観を持ち」それをもとに「自分なりの発想の作法を持つ」この2つにあると言っても過言ではない。pp.4〜5.より

『ささるアイデア』松永光弘 編
誠文堂新光社 (2021.12.13.)

【アイデアの「意志」】

水野学 (クリエイティブディレクター)
アイデアは「降りてくる」ものではないアイデアは、ひらめきではない。
アイデアを導き出すのはセンス
要約:人を感動させるためにはセンスが重要になってくる
そのためには、知識を増やして “確率” を高める。
pp.12〜27.

川村真司 (クリエイティブディレクター)
アイデアの前に「タネ」を見つける
「タネ」とは、課題をどう捉えるかと云う視点。
pp.28〜43.

岩佐十郎 (『自遊人』編集長)
アイデアは「自問自答」から生まれる。
pp.44〜60.

【アイデアの「経験」】

鳥羽周作 (sio オーナーシェフ)
料理は 自己表現ではなく お客さまを喜ばせるためのもの。
そのための課題解決。
pp.62〜77.

龍崎翔子 (ホテルプロデューサー)
自分が本当に欲しいものをつくる
「アイデア」とは、普段から自分が持っている問いに対して 見つかったり、生まれたりする事が多い。
視点を大切に。
pp.78〜95.

藤本壮介 (建築家)
アイデアの価値や意味は、実践してみないとわからない?
本当に良いアイデアは、複数の課題を同時に解決していると云うことか?
建築は、どこまでも人間に根ざしていなければならない。いくら「論理的・哲学的に正しい・こうだ」と言っても、そこで過ごす人間が快適でなければ意味がない。
pp.96〜112.

【アイデアの「論理」】

伊藤直樹 (クリエイティブディレクター)
創造性、クリエイティビティと言うと、一人の力の話のように思われるが、組織(パーティ)として捉えるべき時代に来ているんじゃないかと思われる。
クリエイティビティの4つの領域
制作領域「アイデア」「デザイン」
文化性「数字」「エンジニアリング」
4つの領域を融合させていった先の「ビジネス性」が重要になってくる。pp.114〜129.

齋藤精一 (クリエイティブディレクター)グッドデザインについて
これまで、経済や経営の話の中で「デザイン」と云う言葉はあまり出てこなかった。
でも、近年 定義が拡張され、モノだけでなく、取り組みなどの無形のモノもデザインの対象とするようになり、捉え方が変わった。
pp.130〜143.

三浦崇宏(クリエイティブディレクター)
三浦氏が企画をマトメる時に用いているフォーマットより
【Goal】達成すべき目標
【Vision】あるべき姿
【Fact】武器になる事実
【Moment】社会の変化
【Insight】顧客の心情
【Catalyst for change】変化の切っ掛けになる考え方
【Rule】この企画が成功する内的•外的な条件
【Action】行動計画
pp.144〜160.

【アイデアの「姿勢」】

篠原誠 (クリエイティブディレクター)
正攻法のアイデアの出し方
「何を云うか?」what to say
「どう云うか?」how to say
アイデアの限界を感じたら
「無理やりな条件を課す」
「こうなったら良いな」でふるいにかける
pp.162〜177.

川田十夢 (開発者)
頼まれてから考えるのではなく、頼まれる前から「やってみたい」ものをストックしておく。
pp.178〜191.

明石ガクト(動画プロデューサー)
動画コンテンツに必要な3つのC
【Capture】無意識に「そうだな」と思っていること
【Connect】伝えたいメッセージと思惑を接続する
【Construct】見る人が飲み込みやすい形に構築する
pp.192〜206.

【アイデアの「視点」】

佐藤尚之 (創業者)
コミニケーションデザイン」
伝えてもらいたがっている相手、買いたいと思っている相手に、しっかりと情報が届く。
そのためには、伝える相手の環境を俯瞰して考える。
例) 缶コーヒー 
伝えたい相手:トラック運転手達の行動を丁寧に見る
ポイント:相手が笑顔になる
ファンベースの時代
pp.208〜223.

佐渡島庸平 (編集者)
会議ではなく雑談から “化学反応” が起こりやすい。
pp.224〜235.

柳澤大輔 (面白法人カヤックCEO)
“まちづくり” は、経済的にうるおうたまけでなく、そこに住んでいる人達が幸せになること。
「地域経済」「地域社会」「地域環境」の3つを軸にした「地域資本」と言う考え方を打ち出す。
pp.236〜250

おわりに

この本の編集の切っ掛けは『ひとつ上のアイデア』との事。眞木準 編 2005年
アイデアやクリエイティブと云うものが社会全般に広く重視されるようになり、携わる人達からも、アイデアやクリエイティブについて悩む人が目立つようになってきた。
そう云う人達へのヒントになる本として出版された。
この本に登場する15人のクリエイターの皆さんの思想や考え方に触れてもらいたい。

シェア【Note/松永光弘】2022.01.11.

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【読書百遍】『ひとつ上のアイデア』

『ひとつ上のアイデア』
眞木準 編
インプレス (2005.11.11.)

2023.07.17.